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教育学術オンライン

平成25年10月 第2541号(10月23日)

大学は往く
 新しい学園像を求めて 〈84〉
 大学改革の真っただ中
 駿河大学憲章とグランドデザイン制定  新カリキュラム始動
 駿河台大学

 「教育力の駿大」を謳い、学生ひとりひとりの成長と自立を支援する大学を目指す。駿河台大学(川村正幸学長、埼玉県飯能市)は、1987年に法学部1学部で開学、現在は5学部からなる文系の総合大学に発展した。建学の精神は「愛情教育」で、グローバル化の著しい現代社会における地域社会の中核的役割を担う幅広い人材を育成する。今、駿河台大学は、改革の真っただ中にいる。2012年に同大のめざす教育、研究、地域協働を謳った「駿河台大学憲章」を定め、同時に社会的責任を果たすための5年間で達成すべき目標と計画を定めた「駿河台大学グランドデザイン」を公表。今年度からすべての授業を通した社会人基礎力育成を盛り込んだ「新カリキュラム」がスタートした。「建学の精神に基づき、学生一人ひとりの個性を尊重し、その能力を最大限に伸ばしていく教育を目指したい」と語る学長に大学の歩み、改革、これから、を聞いた。
(文中敬称略)

建学の精神は「愛情教育」

 緑豊かな自然環境に囲まれた広大なキャンパスと美しい建物群。テレビ・ドラマのロケにもしばしば使われる。飯能市は森林文化都市を宣言。大学建設時にキャンパス内に森林を残すことを市と約束したという。
 駿河台大学は、山コア寿春が、1918年に開設した「東京高等受験講習会」(現在の駿台予備学校)が淵源。「愛情教育を基礎に学生が真剣に学ぶ本物の大学を作りたい」という寿春の遺志を引き継いだ子息の山コア春之が1987年に駿河台大学を開設した。
 春之は「情報化、国際化の時代を踏まえて、実社会に役立つ人材、国際社会で活躍できる人材を養成する」を目標にした。1990年、経済学部、94年、文化情報学部、97年、現代文化学部を設置した。
 2009年、文化情報学部・現代文化学部を改組し、メディア情報学部、現代文化学部(新)、心理学部を設置、13年、経済学部を経済経営学部に改組。現在、5学部に約4000人の学生が学ぶ。
 大学は少子化、大学全入といった波を受けて厳しい時代にある。駿河台大学も数年前から受験生数の減少といった波をかぶった。「後がないという危機感が改革につながった」と学長の川村。
 改革の核となる駿河台大学グランドデザインについて川村が説明する。「大学にとって最も重要なのは教育の質です。駿河台大学を確かな教育力を持った、学生の面倒見の良い、学生満足度の高い大学に、そして真に学生のための大学にしていくための行動指針です。
 重点は、@すべての授業を通した駿大社会人基礎力の育成、A体系的で効果的なキャリア教育、B確かな教養教育と充実した専門基礎教育―です。この実現により『教育力の駿大』を確固たるものにしたい」
 現在、グランドデザインに基づき、各学部、各事務部署が、さまざまなアクションプランを立て行動に移している。「1年経ったら、検証して修正すべきは修正もします。教員と職員に一体感が出て、どういう学生を育成するかという認識が共有化されました」
 各学部の学び。法学部は、2013年度から警察・消防、ビジネス資格、法職・公務員の3コースに再編。「コミュニケーション力と適正な法感覚を学びます。地方公務員試験をはじめ各種資格試験を目指す学生も多くいます」
 2013年度開設の経済経営学部は、経済と社会、ビジネスとマネー、マーケティングと戦略の3コース。「それぞれの学生が持つ可能性を最大限に引き出す教育で、職場や地域の活性化に貢献できる人材を育てています」
 メディア情報学部は、映像・音響メディア、デジタルデザイン、図書館・アーカイブズの3コース。「メディアや情報の仕事を実地に学び、メディアの理解と情報力で明日の社会を切り拓く人材を育てています」
 現代文化学部には、比較文化、観光ホスピタリティ、スポーツ文化の3コース。「現代に生きる人間の文化をデザインします。比較文化、観光、スポーツという文化を理論と留学・研修といった体験的学習で学びます」
 心理学部には、発達と臨床の心理、現代社会と心理の二コース。「心理学はもちろん、倫理学、宗教学、社会学など幅広い知識を身につけます。臨床心理士をめざす学生も多いです」
充実する学びの施設
 学びの施設は充実している。メディアセンターは、地上5階建で、図書館と情報施設双方の機能を兼ね備えた施設で、同大の情報発信・収集の基盤となっている。メディア工房は、グラフィック、WEBデザイン、映像・音響制作に特化した演習室。小規模の劇場映画制作にも堪えうる。
 就職は、「昨年まで景気を反映して厳しい状況でした。今年度は、アベノミクス効果で好転の気配があります」。キャリアセンターには、キャリア教育担当の教員2名が所属する。教員と職員が一体となってキャリア支援を行っている。
 新カリキュラムでは、「就業力」に力を入れている。「あらゆる科目を通じたキャリア教育と充実したキャリア育成科目を導入しました。これによって、継続的に社会で活躍できる人材を社会に送り出したい」
 地域貢献。グランドデザインで、謳っている。「本学の担うべき社会的役割は@地域社会の中核を担う人材を養成する大学A地域活性化の核となる大学B地域の知の核となる大学」であると。
地域貢献活動も活発
 学生参加による入間活性化プロジェクトや地域とゼミによる総合的キャリア教育により実際の「まちづくり」を体験する活動にも傾注する。飯能市内の駿大広報プラザや入間市にある駿大ふれあいハウスを地域拠点にイベント、メディア制作、IT化サポートなどを行う。
 インターンシップも地域と密接。「地域の役所や企業にお願いして夏休みに2週間、インターンシップを体験します。事前の研修があり、体験が終ると、報告会を開いて自らの体験を報告、社会人基礎力が培われます」
 学生スポーツでは、男女ホッケーが全国有数の強豪で、駅伝にも力を入れている。昨年、陸上競技部の長距離部門(駅伝部)監督に徳本一善を招聘した。徳本は、箱根駅伝で法政大学のエースとして活躍した。
 「昨年の箱根駅伝予選会では25位でしたが、記録は過去最高でした。毎年、順位を上げてきています。徳本監督を慕って有望選手も入部するようになりました。じっくり鍛えてもらい箱根駅伝で駿河台大学の襷をかけた選手を見てみたい」
 大学のこれから。「今後とも学生一人ひとりの個性を最大限に尊重した教育を基盤とし、常に時代の要請に迅速に応えられる教育機関でありたい。大学としての役割や教育のあり方を常に確認し、一層充実した教育と研究及び社会・地域貢献に取り組みたい」
学生の満足度高めたい
 具体的には?「社会、そして父兄から評価される大学であり続けたい。それは、教育を第一に考え、学生の満足度を高め、社会に立派に巣立っていく学生を育てることです。そして、地域に根ざし、地域とともに栄える大学であり続けたい。これまでも地域・社会貢献には力を傾けてきましたが、それを、さらに進化させたい」
 最後に、建学の精神「愛情教育」を再び語った。「愛情教育は、学生におもねることではありません。教職員の指針でもあります。学生のために今何をすべきか、何ができるかを常に考え、学生に寄り添い、社会で活躍できる人材に育て上げることだと思います」


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