Home日本私立大学協会私学高等教育研究所教育学術新聞加盟大学専用サイト
教育学術オンライン

平成22年7月 第2409号(7月21日)

電子化が拓く新領域
  金工大 図書館国際ラウンドテーブル
   


 

 金沢工業大学ライブラリーセンターと米国図書館・情報振興財団は、7月8日と9日、同大学において、「図書館・情報科学に関する国際ラウンドテーブル会議」を開催、昨年に引き続きテーマを「新しい情報技術が教育・研究をどのように変えたかU」として、アメリカの第一線で活躍する図書館関係者を招き、主にeラーニングと専門図書館との関係について講演とディスカッションを行った。

 第1日目は、五人の講師から講演があった。
まず、「米国の大学におけるeラーニングおよびeリサーチ:2010年の展望」と題して、ジョンズ・ホプキンス大学のスティーブン・G・ニコルズ教授が講演した。
 ニコルズ氏は、専門である中世の文学における研究・教育面でのデジタル化の活用について紹介した。中世文学をデジタル化すれば、学生たちが、世界中の中世作品の「実物」を見ながら学習をすることが出来る。また、世界中に散らばる作品の「写本」の多様性(場所や時代により写本のされ方が異なる)とその解釈を研究するには、デジタル化して1つのウェブサイト上に集積させることで可能となることなど、具体的事例とその利点について紹介した。
 次に、「デジタルリソースへの学生の期待と図書館サービスにとっての意味:コロンビア大学の経験から」と題してジェームズ・G・ニール・コロンビア大学情報担当副学長・図書館長が講演。
 ニール氏は、デジタル化と図書館の変化について俯瞰的に解説。情報科学や技術におけるトレンドについて一通り紹介した後、それを踏まえた上での新しい図書館の役割やビジョンなどに触れた。「ユーザーの期待にどう答えるのか」「ユーザーについてどのように知るのか」など、ユーザー志向の図書館であるためのポイントや、図書館2.0のコンセプトについて解説した。
 次に、「知識共有の文化の創造:組織的eラーニングにおける専門図書館員の役割」と題して、ジャニス・R・ラチャンス米国専門図書館協議会代表が講演した。
 ラチャンス氏はデジタル化時代の専門図書館員の在り方について多角的に紹介した。講演の中で「eラーニングに対して積極的に関与することは当然の活動であり、組織に対して自らの価値を実証したり、指導的役割を担う存在として位置づけるには有益。その中で、専門図書館員は絶えず学び続けなければならない。それも、図書館のトレーニングでは取り上げられないような教育設計や成人学習、マーケティングなどの学習が必要である。こうした中で、専門図書館員は、大学がeラーニングへの投資に対して十分な「見返り」を約束することが可能になる」などと述べた。
 続いて、「フロリダ大学におけるeラーニングと研究に対する図書館の支援」と題して、フロリダ大学ジョージ・A・スマザーズ図書館のジュディス・C・ラッセル図書館長が講演。
 フロリダ大学は、米国でも最大規模の大学として5本の指には数えられる。ラッセル氏は同大学のeラーニング、ラーニングコモンズなどを紹介。現在深刻な環境破壊となっているフロリダの石油流出事故については、まさに図書館としてどのような貢献ができるのかを考えなければならないと述べた。
 最後に、「Googleブック検索の時代における研究、教育、学習とハーティトラスト:ミシガン大学だからできること」と題して、ミシガン大学図書館のジョン・P・ウィルキン情報技術担当准館長・ハーティトラスト常務理事が講演した。
 ハーティトラストは、研究図書館の蔵書のデジタル化を推進するネットワーク団体である。小規模の図書館が多く加盟し蔵書数は600万札を上回る。Googleの書籍電子化のプロジェクトとも連携しており、大規模な「仮想図書館」が構築されつつある。これにより、「発見できることの深さと幅」が広がったが、研究と教育の本質は基本的には変わらず、依然として疑問の提起と解説に基づいている、などと解説した。
 二日目は質疑応答が行われた。

Page Top