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教育学術オンライン

平成22年4月 第2399号(4月28日)

高めよ 深めよ 大学広報力 〈69〉 こうやって変革した66
 地域貢献は社会貢献 
 ゼミの充実企業と連携 地域のリーダー育成 
 高崎経済大学

 少子化により、大学はどこも受験生確保に呻吟している。前回の都留文科大学(山梨県都留市)と同様、今年度入試の受験生が前年を600人近く上回った公立大学が高崎経済大学(吉田俊幸学長、群馬県高崎市)。不況による受験生の国公立シフトや地元志向の強まりが要因といわれるが、高経大の地元の志願者は三割と多くはない。それより何より、高経大の最大の特徴は、高崎市の設立した大学の特色を生かした地域社会との連携、地域に根ざした教育・研究。受験生の応募にも一役買っており、「地域連携・貢献においては、全国の大学のトップランナー」を自負する。そんな高経大を「何か、私立大学に役立つことはないだろうか」という想いを胸に訪ね、受験者増の理由、地域貢献の実際などを学長らトップに聞いた。 (文中敬称略)

受験生大幅増 独自の入試形態が結実

 高崎経済大学は、1952年、関東軍旧高崎第15連隊兵舎跡地に設立された高崎市立短期大学が前身。57年、同短期大学を発展的に解消し、高崎経済大学(経済学部経済学科)となった。
 学長の吉田が説明する。「戦後、群馬県の官立高等教育機関は群馬大学として統合されました。高崎市は北関東の商都にふさわしい経済・経営系部局の誘致を計りましたが実現せず、独自に高等教育機関を設置することになり市立短期大学が誕生しました」
 64年、経済学部に経営学科設置、96年に地域政策学部を新設、地域政策学科設置、03年、地域政策学部に地域づくり学科、06年に他の国公立大学に先駆け観光政策学科を設置した。2011年4月には公立大学法人化を予定。現在、2学部5学科に約4000人の学生が学ぶ。
 96年の地域政策学部設置が、高経大の分水嶺となった。吉田が語る。「時代が多様化するなか、2学部にしないと生き残れないと判断、全国の大学に先駆けて地域政策学部を設けた。地方の大学にとって、地方公務員、地銀といった地元企業やNPOなどで地域のリーダーを育てることが使命と考えました」
 副学長の地域政策学部教授、大宮 登が続けた。「市立大学として、地域貢献・連携を教育研究のひとつの柱としてきました。それは、ゼミナールの充実であり、多様な地域や企業との連携です。ゼミでは、フィールドワークや地域連携を重視しています」
 教員と学生が一体となって「まちづくり」に取組む。高崎市内で、99年から実施する「たかさき活性剤本舗」は学生が仕掛ける中心街活性化事業。高崎産の農産物を販売する「たかさき昼市」や高校生が売上げを競う「熱血!高校生販売甲子園」も好評だ。
 過疎化が進む高崎市倉渕地区では、学生たちがゼミの実践研究として地元の農家の主婦らと「名物弁当作り」を進めている。地元の食材を使って作る弁当には、地元から数十人分の大口の注文も来るようになった。
 地域貢献は大学附属機関が後押しする。副学長の経済学部教授の石川弘道が語る。「地域や企業と連携の柱が産業研究所と地域政策研究センター。二つの研究所には、多くの教員が所員として参加して、企業や地方自治体の委託研究や講演会・講習会を行っています。研究成果はほとんど出版物にして社会に問うてます」
「現代GP」に連続採択
 地域に根ざした研究・教育は、文科省の現代GP(現代的教育ニーズ支援プログラム)で、04年に地域政策学部の「地域づくりへの学生参加プロジェクト」、05年に経済学部の「新地場産業の創出と参加型学生教育」が連続採択された。
 教育について、吉田に聞いた。「自主・自立を理念とし、学生の自主性を尊重するとともに自立性を助長するための教育を行っています。グローバル化と情報化に対応して、英語、情報教育を充実させています。英語は能力別の少人数クラス編成を行っています」
 学生の出身地は、県内3、県外7の割合だというから、都留文科大と同じく、全国区の大学。留学生は、地域政策学部に25人(1学年)の定員があり、多いときは200人いたが、現在は130人。中国からの留学生が大半だという。
 さて、なぜ、受験生確保がうまくいっているのだろうか。吉田が語る。「地域政策学部の設置で学生数は倍になったが、入試の倍率は維持され、この間、就職も順調に推移してきました。地道な高校訪問や地方試験など独自の入試形態もプラスに働いているのではないでしょうか」
 独自の入試形態のひとつが全国主要都市における地方試験。「今年は、地方試験での受験生が予想以上に多く、会場の変更を検討したほどでした」(大宮)。もうひとつが、経済学部が行う中期日程(旧C日程)で、「国立大と併願ができ、レベルの高い受験生が集まる」(石川)という。
 就職率は、これまで95〜100%で推移してきたが、今年は90%強と厳しかったという。就職先は「全国区」で、岐阜から北海道まで、金融や証券会社など地域企業の役員も出ている。公務員採用は約20%だったが、市町村合併などで採用が減って現在は10%強に下がったという。
 他大学との交流では、都留文科大学と対抗戦「鶴鷹祭」(かくようさい)を毎年行う。「ぐんま公立3大学」と称し前橋工科大学、群馬県立女子大学と単位互換制度や合同入試説明会で新たな連携を行っている。
人気の「学部案内」
 ラグビー、ソフトボール部など運動部も活発で、OBの支援もある。野球部の村田 繁コーチは前プロ野球パリーグ事務局長。また、陸上部が主催する地元の小中学校陸上記録会は、多くの児童たちの励みにつながる小さな地域貢献。
 広報面で特筆すべきは、学部ごとの大学案内。経済学部は「INTRO」、地域政策学部は「APPROACH」のタイトルで、80頁前後の冊子。「教員と学生で組織する学会が作成、全員の教員が登場して研究テーマなどを語っています。堅苦しくなく、わかりやすいと受験志望者にも人気」(吉田)。
 学長の吉田が最後に述べた。「先行の経済学部が基礎を作ってくれて、いまがある。ブランド力を高め、教員が地域に限定せず、社会貢献の意識を持って取組めば、学生は集まるし、ついてくると思う。
 大学のグローバル化を考えると、地域貢献の活動は、高崎市では様々なことを行っているが、高崎市だけのものではない。本学で学んだ学生は北海道や沖縄など全国各地で、そして海外で実践してほしい」
 今回の取材には学長と2人の副学長が臨んでくれた。3人に共通していた言葉が「地域貢献は社会貢献」。「全国の大学のトップランナー」としてスピードを緩めないという決意がそこにあった。

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