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平成22年3月 第2394号(3月10日)

新刊紹介
  戦後教育行政を問う
 「教育改革のゆくえ」
  小川正人 著

 戦後ずっと自民党の文教族と文部官僚に牛耳られてきた教育行政。そして、2000年以降の内閣主導による教育改革。これらの是非を問う。
 第一章は、米国の政治学者、ショッパの次の論及に考察のすべてが収まっている。〈自民党政権時代の教育政策課程では、「下位政府」が影響力を持ち、自らの利益を擁護するため改革を拒否してきた〉
 下位政府とは、〈各行政分野の族議員と、官僚を軸に、関係する官民の様々な利益集団・団体からなるネットワーク〉これが、2000年前後からの政治改革で一変。
 「“政治主導”の教育政策決定」(第二章)に変わった。経済財政諮問会議による義務教育の国庫負担、地方分権改革推進会議の教育委員会制度の見直し。さらに、規制改革会議による株式会社の学校参入…。
 この構造改革は、文科省の力を剥いだ。文部官僚の発言。〈財務省は金を握っている。総務省は地方と人を握っている。二つが手を握ったら、埋没せざるをえない〉
 構造改革は合わせて、文教族の政治力も後退させた。〈族議員と官僚を核とした「下位政府」の既得権打破に踏み込んだ改革を行ったのが小泉内閣だった〉
 いま、最も関心の強い民主党の教育行政は、五章に出てくる。民主党の教育委員会制度廃止案は〈現行制度の改革案がより適切ではないかと思える〉と冷静にとらえる。
 終章で、〈政府や政治は、どのような充実した公教育制度を構築できるかの見通しや制度改革の選択肢を国民に提示する責任がある〉と提言する。文教族への挽歌として読んだ。

 「教育改革のゆくえ」  小川正人 著
 ちくま新書
 п@048―651―0053
 定価 740円+税

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