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平成22年3月 第2393号(3月3日)

新刊紹介
  器量の大きい14人
 「ひとを動かす言葉の力」
  文藝春秋3月号

 「言葉」が軽んじられる薄っぺらな時代、目のつけどころがいい。改めて、菊池 寛のつくった雑誌であることを認識する好企画だ。
 「指導者研究 ひとを動かす言葉の力」は、松下幸之助、土光敏夫、岸信介、後藤田正晴、大山康晴、三原 脩ら政財界、文化・スポーツ界の一四人を取り上げる。
 執筆は、登場人物の身近にいた人。松下幸之助は、元松下電器社長の谷井昭雄が「若い頃かけられた言葉は忘れられない。常に経営の指針にしていた」と書き出す。
 〈ある日、こう訊ねられた。「きみは商品を抱いて寝たことがあるか」。(中略)寝食を共にするほど向かい合って始めて、商品のほうから改善点を気づかせてくれる、と実感することがあった〉
 土光敏夫のことを中曽根康弘元首相は〈土光哲学は「メザシの清廉」に凝縮されている。(中略)土光さんのように、自らの魅力をして人を牽引できるエネルギーを持った人こそ、真のリーダーと私は呼びたい〉
 岸 信介のことを塩川正十郎は〈岸先生に「政治家と評論家では、ことが違う」と教えられたことがある。(中略)決意を断定して言うのが、政治家の言葉なんだ〉
 中曽根は土光と対比させながら〈今の政治家には硬軟併せ持つようなボリュームと大きさがない。言いかえれば、人間の器量が小さいのだ〉と書く。
 一四人に共通するのは、この器量。本号に、評論家の福田和也が「小沢一郎のちいさな『器量』」を寄せているのは偶然か。いまの政治、経済、文化・スポーツの人物が稚拙でつまらん理由がわかる。

 「月刊 文藝春秋 3月号」 文藝春秋
 文藝春秋
 п@03―3265―1211
 定価 800円

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