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教育学術オンライン

平成22年2月 第2389号(2月3日)

高めよ 深めよ 大学広報力 〈59〉 こうやって変革した56
 寮生活、留学を義務化 内定率100% 少人数教育
 学長自ら「広告塔」に 
 国際教養大学

 東北地方にあって小規模ながら独自の存在感を示す大学として、二番目に取り上げるのは、国際教養大学(中嶋嶺雄学長、秋田市雄和椿川)。徹底した少人数教育、授業はすべて英語。新入生は一年間の寮生活を、卒業までに一年間の海外留学をそれぞれ義務化と、徹底している。キャンパスは、外国人留学生、外国人教員がいっぱいで、さながら異文化空間。開学して6年。08年度に初の卒業生を出したが、就職希望者の内定率は100%、09年度卒業予定の学生もほぼ100%と好調だ。就職先は英語や国際関係の職に限らず、多岐にわたる。生き残りに懸命な地方の中小規模大学のモデルケースともいえる大学を訪れた。
(文中敬称略)

授業は全て英語 全国、世界から学生集う

 国際教養大学(英語・Akita International University)は、04年に公立大学法人第一号として開学。大学の略称はAIU(エーアイユー)。単科大学で、日本で初の地方独立行政法人が運営する。廃校となった米ミネソタ州立大学機構秋田校の旧校舎を利用して開学した。
 学生700人の小さな大学
 国際教養学部のみの単科大学で、グローバルビジネス課程(Global Business Program)とグローバルスタディズ課程(Global Studies Program)がある。一学年定員150人、約700人の学生が学ぶ小さな大学で、一クラス平均15人前後の少人数教育。
 教育環境は申し分ない。「都会の利便性とはかけ離れた環境で、学生は『これまでの人生で、これほど勉強したことはない』というほどに、勉学と向き合っています」(学長の中嶋)のように、キャンパスは秋田市の繁華街から車で30分以上かかる。ここには、勉強漬けのキャンパスライフがある。
 事務局次長の高橋訓之が大学を語る。「全てが英語での授業、新入生は外国人留学生と共に一年間の寮生活、卒業するまでに必ず一年間の海外留学など、学生たちはこれまでに経験したことのないチャレンジを積み重ねています。24時間オープンの図書館やコンピュータ室が象徴するように、教職員は時に親となり、時に友人となり、学生を支えています」
 学生は全国各地から集まる。北海道から沖縄まで、男女比は男性3、女性7の割合。入学者に占める秋田県出身者は二割に満たず、卒業後、県内企業に就職する学生も10人程度。「県の金で、他の地域の学生を育てている」といった声が県議会などにはあるとか。
 留学生も世界各地から集まる。現在、120人を超える。全員が日本人学生と同じ学内の寮やアパートに住んでおり、日本人学生と留学生との距離が近い。また、教員の約五割が外国籍で、外国人教員比率は日本の大学の中では第二位。
 入学後一年間は学内にある学生寮での生活が義務付けられている。二年次以降も学内にある大学管理のアパートへの入居が可能で、多くの学生が「24時間、大学で生活」する格好だ。「大家は大学なので、家賃も上げたいのですが…」(高橋)できずにいる。
 図書館は24時間開放
 図書館も24時間開放。見せてもらったが、県特産の秋田杉がふんだんに使われており、森林浴のような気分に。「学住近接ですので、徹夜で勉強している学生も珍しくありません」(高橋)
 入学すると、学生は、初めの2年間は幅広い教養科目を履修し、三年次の科程選択に向け自分の適性や関心を見極める。海外、特に北米の主要な高等教育機関であるリベラルアーツカレッジで普遍的に採用されているシステムだという。
 学生には、卒業までに二つの大きなハードルがある。入学直後の第一セメスターでは必ずEAP(English for Academic Purposes)と呼ばれる学術英語のプログラムを学ぶ。TOEFL500点とGPA2.5以上の条件を満たしてEAPを修了しなければ、次のステップに進めない。
 二つ目のハードルは一年間の海外留学。留学なしに卒業できない。特定の単位数と必修科目を修め、TOEFL五五〇点及びGPA2.5以上の条件を満たせば自分の好きな時期に留学できる。二年次秋から三年次秋に留学する学生が多い。
 「留学先の大学では、自分の専攻分野のカリキュラムに合致する授業を一年間で30単位程度履修します。本学での履修単位数と変わりません。現在、海外提携大学は29の国と地域の97校に及んでいます」(高橋)
 好調な就職状況ではあるが、開学後しばらくは懸念されたという。高橋は「開学したばかりで、就職の実績がなく、父兄からは『希望する企業に就職できるのか』といった心配する声がありました」と話す。
 「人気企業」に就職
 しかし、杞憂に終わった。初の卒業生を出した08年度、就職希望者の内定率は100%。伊藤忠、全日空、三井住友銀行といった人気企業も並ぶ。09年度卒業予定の生徒のうち就職希望者の内定率もほぼ100%となる見込み。 
 高橋は「企業の人事担当者が関心を持つのは、うちの学生はなぜ都会の大学でなくて、あえて田舎の大学を選んだのか、という点です。目的意識があり、自発的に学ぶ姿勢が評価されているようです」と語る。
 「企業に入ったら、田舎に飛ばされることもあります。うちの学生は、もともと田舎で学んでいるから、どこへ転勤させても大丈夫」(高橋)というあたりが、転勤の多い商社やメーカーに評価されているともいう。
 就職支援にも力を入れる。企業を大学に招いて開催する「就職セミナー」にはグローバル企業などが多く詰め掛ける。学生には最低二週間のインターンシップも奨励されており、実施後は2単位として認められる。
 課外活動も盛んで、語学サークル、問題意識を持って討論するサークル、ユネスコなどの主催するプロジェクトや国際会議に参加する学生も多い。軟式野球部は06年度の東日本軟式野球大会に出場するなど活躍、文武両道の学生が育つ。
 文武両道の学生育つ
 順調な就職、その結果として、入学を志す受験生の数も大幅に増加…いい回転をしている。こうした実績は、大学や大学問題を取り上げる新聞や雑誌、テレビが関心を持ち、次々に取材に訪れる。「マスコミの皆さんの取材が何よりの宣伝になっています」と高橋は語るが、それだけではなさそうだ。
 学長の中嶋が広告塔の役割を果たす。雑誌で中嶋は話す。「もはや大学はブランドで選ぶのではなく、カリキュラムで、どんな内容の教育が受けられて、卒業後に、どんな人物になれるかで選ぶ時代になっている。親はそのことを認識するべき時です」
 コメントとともに、中嶋の写真が大きく掲載されていた。中嶋はマスコミに登場する機会も多く、それを苦にしないという。独自性を打ち出し存在感を高める大学は、また学長の存在感も高い。

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