平成22年1月 第2388号(1月27日)
■トラフグ稚魚の雄性化に成功
近畿大学水産研究所
クロマグロの完全養殖を世界で初めて成功させた近畿大学(畑博行学長)の水産研究所では、富山県射水市の富山実験場で、人工ふ化させたトラフグの稚魚にホルモン投与や多倍体(染色体の操作などにより、人為的に二組以上のゲノムを持つようにした個体)などを使用せずに、主に水温調整によって、安定して80%以上の割合で雄化させる養殖技術の開発に成功した。
白いダイヤとも言われるトラフグの白子(精巣)は、高級食材として珍重される。トラフグは、ふ化後2〜6ヶ月の間に雌雄が決まる。通常、その比は一対一である。富山実験場の澤田好史教授らの研究チームは、10年以上も前から研究に取り組み、富山湾の水深100メートルからポンプで汲み上げた清浄な冷たい海水で稚魚を飼育した。
研究では、海水の温度、飼育に要する期間、成育課程のどの段階で使用するのかなど試行錯誤を繰り返し、2006年に初めて約80%の雄性化に成功した。その後、さらに研究を進め、安定した飼育条件等の技術開発の結果、国内特許出願を行うとともに、今年3月の日本水産学会で研究成果を発表することになった。
これまで判明した諸条件は、@水温12℃〜17℃の海水を、A稚魚のふ化後15日から79日を含む期間で、B65日から105日間にわたって飼育するというもの。
今後は、水温の低い海水を使うとなぜ雄性化が促進されるのかといった生理学的な解明を目指し、遺伝子研究等を進め、雄の割合を100%にまで高めていく方法を開発するとともに、低水温飼育下での飼育期間の短縮と形態異常発症の軽減も図っていくこととしている。また、今年11月頃を目途に白子を加えたトラフグ鍋・刺身セットを開発して発売する予定。