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平成22年1月 第2385号(1月1日)

建学の精神を生かした目標を掲げ邁進

日本私立大学協会副会長/金沢工業大学学園長・総長  黒田壽二

 明けましておめでとうございます。
 平成22年は、庚寅(かのえとら)年です。「寅」の字は、「動く」ことを意味し、春が来て草木が萌える(萌芽=芽吹き成長する)状態を表しているそうです。今年は、陰陽五行で「金剋木」の年回りといわれ、活動を活発化させる年です。旧年来温めていた大学の活性化、改革路線を実り多いものにする時がきたといえましょう。
 私大にとって、自ら解決できそうもない外的要因による地域間格差や規模間格差、国私間格差は、年を追うごとに強まっています。地方における大学の使命は、その地域における文化的活動や地域産業の活性化に重要な役割を果たしています。日本全土を考えるとき地方切捨てなどということはありえず、地方がいきいきと活力を発揮してこそ日本がグローバル社会で生き抜く力となると考えます。その力の源泉は地域に立脚した大学にあることは言うまでもありません。しかしながら、大学進学適齢の18歳人口は減少の一途をたどり、120万人台から100万人台へと移行します。従来の大学施策では大学を維持できなくなることは明らかです。今後数年は18歳人口が120万人台で推移しますが、その間に100万人台で維持できる体制を作り上げることが、地域と共に生きる地方私大では焦眉の急であり、例えば、一八歳から二二歳を対象にした教育や、知識基盤社会に相応しい社会人や留学生の受け入れ、社会と連携した教育・研究の開発など、これまでの大学運営の既成概念を払拭した新しい施策が必要となるでしょう。
 一方、中央教育審議会大学分科会において、ここ数年で、国が支援すべきことや大学自らが改革すべきことを提示しています。その第一が、大学教育の質保証の在り方、自己点検評価に基づく教育改革・改善の促進。第二が、グローバル社会での大学の国際的通用性、国際的学習成果の評価への参加。第三が、大学間連携、地域連携、地域貢献。第四が、教育研究情報の公開、財務・経営情報の公開。第五が、学生の社会的・職業的自立に向けた積極的な態度と志向性の涵養等です。特に現在パブリックコメント中であります、「社会的・職業的自立に関する指導等」(キャリアガイダンス)は近年の若者達の社会観、職業観の後退した中で、最終段階にある大学においても、社会的・職業的自立に向け、必要な知識、技能、態度を育むことが重要であると考えられています。
 また、大学分科会の大学規模・大学経営部会では、本来あるべき、大学の規模の在り方については、いまだ俎上に上がっていませんが、18歳人口が半減している現実の中で、大学の地域配置の在り方や規模の在り方について早急に議論すべきと考えています。解決策の一つとして、批判を恐れずに言うならば、東大をはじめ国立大学の学部定員が205万人時代のままであることに問題があります(多少の定員減はしていますが)。これにより、社会や産業界から大学卒業者の質の低下が甚だしいとご批判を頂き、さらには国際比較においても、日本の大学の教育力の低さが問題化しているのを見ても明らかです。日本国民は、東大が、大学のトップであることに疑いすら持たず、そうあるべきだと思っています。このことに、大学人や行政を担当する人たちは真摯に耳を傾けるべきです。明治以来、国策として巨額を投じてきた東大(強いて言えば旧帝大)が他の一般大学に成り下がるべきではないのです(役割を終えたと感じるのであれば廃止すべきです)。この現状を打開するには、まず、東大の学部定員を思い切って縮減し、学生の質を高めるとともに、国際的通用性ある教育・研究の質を組織的に充実向上させることから始めるべきです。そうすれば、大学全体に波及し、教育力の向上にも繋がり、地方の大学も活性化の糸口を探ることが可能になるでしょう。
 いずれにしても、今年は、私立大学の改革、改善に活力を与える年になることを願い、失礼を省みず夢を語らせていただきました。会員大学の更なる発展を、年頭に当たりお祈り申し上げます。

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