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平成22年1月 第2385号(1月1日)

教育大改革のポイントは高等教育の充実

 日本私立大学協会副会長/北海学園大学理事長 森本正夫

 明けましておめでとうございます。過ぎし一年も国内外共に激動の年でした。中でも日本では8月下旬の選挙による、戦後初めての本格的な政権交代が特筆される出来事でした。このこと自体は、議会制民主主義の成熟過程における必然的な事象として、前向きに受けとめるべきでありましょう。
 新内閣の動きについては、脱官僚、政治主導というスローガンや、衆人環視の中での事業仕分けなど、政治の新しい手法として注目して参りました。ただ、何のためにどういう基準で、その結果どういう世の中になるのかという国家戦略が、今一つ判然としないうらみがあり、結局は選挙時のマニフェスト至上主義に立っての財源探しだったのではないか、いわば政治手段、手法が目的化して混同してしまったのではないかという批判も出てきております。
 そもそも、対外的な信頼感や安定性に基づく外交や防衛政策や、何十年先を見通した先見性や過去からの蓄積が大切な教育・学術・文化などの文教政策は、政権交代によって急変したり、短いスパンでの費用対効果比によって判断すべきものではないと思います。
 さて、教育政策でありますが、日本は古代から教育重視の国柄でした。とくに十九世紀の開国以後、国の独立と繁栄のための最重要国策の一つは教育であるとして、明治初年に小学校を義務化し、昭和はじめまでに就学率世界一の初等教育体制を確立しました。第二次大戦後も「祖国復興は教育にあり」として、義務教育年限を六年から一挙九年に延長して新制中学校をスタートし、さらに高等学校も拡充して、中等教育はほぼ100%の普及率となりました。そして今、日本の三度目の教育大改革の中心課題は、高等教育と学術研究の充実であり、しかもその成否は高等教育の八割を占める私立大学の経営の安定と教育内容の充実にかかっています。
 そのような認識に立って、まずは日本の高等教育への財政支出がOECD加盟国の中でGDP比率で最低ラインであるという現状と、その配分の国立私立間の非常識とも言える格差の是正を、強く訴えたいと思います。さらに北海道支部の立場で一言するならば、昨年春の全国の大学の入学定員割れを見ると、中央よりも地方、大規模校よりも小規模校、国公立よりも私立が深刻な実態にあります。しかも現在の制度や地域環境のもとでは、自己責任による努力の限界を超えており、このまま放置するならば地方の特に小規模私大は軒並み崩壊の恐れがあります。それによって北海道のように広い面積で人口希薄な地域においては、進学断念者が多くなるとともに、貴重な知の拠点を失うことによる地域の過疎化や沈滞化などの負の連鎖現象はとめどなく進むことでしょう。同じ人数の定員割れでも大規模校と小規模校では、そのダメージの度合は全く違います。設置基準やペナルティの適用などについて、政策的に地域別や規模別の弾力的配慮も検討する段階にあるとみています。
 もちろん私学は政府や政策によりかかって、自らの改革努力をおろそかにすることなく、自主、自律、創造の私学精神を発揮することが必要です。時代や社会の急激な変化や、対象となる学生の能力、個性、年齢、志望などの多様化の中で、それぞれのニーズに応えると共に、学士の称号にふさわしい力をつけて世に送り出す責任が私共にあります。今年も引続き入学時、在学中、卒業時の各段階におけるチェックや指導の更なる適切化に努力し、とくに生涯にわたる学ぶ姿勢と学び方が身につくことを目指しての質保証に、一層の努力を傾注したいものです。
 歴史の節目になりかねないこの年、個々の大学としても日本私立大学協会としても、決意を新たにして前進することを願って、新年のご挨拶といたします。

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