平成21年12月 第2384号(12月16日)
■文科省
監事の役割・財務監査など講演
学校法人の監事研修会
文部科学省は、去る11月24日、東京・港区のメルパルクホールで、「平成21年度 学校法人監事研修会」を実施した。
研修では、監査業務に係る職務の重要性の認識や専門性の向上に資するため、最近の私学行政や施策、学校法人の内部統制(管理・運営面と財務面)などについての解説が行われた。
私学行政の課題
河村潤子私学部長の開会の挨拶に引き続き、はじめに、同部の村瀬剛太参事官付視学官が「私学行政の現状と課題について」と題し、学校法人の理事会・監事・評議員会の関係、学校法人の管理運営制度の改善と財務情報の公開など私立学校法の改正等を挙げた上で、特に、管理運営に係る「監事による監査」について次の留意点を強調した。
●監査報告書
各学校法人の規模や実情等に応じた適切な内容とすること。
●評議員会への出席
理事会に出席して意見を述べることが監事の職務として規定されているが、学校法人の重要事項について諮問を受ける評議員会にもできる限り出席する。
●会計監査との連携
私立学校振興助成法に基づいて公認会計士が行う会計監査との連携を図ることが重要。
私学助成
次に、同部の日比謙一郎私学助成課専門官が「私学助成」について、事業仕分けが行われている概算要求段階の予算について詳細に説明した。
私学助成関係では、@私立大学等経常費補助3222億円、A私立高等学校等経常費助成費等補助1043億円、B私立学校施設・設備の整備192億円となっており、@の私立大学等経常費補助についてでは、運営の基盤的経費を確保するとともに、医学部定員増、経営の健全性の向上等に取り組む大学等を重点的に支援することなどを説明した。
そのほか、民主党のマニフェスト等における私学助成に関する記述(「私学助成を維持する」など)を紹介するとともに、事業仕分けの成り行きを見守っていきたいなどと述べた。
監事の役割
小休憩の後、「学校法人立大学の現状と監事の役割」と題して、金沢工業大学の黒田壽二学園長・総長が登壇した。
黒田氏は、私立大学の厳しい現状を述べた上で、人口減少等の大学を取り巻く外的要因がある中で、私立大学はその役割を果たすとともに経営改善を図るなど健全化を目指さなければならないと指摘し、監事の監査業務への期待することとして、年度の業務監査・財務監査方針の設定と関係者への周知、事業計画・年次予算作成過程に関する監査、毎学期・年次会計報告の監査、公認会計士との財務監査方針の打合せと連絡調整、理事会・評議員会の運営状況の監査、事業報告書作成の監査などが期待されるとし、「年に一回だけ監査報告書を作成して終わり!」であってはならないと強調した。
そのほか、大学の社会的責任、情報開示等に係わる監事の役割等にも触れ、最後に、「学園全体の意識改革と協力体制を構築して大学の活性化を掴んでいきたい」と締めくくった。
財務監査のポイント
講演の最後は、日本公認会計士協会の佐野慶子常務理事(学校法人担当)から「監事による財務監査のポイント」と題して、具体的事例を交じえた解説が行われた。
私立学校法に基づく監事監査の概要を述べるとともに、監査人の違いによる三様監査の特徴を解説した。
@外部監査…学校法人から独立した立場の公認会計士による会計監査。
A内部監査…学校法人の内部の者による業務及び会計の監査。不正や誤謬が起きないように設計されたルールが意図通りに執行されているかどうか、理事長の命を受けて監査する。
B監事監査…学校法人の機関としての業務及び財産の監査、日本の大学教育の七五%以上を担う私学の公共性を考えると、理事長の説明責任を担う者としての機関監査とも言える。
そのほか、効果的な監査のために不可欠な内部統制の重要性を挙げ、ガバナンス機能の強化が十分に果たされていないと、「えっ、まさか!」といった不正等が起こり得るとし、不正が起こる三要素の「動機」、「機会」、「正当化の姿勢」を説明した。
最後に、監事はその職務遂行を通じて内部統制の有効性を高めることが期待されており、日本の教育を担う私立学校の存在を磐石なものとするために欠かせない存在であると語った。