平成21年12月 第2384号(12月16日)
■私大協会
21年度 第2回「教育学術充実協議会」を開催
高大接続テスト・認証評価・分野別質保証の課題など協議
「大学の質保証の新局面」テーマに
日本私立大学協会(大沼 淳会長)は、去る12月2日、東京・市ヶ谷のアルカディア市ヶ谷において、平成21年度第2回教育学術充実協議会を開催した。メインテーマ「大学の質保証の新局面」として、教育学術充実研究委員会(担当理事=中原 爽日本私立大学協会副会長、福井直敬武蔵野音楽大学理事長・学長)が準備・運営を進めてきたもので、学術研究の動向をはじめ、高大接続テスト、認証評価の今後、分野別質保証の検討等、新たな課題について、約200名が集ったフロアとの質疑応答も交え協議が行われた。
協議に先立ち中原担当理事が「政府の機構、システムの大幅な変更を背景とした新局面を迎えている現状を鑑み、当面課題とされるいくつかのテーマを様々に協議する機会としたい」と挨拶を述べた。
協議に入り、小出秀文事務局長が「私立大学振興上の今日的課題」と題して、平成22年度私学関係政府予算、税制改正要望等の解説を行った。
続いて、「我が国の学術研究に係る諸動向」と題して、文部科学省研究振興局長の磯田文雄氏が、第四期科学技術基本計画策定に向けた検討状況、科学技術・学術研究の充実に関る諸課題等について解説を行った。
8月に「基礎科学力強化に向けた提言」が、基礎科学力強化委員会より報告された。国家の最重要戦略として科学技術の振興に取組むべきであるとして、基礎科学力の強化の重要性を提言している。そのための大学院教育の充実等に向けた高等教育政策、公財政投資の拡充を図ることが委員会の意志により盛り込まれたことを強調した。
昼食休憩後、「高大接続テスト(仮称)の検討状況について」と題して、北海道大学公共政策大学院特任教授の佐々木巨カ氏が、現在検討中の「高大接続テスト(仮称)」の検討状況について解説した。現在指摘されている高大接続の機能不全の要因については、@ユニバーサル化、A普通教育と大学教育の課程上の断絶、B高校生の学習意欲の低下を挙げている。高大接続については、適切な達成度テストを行うことにより客観的な学力把握が可能になるのではないかとの見解を示した。
次に、「認証評価の今後の課題」と題して、私学高等教育研究所主幹の瀧澤博三氏が、大学の質向上に資する認証評価制度の役割と、認証評価制度が抱える今後の課題について解説した。
第二クールを見据えた今後の評価文化定着の見通しを述べた上で、大学は本来の自己点検・評価のシステムを構築しなくてはならないこと、そのための大学の目的に応じた自主的点検項目の策定、なおかつ社会に説明ができる公開性が重要であることなど、主体的に取組むべきと述べた。
最後に、「日本学術会議における大学教育の『分野別質保証』の在り方の検討について」と題して、国際基督教大学教養学部教授の北原和夫氏、日本大学文理学部教授の広田照幸氏が、日本学術会議における質保証に関する審議の状況について解説を行った。
まず、北原氏が、新しい質保証システムの必要性から、日本学術会議において、教育課程編成上における参照基準策定の検討に至った経緯を説明した。参照基準は、すべての学生が身に付ける「基本的な素養」と定め、具体的には大学の教育目標ごとに設定されて人材育成の観点から入口・出口に向けて発信すべきもの。大学の役割を明確化するものでもあると述べた。
続いて、広田氏が日本学術会議での現在までの審議結果の概要を解説した。同会議の提唱する参照基準は、各大学による教育課程編成に資する基盤を目指すものとして、具体的な機能のプロセスを説明。参照基準をもとに、各大学がどのように肉付けするかが重要であり、自主的判断で教育課程を編成する。その他、参照基準についてポイントとなることを解説した。
協議が終了し、福井担当理事が「議論半ばの取組みであるが、具体的に質保証に取組むことの一助となったのではないか」と挨拶を述べて、閉会となった。その後、会場を移して、情報交換会が行われた。