平成21年12月 第2383号(12月2日)
■分野別質保証のシンポ開く
日本学術会議・朝日新聞
11月23日、日本学術会議および朝日新聞社は、東京大学安田講堂において、公開シンポジウム「大学教育の分野別質保証に向けて―日本学術会議からの報告」を開催した。
昨年12月末の中教審答申「学士課程教育の構築に向けて」は、学部段階の教育を学士課程の教育として本質的に立て直す必要があることを指摘し、日本学術会議に分野別質保証の枠組みづくりを依頼した。これを受け同会議では、「大学教育の分野別質保証の在り方検討委員会」を設置し、@質保証枠組み検討分科会、A教養教育・共通教育検討分科会、B大学と職業との接続検討分科会の三つの分科会を設け、検討を進めてきた。
シンポジウムでは、次の五氏のパネリストからの発表の後、パネルディスカッションが行われた。▽広田照幸日本大学教授、▽小林傅司大阪大学教授、▽本田由紀東京大学教授、▽籾井勝人日本ユニシス代表取締役社長、▽北原和夫国際基督教大学教授(同委員長)。
広田氏は、分野別質保証のための参照基準について、現在までの審議経過を紹介。「重要なことは、日本学術会議が策定した参照基準をなぞることではなく、各大学での教育課程編成が実効的に機能していくことである」と述べた。
小林氏は、教養教育・共通教育検討分科会の議論から、今日的な教養と教養教育について、「教養」を授けることは大学の使命であり、教養教育においては、教育手法の改革が必要であると述べた。
本田氏は、@大学に対して教育の職業的レリバンスについての方針の明示、A企業に対して早期化の抑制、大学教育修了後の就活の推進などを提言。また、籾井氏は、大学教育についての考えについて述べ、学生に養って欲しい力として、思考力と語学力を挙げた。
最後に登壇した北原氏は、世界的課題を一学問分野の専門家だけでは担えず、分野、国家、階層などの差異を超えて協働する知性が重要であると述べた上で、「参照基準は、大学評価とは別の、実質的質保証となるような“説明責任”の取り方」であると述べた。
なお、検討されている質保証の枠組みの意義や疑問点について、大森不二雄熊本大学教授がアルカディア学報において、論じているので参照されたい。