平成21年11月 第2382号(11月25日)
■オーストラリアの大学事情
比治山大でワークショップ
比治山大学高等教育研究所(有本 章所長)は、去る10月16日、広島市の同大学において、第三回公開ワークショップを開催した。
オーストラリア・メルボルン大学のサイモン・マージンソン教授を招いて、オーストラリアの事例を学びながら、大学における伝統と変化について議論を深めるもの。同教授の講演後、参加者を交えてワークショップを行なった。
演題は「Tradition and change in universities: The case ofAustralia」。同教授は、世界的にグローバル化が進行し、高等教育の世界が急速に変化している点を強調した。オーストラリアの高等教育システムについては、39の公立大学と67の私立大学があるが、学生のほぼ95%は公立大学に所属。また、全体のおよそ4分の1(26.5%)が留学生である。高等教育進学率はOECD諸国中、高水準であり、中でも社会人学生は日本よりも多い。
とりわけ特徴的なのは、留学生割合の高さで、世界の留学生の10%が同国に留学している。80%がアジア出身で、これは政府が経済的な戦略の下、国際交流について積極的な受け入れ政策を実施しているから。同国の四大輸出産業の一つに数えられる。
一方、政府の政策により、大学はより“企業化”し、管理され業績重視となったが、その弊害として学術文化が弱くなり、基礎研究が衰退した。現在の大学政策は、より「アメリカナイズ」していると詳説した。
その後、フロアと次の議論が行われた。@世界の高等教育がグローバル化と研究大学間の競争との結合によってますます激化する中で、競争と同時に協同が重要。A留学生政策がビジネスに傾斜し、獲得した外貨がもっぱらサービスに還元され、教育研究に還元されないため、教育研究の低下を招来。B留学生の分野はビジネス、コミュニケーションなどに偏重。C自己評価重視の五年毎の外部評価は今後もう少し厳しくする方向で見直す。D低階層からの大学進学率上昇政策は成果がやや不十分。