平成21年11月 第2381号(11月18日)
■私大協会
就職部課長相当者研修会を開催
事例発表・講演など“就職指導”を研修
「就職支援とキャリア教育」テーマに
日本私立大学協会(大沼 淳会長)は、去る11月11日から13日まで、新潟市のホテルオークラ新潟において、「雇用環境の変化に対する就職支援とキャリア教育」をテーマに、平成21年度(通算第34回)就職部課長相当者研修会を開催した。同研修会は、同協会の就職委員会(担当理事=大橋秀雄工学院大学理事長、委員長=浦田雄司日本福祉大学キャリア開発部次長)が、準備を進めてきたもの。(株)資生堂代表取締役執行役員社長の前田新造氏の講演や各大学の事例発表のほか、希望テーマ別の班別討議などが行われ、加盟大学384大学から207大学、271名が参加した。
【第一日目】
はじめに、大橋担当理事が、歓迎の意とともに、「このたびの研修会は、46%が初参加者であり、人脈作りの絶好の機会と捉えてほしい」と述べた。
次に、同協会の小出秀文事務局長が、高等教育政策の構造転換の視点から、私立大学を取り巻く諸情勢と今日的課題について述べた。
休憩を挟み、浦田委員長が、「雇用環境を取り巻く諸情勢と就職指導のあり方」と題して登壇。平成22年度の卒業・修了予定者に係る大学側「申合せ」「要請」などに触れ、就職問題懇談会・就職問題協議会等の活動について報告した。また、早期化に安易に迎合をしない大学側の就職支援を呼びかけ、キャリア教育の実践に打開策はなく、さまざまな取り組みを展開していくことが重要であると述べた。
続いて、「就職活動においてメンタルヘルス面で問題を抱えている学生への対応」と題して、中部大学学生相談室教授の桐山雅子氏が、講演を行った。心の病は「治療」、発達の問題は「支援」が必要であり、相手を尊重した学生対応が重要であると、事例を交えながら解説。そのためには、まず、丁寧に話を聴き、学生に合わせた対応を行っていく必要があると述べた。
続いて、近畿大学キャリアセンター事務長の本荘栄二委員が事例発表を行った。同大では、新規求人を学生に知らせる際、Web上ではなく、週に一度、配布物にしている。何人の学生が何回、サイトを確認したのかが把握できないWebに比べ、紙を媒体にすることで、学生一人ひとりを把握できるという。本荘委員は、学生の「考動力」を養うことが大切であり、そのためには、知性・話題(情報)・心・行動の四つの成長を意識させることが必要だと述べた。
一日目最後に行われた情報交換会では、和気藹々とした雰囲気の中で、積極的な情報交換が行われた。
【第二日目】
二日目・午前中は、二つの事例発表と(株)資生堂の前田氏の講演、午後は班別討議が行われた。
はじめに、北星学園大学就職支援課長の鈴木淳子委員が、同大のキャリア支援の体制強化について発表した。同大では、平日のX・Y講目に開催していた就職ガイダンスや講座等を、04年度から水曜V講目を確保し開講している。外部に委託せず、学生に親しみやすいプログラム名をつけるなどの工夫を凝らし、同大オリジナルのプログラムを展開している。鈴木委員は、同大就職支援課のこだわりとして、@ポータルサイトを持たない実践コミュニケーション、AFace to Faceの支援、B活気あふれる働く姿の提案の三つを紹介した。
次に文化女子大学就職相談室長の松田一政委員が、同大におけるインターンシップの取り組みについて発表した。同大では、インターンシップを授業科目としており、今年度は、136企業で236名の学生が研修を行った。研修終了後は、学生から提出される報告書と、企業側からの評価報告書を総合評価し、単位を認定している。最後に、松田委員は、学生にとっては、仕事の面白さや大切さを学び、プロの実力等を知る機会であり、企業にとっては、学生を受け入れることにより社内活性化等につながると、インターンシップの意義を述べた。
続いて、前田氏が、「資生堂の企業理念とイノベーション」と題して講演を行った。「三つの夢」(@100%お客さま志向の会社に生まれ変わること、A大切な経営資源であるブランドを磨き直すこと、B“魅力ある人”で組織を埋め尽くすこと)を掲げ、売上至上主義の考え方から、大きな転換を図った資生堂の改革などについて語った。
また、同氏は、“資生堂人”として育みたい能力と感性の指針として、美意識、自立性、変革力を挙げ、人材育成の基本方向を紹介した。大学改革にも応用できる示唆に富んだ話に、参加者らは聞き入った。
昼食休憩後の班別討議は、共通討議テーマを「就職指導の組織と就職部(キャリアセンターなど)の役割」とし、次の七つのテーマで14班に分かれて行われた。@キャリア教育の現状と対策、Aキャリア教育の計画的指導、B雇用情勢の変化と就職指導、C男女共生社会と女子学生の就職、D就職支援のための情報化システムの開発と運用、E文系学生の就職指導、F理系学生の指導。
【第三日目】
(株)東洋経済新報社第一編集局次長兼企業情報部長の田北浩章氏が、「100年に一度の大不況下・就職から見た良い会社、避けたい会社―企業の見方教えます―」と題して、昨年・一昨年に引き続き講演を行った。日本経済の現状と今後を解説した上で、企業の見方のポイントとして、新興国に舵をとっていること等を挙げた。同氏は、「企業理念は、船の帆。帆がない船は進まない」、「優秀な経営者は、経営理念を社員に伝えることに力を注ぐ」など、学生にとってよい会社かどうかを見極める際、売上や福利厚生だけでなく、明確な企業理念の有無が重要であると強調した。
最後に浦田委員長の閉会の挨拶で全日程を終えた。