平成21年10月 第2378号(10月28日)
■就職問題協議会
採用枠の拡大など配慮を
企業等に対して要請
就職問題協議会は、去る10月20日、大学側の「大学、短期大学及び専門学校卒業・修了予定者に係る就職について(申合わせ)」とともに、「大学、短期大学及び高等専門学校卒業・修了予定者に係る就職に関する要請」を発出した。同要請と日本経済団体連合会の「採用選考に関する企業の倫理憲章の理解を深めるための参考資料」は、次のとおり。
平成22年度大学、短期大学及び高等専門学校卒業・修了予定者に係る就職に関する要請
国公私立の大学、短期大学及び高等専門学校(以下「大学等」という)で構成する就職問題協議会においては、大学等卒業予定者の就職活動の秩序を維持し、正常な学校教育と学生の学習環境を確保するとともに、学生の就職機会の均等を期するため、「申合せ」を行い、全国の大学等に趣旨の徹底を図っております。
大学等は、この「申合せ」を行うに当たり、学生に高い学力と豊かな人間性を身に付けさせた上で卒業生として社会に送り出すという、本来大学等が果たすべき社会的使命と責任を十分認識するとともに、その責務を果たすため、全教職員が協力し、全学的にこれを実行することを確認したところであります。
採用選考活動の早期化は、大学等の教育機能の低下を招くものであり、十分な教育を受け得なかった学生を採用することなど、企業にとっても不利益をもたらすことになり、早期離職との関連も危惧されます。さらに、早期化を要因とする長期化は、採用選考活動の複雑化や多重内定など、混乱を引き起こしております。
また、中央教育審議会も、一方で大学自らが、「学士力」等の「学習成果」の達成に向け、教育内容・方法の改善、学修評価の厳格化を徹底して進めるべきことを指摘するとともに、他方では産業界においても、大学教育の成果を適切な時点で評価すべきことや、企業における採用活動の早期化は、企業が大学教育の「学び」を軽視していることを学生に示すことになることを指摘しております。
つきましては、貴職におかれては、平成22年度大学等卒業・修了予定者の就職・採用活動の秩序を維持するため、「申合せ」の内容について十分御理解いただくとともに、採用活動に当たっては、日本経済団体連合会で定める「倫理憲章」の趣旨に加えて、特に下記事項について御配慮をいただきますようお願いいたします。
併せて、現下の厳しい雇用情勢を踏まえ、新規学校卒業・修了者はもとより内定取消し等により就職未決定のまま卒業・修了した者の採用枠の拡大など積極的な採用に向けた特段の御配慮をお願いいたします。
一、採用選考活動の早期化是正について
〔1〕卒業・修了年次に達しない学生に対する実質的な採用選考活動を厳に慎み、採用選考活動は卒業・修了年次の四月以降とするとともに、可能な限り休日祝日又は長期休暇期間に行う等、大学等の教育活動に支障を生ずることのない採用選考活動を行うこと。
〔2〕就職情報出版会社が運営する就職活動の支援を目的としたウェブサイトなどにおける採用選考のための学生のエントリー開始については、卒業・修了年次の四月以降とするなど、適切に採用情報を公開するよう努めること。
〔3〕正式内定開始前の九月三十日以前に内定承諾書、誓約書、連帯保証書の提出を求める等、学生の自由な就職活動を妨げ、心理的な負担となる拘束を行わないこと。また、内定後に内定式や入社前研修等を行う場合には、学生の学修に支障がないよう配慮すること。
二、採用広報活動について
企業の採用広報活動(採用情報など一般的な企業情報を学生に提供する活動)として開催する「企業説明会」等の就職支援イベントについては、原則として休日や祝日又は長期休暇期間に行う等、大学等の教育活動を尊重するとともに、これらのイベントの開催趣旨が学生の自己分析や職業研究を深めるものであって、参加することが採用選考につながるものではないことを学生に対して明確にすること。
三、採用活動の公平・公正の確保について
〔1〕学生の応募書類は、「大学等指定書類(『履歴書・写真・自己紹介書』、『成績証明書《卒業見込証明書を含む》』)」とし、就職差別につながる恐れのある項目を含む「会社指定書類」《エントリーシート等を含む》、「戸籍謄(抄)本」、「住民票」等の提出を求めないこと。
〔2〕男女雇用機会均等法及びその指針の趣旨に則った採用活動を行うこと。特に、総合職採用において女子学生への特段の配慮が行われること。
〔3〕採用情報の提供に当たっては、求める人材の能力や資質を具体的に示し、公平・公正な公開を徹底するとともに、学校名、学部・学科、地域により就職情報(情報誌、ダイレクトメール等を含む)の提供や採用選考に差異を設けない等、就職の機会均等について一層の改善を図ること。
四、その他の事項について
〔1〕卒業・修了の際、未就職であったり、非正規雇用となった学生が、新たな就職先を求め、再チャレンジできるよう配慮していただきたいこと。その際、既に大学等を卒業・修了した者であっても、新規学校卒業・修了者と同じ扱いをするよう配慮していただきたいこと。
〔2〕学生の職業観の育成や学習意欲の喚起を促す観点から、重要な意義を有するインターンシップについて、積極的に受け入れていただきたいこと。
ただし、インターンシップは、教育の一環として位置付けられた就業体験であり、採用選考と直結した受入れは本来の趣旨にそぐわないものであることに留意していただきたいこと。
〔3〕企業側の「倫理憲章」と大学側の「申合せ」を実効あらしめるため具体的方策について、引き続き協議すること。
大学卒業予定者・大学院修士課程終了予定者等の採用選考に関する企業の倫理憲章の理解を深めるための参考資料
日本経団連では、1997年に「採用選考に関する企業の倫理憲章」を定めて以降、毎年、採用選考活動の早期化の自粛を呼びかけてきた。
今般、倫理憲章の理解を一層深めていただくため、下記の内容をとりまとめたので、各社の実情に応じ、選考活動の早期開始の自粛など倫理憲章の遵守への一層のご協力をお願いしたい。
なお、日本経団連は、今後も倫理憲章のさらなる周知徹底をはかり、産業界が一体となった取り組みとなるよう努めていく。
一、広報活動・選考活動とは
企業が行う採用選考活動は、広報活動と選考活動に大別することができる。
広報活動とは、業界情報、企業情報ならびに説明会日程、採用予定数、選考スケジュール等の採用情報を、学生に対して広く発信していくことを目的とした活動を指す。具体的には、会社説明会、インターンシップなど学生が自主的に参加または不参加を決定することができるものが該当すると考えられ、実施にあたっては、その後の選考活動に影響しない旨を明示するよう努めることが求められる。こうした活動については、事前に十分な時間をかけて行うことでミスマッチによる早期離職の防止が見込まれる。
一方、選考活動とは、一定の基準に達した学生を選抜することを目的とした活動を指す。
二、早期開始を自粛すべき「実質的な選考活動」とは
選考活動については、倫理憲章の「選考活動早期開始の自粛」で、「卒業・修了学年の学生が本分である学業に専念する十分な時間を確保するため、選考活動の早期開始は自粛する。まして卒業・修了学年に達しない学生に対して、面接など実質的な選考活動を行うことは厳に慎む」としている。
ここで言う自粛すべき「実質的な選考活動」とは、活動の名称や形式等を問わず、実態で判断すべきものであり、具体的には、A選考の意思をもって学生の順位付けまたは選抜を行うもの、あるいは、B当該活動に参加しないと選考のための次のステップに進めないものを言う。
ただし、WEBテストやテストセンターの受検、エントリーシートの提出など、日程・場所等に関して学生に大幅な裁量が与えられているものについては、学事日程への影響がない場合もあるため、当該活動が早期開始を自粛すべきか否かの検討を行う際には、倫理憲章の趣旨を十分に踏まえた上で、各企業が活動の実態に合わせて適切に判断することが求められる。