平成21年10月 第2377号(10月21日)
■団体連合会
研究環境・基盤整備に賛意
科学技術基本計画審議のヒアリング
第四期科学技術基本計画を審議する基本計画特別委員会(主査=野依良治(独)理化学研究所理事長)は、去る10月9日、文科省内で第七回会合を開き、これまで同計画に係る審議に対する高等教育機関からのヒアリングを行った。意見発表は、(社)国立大学協会、公立大学協会、日本私立大学団体連合会三団体からで、そのうち、同連合会からは、同連合会の高等教育改革委員会の黒田壽二委員長(金沢工業大学学園長・総長)が次のように意見発表した。
「世界的教育研究・研究開発機関の形成、科学技術・イノベーションのための研究環境・基盤整備」について議論されることは、賛意を表する。
▽「学術研究とイノベーション創出」との総合的推進は、我が国にとって大変重要な課題であり、科学技術の社会への貢献は欠かせないと考える。第四期計画には、基礎研究の成果を具体的にイノベーションに繋ぐ実用化環境の整備が特に必要であり、資源の乏しい我が国が、グローバル社会の中で、国際的に確固たる地位と競争力を維持するために不可欠な要素であると考える。これらの競争力強化と維持のためには、後継者育成が重要な鍵を握る。大学は、学術を継承すべき研究者の養成の機関であり、かつ、雇用の担い手としても重要な役割を担っている。特に大学の八割を占める私立大学の役割は大きい。その学部段階からの人材養成の能力を活用し、引き出す施策を戦略的に構築されることを期待する。
▽国家戦略としての重点的投資は重要であるが、裾野の広い学術研究に対する振興策、支援とのバランスのとれた政策の検討をお願いしたい。
▽基盤整備については、国立大学に重点が置かれて整備されてきた結果、国立大学と私立大学の格差は拡大している。重点整備した施設に対しては、私立大学に籍を置く研究者も気軽に活用できる施策が必要である。重点整備に当っては、私立大学の施設として整備することも重要である。
▽人文・社会科学との調和ある発展については、第三期計画でも言及されているが、現代社会が直面している諸問題を解決するためにも、科学技術と人文・社会科学との調和ある研究が不可欠である。
▽研究開発投資額の規模は、公財政支出において、OECD平均の1%にあげるべき。我が国の研究投資総額の八割は民間である。国と産業界の共同出資による基金を創り、基礎研究からイノベーション創出にわたる国家的研究活動の振興を図ることも考えられる。
なお、補足説明を同連合会の早稲田大学の中島啓幾研究戦略センター所長が各種グラフを用いて、「公的研究費の一部国大集中では全ての領域カバーは不可能」、「我が国は研究費配分に極端な差があり、総合的に競争力が弱い」、「裾野を広げることが費用対効果の上からも重要」であること等を説明した。