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平成21年10月 第2376号(10月14日)

伊能忠敬測量開始210年
  成功させよう!
  復元伊能大図の全国巡回展 中

学生、住民参加の催しに
伊能の足跡辿る「伊能ウォーク」を再現

 今回の伊能大図の全国巡回展を企画、実現させたのは、民間団体である伊能忠敬研究会(星埜由尚会長)と(社)日本ウオーキング協会(村山友宏会長)。伊能研究会は名前の通りの団体だが、日本ウオーキング協会は伊能忠敬と、どんな関係にあるのだろうか。実は、両団体は、伊能の歩いた足跡を平成の時代に再現した「伊能ウォーク」を成功させた。これには土地家屋調査士会も協力した。この三つの団体が伊能イベントに前のめりになった。このあたりが伊能忠敬の魅力なのかもしれない。第二回は、これら団体の活動と伊能大図との関わり、「伊能ウォーク」について紹介する。
 (文中敬称略)

民間団体が熱烈な支援

 伊能忠敬研究会は、現在、同研究会の名誉代表の渡辺一郎ら伊能や伊能地図の研究家や愛好家らが集まって結成された。渡辺は「九四年頃から伊能と伊能図の研究に没頭してきました。95年、フランスで発見された伊能中図を里帰りさせたのを機に、国土地理院のOBらと研究会を結成しました」
 日本ウオーキング協会は1964年、「歩け歩けの会」として誕生。学生を中心に、毎月第一日曜日をみんなで歩く日と定め、全国に歩け歩け運動を提唱。83年、環境庁(当時)認可の社団法人になった。
 2000年6月、協会名を「(社)日本歩け歩け協会」から「(社)日本ウオーキング協会」(JWA)に。
 現在、全国四五都道府県に支部がある。木谷道宣副会長は「一致団結し、世界の、全国のウオーカーの中心団体として『楽しみながら歩けば 風の色がみえてくる』をテーマに、明るく、元気な、楽しいウオーキングを広めるのが目的です」と話している。
 両団体が結びついたのは「伊能ウォーク」だった。1999年から朝日新聞と三者で実施した「平成の伊能忠敬“ニッポンを歩こう”二十一世紀の100万人ウォーク」。日本の実測地図作りに挑戦した伊能忠敬の足跡を辿り、二年間にわたって、歩いて日本を一周した壮大なイベントだった。
 伊能ウォークを通じて、江戸後期の地理学者で測量家である伊能忠敬の偉業に触れ、ふるさとの路を実際に歩くことによって、ふるさとの良さを再発見し、伊能地図を身近で見ることによって、人々の生活に欠かせない地図の大事さを体験するのがねらいだった。
 99年1月25日から01年1月1日の日程で、コースはこうだ。往きは、東京を出発して千葉、茨城など関東―東北―北海道―東北―関東―甲信越―北陸―近畿―和歌山―滋賀―大阪。帰りは、大阪をスタート。近畿―山陽―中四国―九州―沖縄―九州―山陰―近畿―東海―神奈川で、01年1月元旦、東京へゴールした。全国四七都道府県、通過自治体は800を数えた。
 伊能ウォークには、土地家屋調査士会も協力した。「土地家屋調査士は、私たちの先輩調査測量技術者であった伊能忠敬の日本地図作成という偉業に敬意を表し、さらに伊能ウォークに参加するすべてのウォーカーを応援する」という趣旨からだった。
 伊能ウォークは日本列島各地で盛り上がった。ゴール前々日の99年12月30日、横浜では「凱旋ウォーク」。本隊の20数名とともに、名誉隊長の俳優の加藤 剛、宇宙飛行士の毛利 衛といった伊能ウォークとゆかりの人たちが揃って挨拶した。
 木谷が振り返った。「出発からゴールまで二年がかり、全国四七都道府県約800市町村を踏破しました。距離にして約1万キロ、のべ17万人が参加した国家的なイベントになりました。第二の人生を花開かせた忠敬にあやかって年配の方々が多く参加しました。伊能大図巡回展も同様に成功させたい」
 今回の伊能大図の全国巡回展には、この伊能ウォークでの経験が生かされることになる。伊能ウォークの際には、実行委員会や運営委員会を組織したが、今回も同様な組織を作ることになりそうだ。
 日本ウオーキング協会理事の堀野正勝は「開催地の新聞社やテレビ局などが主催者になるか、あるいは中心となって実行委員会をつくって運営するのがいいと思います。伊能忠敬研究会と日本ウオーキング協会は主導的に動きますし、土地家屋調査士会や日本私立大学協会と加盟大学の協力は不可欠です」
 実行委員会の下部組織として運営委員会が設置される見通しだ。両委員会には、次のような役割が課せられる。
 @会場の選定 自治体や企業、大学の体育館が対象。床面が板張り、またはビニタイル仕上げ。広さは、60メートル×35メートル、もしくは47メートル×45メートル。この条件に加えて開催日程や運営面などを勘案する。
 A開催方法 展示用地図、展示用品は実行委員会が用意して現地までトラック(4トン車)で搬入・搬出を行う。展示指導と物品管理にあたる指導員、地図解説等の講師は派遣する。開催は、水曜日に設営、木〜日曜開催を標準とする。
 B展示 案内の作業要員、地図の会場への設営、案内、整理要員は、ボランティアとして30〜40人を募る。在学生や地域住民の方々に参加いただき、共同で運営するのが望ましい。
 木谷は「日本私立大学協会の加盟校とは、体育館の提供だけでなく、開催地で組織される実行委員会などに加わって、一緒に仕事をしたい」と強調した。
 堀野も、「参加する加盟大学には、伊能イベントを共有してもらいたい。そして、ぜひボランティアとして学生の参加をお願いしたい。このイベントに参加することで伊能の偉業を思い、それを地域住民に伝える意義を感じ取ってほしい。大きな地図を体育館に配置したり、会場での案内、整理などを若い力でやっていただけたら大助かりです」と話している。

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