平成21年10月 第2376号(10月14日)
■私大協会
大学経理部課長相当者研修会を開催
3コースに400名を超える参加者
経理・財務に関わる課題別研修など
日本私立大学協会(大沼 淳会長)は、去る10月7日から9日まで、神戸市の神戸ポートピアホテルにおいて、平成21年度(第46回)大学経理部課長相当者研修会を開催した。同研修会は、同協会の大学経理財務研究委員会(担当理事=原田嘉中千葉商科大学理事長、委員長=佐川秀夫文化女子大学理事・経理本部長)が準備を進めてきたもの。教学と経営は、いわば大学運営の両輪である。その意味から、財政基盤の安定化なくしては、質の高い教育も研究も行えない。私学を取り巻く環境が相変わらず厳しさを増す中、各大学で重要課題に取組む参加者は、業務の経験年数、組織上の都合・目的等により、三コースから選択して研修に臨んだ。同協会加盟384大学から400名を超える参加があった。
【第一日目:基本研修】
基本研修は、初任の部課長等、あるいは一定レベルの経理・財務知識を必要とする担当者等を対象に、解説を中心としたプログラムが組まれている。解説は各班の担当委員が行った。
はじめに佐川委員長が、三日間の研修日程の概要説明を行った。
その後、全体での研修として、同委員会の委員である石田順久京都外国語大学財務課長が、「学校法人・関係法令等に関する解説」と題して学校法人に関する諸法令から、経理財務の関係法令について解説を行った。
続いて、班別に会場を移し、各テーマでの班別研修を行った。基本研修の班別研修はスクール形式による解説と演習で、会計処理(予算の編成・管理・決算業務)及び経常費補助金一般補助の仕組み解説・補助金額算出演習等に取組んだ。
【第二日目:基本研修・総合研修】
午前中は、前日に引き続き、基本研修の班別研修が行われた。午後から、全コースの参加者が一堂に会して、総合研修が行われた。
昨年を上回る多数の参加者が埋める会場で、原田担当理事が壇上に立ち、政権交代や経済状況について触れた上で、「めまぐるしく変化する私学を取り巻く環境下で、迫り来る危機を乗り越えるためにも、改革と教職員の資質向上を迅速に図らなくてはならない。ぜひ、研修を有意義なものに」と挨拶した。
総合研修のはじめは、同協会の小出秀文事務局長が「私立大学を取り巻く諸情勢と今日的課題」と題しての報告・解説を行った。
続いて、同協会附置私学高等教育研究所「私大マネジメント改革」プロジェクト研究報告「私立大学の財務運営に関する実態調査結果」について、同研究所の研究員である東京大学大学院専任講師の両角亜希子氏、日本福祉大学常任理事の篠田道夫氏の両講師が報告と解説を行った。
まず、「私立大学の財務運営―実態調査の報告」と題して、両角氏がアンケート調査から分析されるデータを開示しながら報告を行った。調査から明らかになったこととして、大学の規模や財政状況によって取り得る策は異なるとしながらも、中長期計画の策定率の急速な増加がみられることから、計画に基づく財務運営が重要だと述べた。
次に篠田氏が「経営改革の課題と財務運営」と題して解説を行った。中長期計画の実質化について、目標を明確化・具体化した上での予算反映、教職員へ浸透させ業務に落とし込むことが重要とし、健全な財務を根底にした戦略経営が大学の未来を切り拓くことになると述べた。
総合研修最後の講演は、「未来思考の大学教育と私学経営の未来戦略」と題し、谷岡学園理事長・大阪商業大学学長の谷岡一郎氏が、設置者の立場から自身が行った改革等のいきさつを述べた。職員に対して業務免除の時間を設け、専門以外の学びたいものを見つけ、関心事の幅を広げることを薦めていること(職員聴講研修)を紹介した。設置者は、建学の理念を実践する責務があるとして、同学園の「世に役立つ人物の養成」という建学の理念を挙げ、リーダーシップのとれる人物を養成していることを述べた。リーダーの役割は「決断すること」が大事なこととして、リーダーシップが発揮されている組織のあるべき姿を示した。
総合研修が終了した後の情報交換会では、課題を共有する参加者間の盛んな名刺交換が行われ、打ちとけた和気藹々とした交流の機会となった。
【第三日目:設定課題別研修】
設定課題別研修は、班別に分かれて、各テーマで外部講師を招き、解説・事例発表等を行った上、参加者相互のディスカッション等により進行した。
学校法人会計基準及び経常費補助金の適正処理の徹底と会計検査院検査等への対応、財政安定化・財務充実のための収入増加方策・支出の効率化策、学校法人に関する税制と税務処理、財務分析と財務情報の積極的な提供、内部監査基準と監査手法等、各テーマを掘り下げて討議するなど、日常業務・実務の理解をより深める研修となった。
大型台風の影響から開催も不安視されたが、無事三日間の研修を終了した。