Home日本私立大学協会私学高等教育研究所教育学術新聞加盟大学専用サイト
教育学術オンライン

平成21年10月 第2375号(10月7日)

私大協会
  事務局長相当者研修会を開催
  加盟222大学から327名が参加
  大学の戦略的人事管理をテーマに

 日本私立大学協会(大沼 淳会長)は、去る9月30日から10月2日まで、クラウンプラザ神戸で、平成21年度(通算第61回)事務局長相当者研修会を開催した。同研修会は、大学運営の要となる事務局長の役割の重要性に鑑み、同協会の大学事務研究委員会(担当理事=香川達雄女子栄養大学理事長、委員長=丸山徹薫武蔵野音楽大学理事・総務部長)が準備を進めてきたもの。222大学から327名が参加した。

 このたびのテーマは、「大学における組織マネジメント〜戦略的人事管理を中心に」。大学環境が劇的に変化する中、社会やステークホルダーのニーズを把握し、教職員等が同じ目標に向かって改革を推進していくための「組織力」を向上させなければ、具体的な成果に結実することが難しい時代となっている。このような状況を踏まえ、組織、戦略、人材の三要素の必要性を共有し、各大学の組織活性化につなげるもの。
 香川担当理事、丸山委員長が挨拶を述べ、三日間の研修の開会を宣言した後、小出秀文同協会事務局長より、「私立大学を取り巻く諸情勢と今日的課題」の解説があった。
 続いて、黒田壽二金沢工業大学学園長・総長が、「変革の時こそチャンス―大学教育の構造転換と質の向上を」と題して講演を行った。黒田氏は、中央教育審議会大学分科会の委員や質保証システム部会部会長を務めており、昨年12月末の答申「学士課程教育の構築に向けて」のまとめにも携わっている。「学士課程」答申について黒田氏は、三つのポリシー、学士力、学習成果の把握と厳格な成績評価、単位の実質化、質保証体制の整備などを図説し、「様々な教育改革を実効あるものとするためには、組織化された質保証のPDCAサイクルを作ることが何より重要だ」と力を込めた。
 最後に、全教職員が同じ方向に向かうようにベクトルを合わせるのが扇の要たる事務局長の役目」と締めくくった。
 翌日は、事例発表として、大東文化大学の梅沢祐行人事部人事課主査が「人と組織を活かす人事制度の構築を目指して」と題して、同大学の人事制度改革について詳細に解説した。
 同大学では、2003年より、外部コンサルティング会社が主導した新人事制度であるMIP制度をスタートさせた。しかし、内情に即さない面などが多く、現場から不満が続出。運用開始から三年で制度凍結の事態となった。この反省から内部主導によりMIP人事制度の見直しを行い、説明会やアンケートを徹底的に行なった。その後、チームワークやプロセスを重要視し、教育サービスの追求などを定義した「大東職員力」を取り入れた「実」のある制度へと発展させた。梅沢氏は、「制度の存在を意識し過ぎず、制度運用を通じて自然に働く意欲が喚起される仕組みが必要だ」などと述べた。
 次に、兵庫大学の副島義憲学長室長が職員人事評価制度と人材育成―小規模大学の試みとその事例」と題して、事例発表を行った。同大学では、兵庫大学の目標管理人事考課制度「HMBO」を導入している。HMBOは能力考課と業績考課との和であり、ウェイト配分は職位で異なる。考課者の考課能力や被考課者の成長度測定方法の研究・開発などに課題はあるが、「考課者研修」も実施して対応。最後に副島氏は、考課者研修の詳細や教員評価制度についても触れた。
 次に、私学における人事、給与等の諸問題」と題し、俵 正市俵法律事務所所長が講演。期限付き雇用をめぐる問題、雇止め、給与の減額などについて判例を交えながら紹介した。
 研究発表として、協会附置私学高等教育研究所「事務局職員の力量形成に関する調査」の速報について、増田貴治愛知東邦大学理事・法人事務局長と坂本孝徳広島工業大学常務理事・副総長が発表した。
 同調査は、事務局の組織や運営の在り方、職員の役割と力量形成の課題を把握し、理事会が経営政策を推進する上での望ましい支援組織としての事務局体制の構築を図る優れた改革事例を得ることを目的として行ったもの。主に人事異動と採用、研修制度、教職協働、組織運営、方針・政策、人事考課制度と人材育成について調査行っている。
 両氏は調査の概要について解説するとともにこの調査の結果を受けて、坂本氏は「建学の精神に基づく帰属意識の醸成、そして経営方針・目標に基づいた人材育成像の具現化のスパイラルにより職員の力量形成を行っていくべき」と締めくくった。
 最終日には、文部科学省の村田善則高等教育局私学部私学行政課長が、高等教育をめぐる諸課題について講演した。現在、中央教育審議会大学分科会で審議を行っている「中長期的な大学教育の在り方に関する第一次報告―大学教育の構造転換に向けて」をはじめ、様々な政策課題を詳説。
 閉会の辞では、名城大学の池原喜忠同委員会副委員長が締めくくった。
 なお、二日目の午後、三日目の午前にかけて各班に分かれての討議があり、二日目の夕刻より情報交換会が開催され、各大学事務局長たちが大学の未来について語り合った。

Page Top