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平成21年9月 第2373号(9月9日)

図書館員は自己評価を
  私大図書館協会が研究大会

 私立大学図書館協会(会長校:関西大学)は、去る8月28日、京都市の佛教大学において、第70回研究大会「情報ポータルとしてのハイブリッド大学図書館」を開催した。全国の私立大学図書館から300名を超える関係者が集い、熱心に報告等に耳を傾けていた。

 同協会は、大学図書館の改善発展を図ることを目的に、研究会・講演会等の開催、機関紙の刊行等を行っており、私立大学の約90%が加盟している。同協会の前身は、昭和5年に創立された東京私立大学図書館協議会。同13年に関西地区の大学が加盟し、同18年に現在の名称になった。
 70回を迎えるこのたびの研究大会は、「情報ポータルとしてのハイブリッド大学図書館」をテーマに2008年度研究助成発表や講演等が行われた。
 私立大学の経営状況が厳しさを増す中で、図書館の予算確保には、利用者ニーズに応え、その存在意義をアピールしなければならない。研究助成発表では、まず、米国で開発された、図書館サービス品質測定のためのウェブによる利用者調査「LibQUAL+ム(ライブカル)」の日本における実施とその評価について、慶應義塾大学の酒井由紀子氏、市古みどり氏が発表。「サービスの品質を測定することで評価を可能にし、データとして明示することができた」などと手ごたえを語った。
 次に、オンライン蔵書目録および図書館ホームページのユーザビリティ評価について、明治大学の矢野恵子氏、土田大輔氏が発表した。ユーザビリティとは「使いやすさ」であり、同大学では15名の被験者に図書館利用案内のウェブ利用やオンライン検索機能のテストを行い、ユーザビリティを評価した。その結果から問題点と改善点を明らかにしたことを解説した。
 図書館の存在感を高めるには、図書館員自らの継続的評価が大事だと両発表者は口を揃えて主張していたことが印象的であった。
 続いて、昨年12月の韓国図書館への海外集合研修の報告が、同研修参加者からあった。研修テーマは「韓国図書館事情を知る」。昨今の進境著しい韓国図書館の実情を知るべく、延世大学図書館や国立ソウル大学図書館などを訪問。同国では国家主導の高度な情報化政策が浸透しており、それが大学や公共図書館でも当たり前のように運営されていることなどについて述べた。
 休憩を挟み、大韓民国の圓光大学図書館司書のイ・ヒョンシル博士が「知識基盤社会における未来型図書館の概念モデル」、千代田区立千代田図書館の満尾哲広氏が「千代田WEB図書館―魅力ある場所にしていくためには」について講演。
 ヒョンシル博士は、「図書館技術はIT技術とともに進化してきた。現在、図書館技術を牽引する二要因はライブラリとセマンティックライブラリ」とした上で、この詳細な解説を行い、今後、全ての知識を連結して知識サービスとして提供することを予見。最後に、「知識サービスは図書館が追求しなければならない課題」等と主張した。
 千代田図書館は日本初の「図書館コンシェルジュ」サービスを行ったことで有名になった。満尾氏は、同図書館の緻密な戦略に基づいた事業展開を解説。特に、区内の出版社や大学、ミュージアム等との連携が特徴であると力説した。また、都心部で物理的に本を置くスペースがないことから、ウェブ図書館を充実させていることを紹介した。
 研究大会に先立ち、同協会は総会・記念講演を実施した。

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