平成21年8月 第2370号(8月19日)
■新刊紹介
文理融合めざせ「理系バカと文系バカ」
竹内 薫 著
新書の読み方が週刊誌的になってきた。新書を週刊誌代わりに週一冊読んでいる人も増えているとか。
売れる本は、心を揺さぶる何かがあるか、何か役立つことがあるか、どっちかだ。この本は発行二ヶ月で五刷だから売れている。理由は後者のようだ。
序章で、〈文系人間が支配する時代は終った〉と、法学部出身が支配する財務省では数学的センスが、理系人間にはコミュニケーション能力が、それぞれ求められる、と指摘する。
この序章で〈理系だ、文系だと区別するのは古い。知識は理系、文系と偏らせず、バランスよく「文理融合」をめざすべきだ〉と結論を明示する。
この書き方は理系か、文系か? ちなみに、著者は1960年生れ、東大理学部物理学科卒の理学博士。サイエンスライターとして著作も多い。
第一章の「こんなタイプが『理系バカ』『文系バカ』」は、「なるほど、わかるわかる」とうなずきつつ、笑いながら読んだ。
「役に立った(話)」は第二章の「理系と文系 どっちがトク?」。文系と理系出身者の生涯賃金の差がウン千万円もある、日本の首相は文系が圧倒的だが、中国のトップは理系が多い―などの見方は面白い。
著者と共振したのは「数字の裏側を読む」という理系センスに触れたくだり。
〈不倫騒動の女性キャスターが降板した際、1000件の電話のうち850件が「降板させろ」。これを「世の中の8割が降板させろ」と分析するのは大きな間違い。「別にどうでもいい」と思っている物言わぬ多数派は電話などしない〉
真っ当なマスコミ批判だ。「文理融合」の主張は同感するが、どうも日本人は理系センスに欠ける。これが「文系バカ」の結論だった。
竹内薫 著
PHP新書
03―3239―6298
定価720円(税別)