平成21年8月 第2370号(8月19日)
■私学助成
1%削減撤回すべき
有識者会合 基礎科学力強化の提言
文部科学大臣直轄の有識者会合「基礎科学力強化委員会」(座長:野依良治(独)理化学研究所理事長)はこのほど、「基礎科学力強化に向けた提言」をまとめた。
基礎科学力強化に向けた提言(要点)は次の通り。
〈基礎科学力強化のための基本的考え方〉
□国是としての科学技術創造立国の意義を再認識し、基礎科学力の抜本的強化が必要。
政治のリーダシップの下、国家の最重要戦略として、科学技術の振興に「社会総がかり」で取り組むべき。
□基礎科学の意義は「人類の英知の創出・蓄積」と「イノベーションの創出」。
□世界水準を凌ぐ基礎科学力なくしては我が国の未来はない。しかし現下の状況は現実に逃避し、危機意識が希薄。
□リーダーたるべき創造的人材の育成が喫緊かつ本質的な課題。特に、大学人と社会全体の意識改革によって、大学院教育の抜本的改革を進め、新たな「研究人材養成システム」を構築することが極めて重要。
□初中教育からの未来の人材育成、世界水準の研究拠点の整備、研究者優先の研究システムの改善、さらには創造的な研究風土の醸成までを包括した、総合的かつ体系的な基礎科学力強化策を展開し、実行すべき。
〈人材の育成〉
□研究人材養成システム
・個性的で豊かな創造性を有し、挑戦し、「やりぬく力」のある人材の育成が必要。「出る杭を最大限に伸ばし育てる」ことが基本。
・国際的に頭脳獲得競争による人材流動性が高まる中、我が国が研究者にとって国際的に魅力ある国でなければならない。
□大学院教育等の抜本的改革
・志ある最も優れた若者を、最高の知の府たる大学院で、世界水準で最高の研究人材・知識人に育成しなければならない。
・公的な財政支援を抜本的に拡充し、経済的な支援も含め「学生の立場に立った」大学院改革を実行すべき。
□未来の創造的人材育成
・小学校から大学までの各段階における理数教育の充実を図る。
・イマジネーションや構想力を持つ創造性豊かな人材を育成する仕組みを構築すべき。
〈公的資金の抜本的拡充〉
・「経済危機だからこそ未来に投資すべき」との考え方に立ち、高等教育及び基礎科学を含めた科学技術への政府投資の抜本的拡充が必要。
・資金配分について、研究者を優先した柔軟性のある制度へ改善が必要。
・国立大学等の運営費交付金、私学助成等の1%削減の方針を撤回すべき。
〈研究推進システム〉
・我が国は研究者に対する支援機能が著しく劣っており、研究支援機能の抜本的強化が必要。
・第一線の研究者が結集する世界トップレベルの研究拠点の形成と、当該拠点のシステム改革の持続・発展が必要。