平成21年8月 第2370号(8月19日)
■授業改善から大学教育開発へ
北里大で羽田東北大教授が講演
北里大学高等教育開発センター(鈴木牧彦センター長)は、去る7月31日、同大において、第5回の講演会を開催。「大学教員の能力開発―教育と研究と学問的誠実性―」と題して、東北大学高等教育開発推進センターの羽田貴史高等教育開発部長が、研究・教育・管理運営や理論も含めた専門職の発達を目指すFDの必要性等について講演を行った(写真)。
アメリカのFD概念は、カリキュラムなど組織的な教育改革を総称する特殊な用語であり、日本のように、教員個人ないし集団の教育改善とする理解とは異なると指摘し、授業改善として広がっているFD活動を、対象領域に大学や学生をも含む大学教育開発(Educational Development)として発展させていく必要があると述べた。
また、広島大学の調査(99年)と東北大学の調査(08年)結果から、教員の教育能力(最先端の研究能力、専門分野の幅広い知識、学生の意欲を引き出す指導力など)取得次期は、平均37.3歳、教員経験年数平均8年目であること等を紹介した。
さらに、教員のFDニーズや教育能力の取得要因について、年代・経験年数等によって違いがあることをグラフ等で紹介し、@新任教員の研究・教育能力を育てることは、大学の長期的ポテンシャルを左右する、A初期キャリアにおいて重要なことは、研究のスタンダードを内面化する研究経験を積むことである、この時期に形成されなければ一生形成されない場合もあること等、大学教員の能力開発について述べた。
また、教育と研究だけが大学教員の能力ではなく、学問の自由と自治の担い手としての能力と、不正行為の防止から学問的誠実性の追求などのモラルも専門職としての大学教員の要件であると述べた。