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教育学術オンライン

平成21年8月 第2369号(8月5日)

放送大学(旧NIME)
  eラーニング入門開く
  飯吉 透氏(MIT)の講演も

 放送大学ITC活用・遠隔教育センターは、8月3日、千葉・幕張の放送学園において、セミナー「eラーニングとLMS入門」を開催、全国からeラーニングに関わる大学関係者等が参加した。また、セミナーに先立ち、「『生き残り』から『新たな共存共栄』を目指して」と題した講演会では、マサチューセッツ工科大学の飯吉 透氏が教育開国の持論を主張した。

 メディア教育開発センターが三月三十一日に廃止され、同センターが進めてきた大学等のeラーニング、ICT活用教育推進のための研究や事業は、放送大学の「ICT活用・遠隔教育センター」として継続することになった。このたびのセミナーはその一環。eラーニングそのもの、そして、それを利用する教職員はLMS(学習管理システム)の運用知識などについて、同センターの仲林 清教授が解説した。
 仲林教授は、eラーニングの最大の特徴を、「学習履歴の活用等で、個人個人の理解状況に応じた支援ができること」と述べる一方で、欠点としてコンテンツ開発や初期導入・運用コストなどを挙げた。LMSは、@コース・データベース(DB):カリキュラム、教材掲示板等、A履歴成績DB:学習進捗、試験結果、レポート等、B利用者DB:学習者、講師、教材作成者等、の三つのDBを結びつけながら管理するもの。いつだれが何をどの程度閲覧したかなどの記録が詳細に残るため、学習の進捗が分かる。しかし、LMSには様々な種類があり、LMSで何をしたいのか具体的にすることが重要である。
 仲林教授は、その後、実際の登録画面を見せながら解説。セキュリティでは個人情報保護等に触れ、最後に、SCORM(eラーニング技術の標準化の一つ)についてその概念やポイントを詳細に述べた。
 一方、セミナーに先立ち、飯吉氏の講演があった。日本の教育は、特に英語スキルの不足により「鎖国状態」にある。優れたFD事例を共有する世界的な実践コミュニティの言語は英語。言葉の壁により日本の教員はこうしたコミュニティに入って来れない、と指摘。今後生き残りをかけて、大学は「教育開国」をしなければならない、との持論を展開し、そのためには、教育支援の専門スタッフの養成やリーダーシップ等が求められる。最後に、「日本の大学の共存共栄のためには、まずは自らが率先して「助け」となる相互扶助の精神と文化の育成が大事だ」と締めくくった。

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