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平成21年7月 第2365号(7月1日)

新刊紹介
  表現力は高まったのか?
  「女子大生がヤバイ」
  小沢 章友 著

 著者は、東京郊外の女子大の講師として文章創作の講座を受け持っている。学生の作品を紹介しながら最近の女子大生の実像と虚像を描く。
 心のかたち、家族、友人、彼氏、性的妄想、携帯メールという女子大生をめぐる六つの「関心」に分けて感想を書いている。
 15年前の女子大生と比較すると、〈携帯メールのせいで、表現力は高まった〉、〈道徳的なタブーがなくなり、暴力やセックスに踏み込んだ作品が増えた〉とする。
 このコーナーでは、書かれた内容をいくつか紹介するのだが、今回は、そうした気持ちになれない。なぜだろうか。
 タイトルもそうだが、〈女子大生の本音は、ヤバイほど面白い〉と帯にもあるように、「ヤバイ」の叩き売りが鼻についた。それが要因かもしれない。
 「ヤバイ」は、よい日本語とはいえない。文章創作の講師が使うべきではない。読み終わったあと澱のように残る、何かが足りない。性事は語られていたが、政治については皆無だった。
 折りしも朝日新聞夕刊(6・19)の企画「人脈記」が、高野悦子を取り上げていた。立命館大三年だった高野は69年、学生運動の「挫折」から自殺。
 高野の書いた日記をまとめた「二十歳の原点」は三部作で350万部売れた。女子大生の書いた「反逆の詩」は当時の青春のバイブルになった。
 これと比較するつもりはない。しかし、いまの女子大生に限らず大学生は政治的無関心が多いから仕方がない。こう迷いなく納得してしまうのは団塊世代には寂しいものがある。

 「女子大生がヤバイ!」
 小沢章友著
 新潮新書
 03―3266―5111
 定価680円(税別)
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