平成21年7月 第2365号(7月1日)
■国研がFDセミナー
“FDマップ” “基準枠組”を披露
国立教育政策研究所は、去る6月23日、文部科学省講堂において、FD公開セミナー「FD実質化のための提案〜「FDマップ」、「基準枠組」の活用による教育改善」を開催した。
これまで同研究所では、「FDプログラムの構築支援とファカルティ・ディベロッパー(FDer)の能力開発に関する研究」という研究テーマのもと、FDプログラム構築の基盤となるツールの作成や、FD担当者のあり方について開発を進めてきた。
このたびのセミナーは、その成果である開発ツールの紹介を行うとともに、PODのDr. Mathew L. Ouellett元会長を迎えての講演があった。
PODはProfessional and Organizational Development Network in Higher Educationの略で、米国のFD専門家(FDer)団体である。Ouellett元会長は、講演の中で「教員の教育支援活動は国際的に急速に伸びている。ただし、組織やFD専門家によって課題は様々であり、組織や教員のニーズに基づき、それぞれの文脈において最も有用なプログラムを開発することが重要だ」等と述べた。
続いて、二つの研究の成果が報告された。一つ目は「FDマップ」。FDマップは、「FDを実施する対象者の段階(導入、基本、応用、支援)」と「FDを実施する対象(個々の教員、教務委員、管理者)」をマトリクスにして表にしたもの。各大学は、FD活動をマップに書き込むことで、自大学のFDの特徴や強みや弱みを知ることができる。また、様々な大学の事例を書き込むことで、日本の大学のFD実施傾向を知ることができる。同マップは利用法などとともにまとめられ「大学・短大でFDに携わる人のためのFDマップと利用ガイドライン」として冊子になっている。
二つ目の研究成果は、「新任教員FDのための基準枠組」開発プロジェクト。基準枠組とは、各大学の新任教員FDの実践事例を集約、内容の近いものをグループ化・カタログ化し、新任教員に求められる「教育力」の骨組み・構造を可視化したものである。基準枠組は、@大学コミュニティについての理解、A授業のデザイン、B教育の実践、C成績の評価、フィードバック、D教育活動の自己改善・キャリア開発、教育開発から構成される。この成果をもって大学教育学会でグループワークを行なったところ、評判もよく支援ツールとしての可能性も見えてきたという。
休憩を挟み、パネル・ディスカッション「開発研究とFD実質化支援」では、このたびの研究プロジェクトの研究代表者を務める、同研究所の川島啓二総括研究官の司会のもと、各研究に携わった佐藤浩章愛媛大学准教授、加藤かおり新潟大学准教授、また、長年FDを研究してきた羽田貴史東北大学教授、トップの立場からの玉真之介岩手大学副学長がパネラーとなり、コメンテーターに読売新聞の松本美奈氏を招いてディスカッションが行なわれた。
羽田氏は「FDマップはFD担当者の視点が強すぎて、大学教員の発達ステージに依拠してないのではないか」等の疑問を投げかけ更なる研究を促す一方で、松本氏は「まずは実行してみることが大事だ」と激励を送った。
その後、会場を変えての懇親会が開かれ、和やかなうちに終了した。