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平成21年6月 第2364号(6月24日)

産学官連携推進会議
  技術だけでは勝てない! 新しい産学官連携の形も模索

 去る6月20日、21日、京都市の国立京都国際会館において、第8回産学官連携推進会議が開催された。このたびの大きなテーマは、オープン・イノベーション、そして、低炭素社会。特別講演、特別報告に続く6つの分科会では、新しい連携の形も模索された。また、産学官連携功労者表彰が行われるとともに、大学等の技術展示は出展数が500に迫り盛況となった。

 これまでの産学官連携は、日本の経済活性化のためという色合いが濃かったが、昨今は地球温暖化対策への対応から「持続可能な社会の構築には産学官の連携が不可欠」というニュアンスが強くなってきた。
 1972年、当時マサチューセッツ工科大学教授だったデニス・メドウズ教授は、ローマクラブからの依頼により「成長の限界」をまとめた。このたびの会議では、メドウズ氏が特別講演を行い、「日本にとって最も重要な”限界”は、気候変動、石油資源の枯渇、食料不足だ。これまで予防的な政策が取られてきたが、これからは危機への”適応”という考えも大事になる。技術的なイノベーションもこの方向で考えるべきであり、今後の市場も危機への適応型製品が主流となるだろう。しかしながら、低炭素社会の実現には、技術的な問題より、社会的、政治的な妨げが大きい」等と述べた。
 また、佃 和夫日本経済団体連合会副会長も特別講演の中で、「わが国の環境・エネルギー技術は世界に誇れるもので、これを強みとして低炭素社会実現に向けて、国際競争力の強化と内需拡大を実現し、地球規模の課題解決にリーダーシップを発揮していくことが可能だ」と主張した。
 この具体的な事例として、富田孝司東京大学先端科学技術研究センター客員教授が、産学官連携による太陽光発電産業の育成について報告。太陽電池産業の歴史、製造技術や課題に触れ、「日本の課題は資金や技術など経営資源の投入フローと効率改善。これには産学官の緊密なコンセンサスが必要だ」と主張した。
 一方、このたびの会議は「オープン・イノベーション」が主テーマの一つである。オープン・イノベーションについて、野田聖子内閣府特命担当大臣は、「これまでの大学等の技術シーズを起点とした産学官連携に加え、出口戦略を起点とし産学官それぞれの最先端の技術や知識を組み合わせることにより新たな価値を生み出すこと」と説明した。
 堀場雅夫堀場製作所最高顧問は、本年4月に設立した全国イノベーション推進機関ネットワークを紹介。地域活性化を目的に、地域発イノベーションの推進を担う支援機関が全国ネットワークを構築しているとした。また、広瀬研吉科学技術振興機構理事は、科学技術による地域活性の成功事例や政府の施策を紹介した。
 ただし、単に技術があれば成功するわけではない。特別報告を行なった妹尾堅一郎東京大学特任教授は「何故、日本は技術で勝てるのに、事業で負けるのか」と疑問を投げかけ、「昔はイノベーションは「発明」のみを差していたが、現在では、新規モデルの創出・普及・定着も含む。技術も大事だが、知財マネジメント、ビジネスモデルも同時に考えていく必要がある」と注意を促した。
 6つの分科会では、@低炭素社会の実現、A知的財産マネジメント、Bナノテクノロジー、C高度理工系人材の育成、D地域活性化、E地域の産学官連携を支える基盤整備をテーマに話し合われた。続く全体セッションでは、産学官連携を担う人材育成の重要性が議論されるとともに、「新しい産学官連携モデルを模索するべきだ」等として終了した。
 一方、展示ブースも盛況で、展示場入り口には、「世界最軽量の汎用小型風力発電システムの開発」で、産学官連携功労者表彰の経済産業大臣賞を受賞した伊藤瞭介ゼファー株式会社代表取締役社長らの風力発電機や、同じく同賞を受賞した「4次元X線CTスキャン」を開発した片田和広藤田保健衛生大学教授らのCTの小型モデルなどが大きく展示された。

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