平成21年6月 第2362号(6月10日)
■私大団体連 第63回総会
「質の向上」の取組への最終報告(案)
私大3団体による初のアンケート分析
日本私立大学団体連合会(会長=白井克彦早稲田大学総長)は、去る6月4日、東京・市ヶ谷のアルカディア市ヶ谷において第63回総会を開催し、平成20年度事業報告・決算報告を承認するとともに、昨年6月に設置した「質保証の共同作業部会」が検討してきた「私立大学の『質の向上』に対する取組」(仮称)の「最終報告」(案)の概要を発表し、今後、予算要望の要請活動等に活用していくことを了承した。協議事項では、平成22年度私立大学関係政府予算・税制改正に関する要望について協議した。また、文部科学省高等教育局の河村潤子私学部長が招かれ、「私学を取り巻く諸問題」について講演した。なお、議事の終了後には、A永 保高等教育局長をはじめ幹部らが多数出席して、懇親会が催された。
開会に当たり白井会長は「一年間かけて、私立大学の三団体が初めての共同作業として、「質保証」のアンケートを分析し、文科大臣の中教審への諮問「中長期的な大学教育の在り方について」の”質保証システムの構築”に直接的に係わる私学の状況を取りまとめた。今後、各方面で利活用していきたい」との考えを述べた。
議事に入り、小出秀文事務局長より、平成二十年度の事業報告・決算報告が説明され、決算報告では福井直敬会計監事(武蔵野音楽大学理事長・学長)が監査報告し、満場一致で承認された。
次に、質保証の共同作業部会の「私立大学の『質の向上』に対する取組」の最終報告案を小出事務局長が、経過報告を含めて概要を説明した。
同報告案は、今後、若干の修正等を行うなどして、同部会の部会長でもある白井会長の監修のもとで最終報告となる。
様々な問題に役立つものであり、今後は、何らかの体制・組織の下で、活用へ向けての具体的な検討に入ることになった。
白井会長は、「高等教育改革委員会等での議論に委ねたい」との意向を示した。
「質の向上」に欠かせないきめ細かな国の支援
同報告案の構成は、序章「大学の質向上に対する取組」、第T章「私立大学における教育の現状と今後の課題―学士課程教育の『質の向上』に関わるアンケート結果の概要」、第U章「私立大学における内部質保証システム(PDCAサイクル)」、第V章「私立大学の学士力―二十一世紀型教養教育への貢献と責任」、第ツ章「大学間の学生移動の促進―学士課程教育の質保証・向上の実質化」、第W章「国際交流と私立大学教育の質の向上―留学生三〇万人計画を活かして」、第X章「私学振興における国家の質の保証」、第Y章「私立大学の質の向上を目指して」となっており、同部会委員がそれぞれ担当して取りまとめた。
同報告案の序章では次のように述べている。
「質の向上」プログラムとして私立大学が取り組む内容は、@積極的な社会参加を可能にする能力、経験、習慣を与える、A日本、世界及び地域文化、歴史の理解を深める、B組織、コミュニティを育てるのに必要な広いヒューマンネットワークを持たせる、C望ましい社会の実現に向けて、大学と社会が連携し、学生と共に活動する、D高度な学問や研究への刺激を与えて、反応する学生に発展の機会を与える、ことなどでありその実現のために、産業界等との協力が必要である。各大学は適切なPDCAサイクルを実行するのに当たり、大学外の協力者を加えるなど、経営上の変革と活性化が必要となる。そのためにも国の公的支援は欠かすことができないが、それは単に個々の大学だけを支援するのではなく、私立大学の集団と社会の様々な組織の多様な相互的活動を促すものでなければならない。
このレポートは、私立大学の立場からの提言であるが、国公私立大学が共に有機的に連携を図ることで、一層その効果を高めることが可能になる、などと提言している。(第T章〜第Z章の概要は別掲)
予算・税制改正要望案の大枠を決める
次に、平成22年度私立大学関係政府予算に関する要望(案)の大枠について、小出事務局長が提案説明した。
(1)私立大学の教育研究条件の維持・向上並びに健全な発達のための私学助成の充実として、@高等教育に対する公財政支出の国際水準への拡大、A経常的経費に対する補助の拡充―公財政支出の国私間格差の是正、B学術の振興及び特定分野・課程または対象にかかる教育の振興(質保証の取組みへの支援の拡充、地域に根ざした教育研究活動の取組みへの重点的支援、環境問題の取組への支援の拡充など)、C私立大学の健全な発達にかかる取組みへの支援の拡充など)、(2)私立大学学生の修学上の経済的負担軽減として、@私費負担軽減のための公財政支出の拡大と国私間格差の是正、A奨学金事業の拡大など、(3)国際戦略としての国際教育・連携と留学生政策の推進として、@「留学生30万人計画」実現のための私費外国人留学生に対する支援の拡充、A「留学生30万人計画」に向けた総合的な留学生支援の拡充など、(4)科学技術創造立国推進に向けた支援の拡充として、@「萌芽研究」の見直し及び拡充並びに「新学術領域研究」の拡充、A「若手研究」の拡充及び「基盤研究」の充実などを挙げた。
今後、これらの要望事項に関わる具体的な施策要望づくりに当たり、各種審議会等の審議動向も注視しつつ、優先要望事項等を文科省等とも協議して練り上げていく。
また、税制改正要望については、学校法人に対する寄附促進のための措置の拡大、教育費にかかる経済的負担軽減のための措置の創設、消費税に対する優遇措置などを最重点要望としている。
協議のうえ、これらの提案は了承された。
なお、予算・税制改正要望の実現のため、国会議員等にも理解を求めるべく、政権公約作成等へ向けてのより効果的な対応策も練ることになった。
引き続いて、文科省の河村私学部長が平成21年度補正予算をはじめ、私立大学を取り巻く諸問題について講演した。
協議終了後には、会場を移しての懇親会が開かれ、文科省からA永高等教育局長をはじめ、多数の幹部も出席して、私学の発展、高等教育の発展を期して懇親を深めた。