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平成21年6月 第2361号(6月3日)

分野別の研究支援を
  研究の日英比較・研究環境を分析

 科学技術政策研究所では、第三期科学技術基本計画のフォローアップの一環として12の調査研究を実施しているが、このたび、そのうちの一つである「日英の大学の研究活動の定量的比較分析」と「研究環境(特に、研究時間、研究支援)の分析」を行なった。概要は次の通り。

 日英の大学の研究活動の定量的比較分析
 日本には国公私立大学(短大含む)が1096あり、英国には170ある。「自然科学系の論文生産に一定程度参加している大学」を抽出すると、日本は全大学の二割弱(179大学)、英国は六割程度(95大学)。論文シェアはこれらの大学が日本の97%、英国の99%を占めた。
 論文シェアの大きい方から第1から第4までグループ化したところ、表のようになった。英国での第二が多いことが注目される。
 日本は第4の中に研究者一人当たり論文数の多い大学が存在するが、英国にはこのような大学はほとんど存在しない。
 日英の教員・研究者数のシェアを比較すると、第1は同等、第2は英国は日本の二倍であり、第3、4は日本の方が大きかった。
 グループ別の論文シェア
 日本では、論文生産の量的に、第1、2がほぼ同等のシェアを持ち、「被引用数の高い論文」という質的な面では、第1が大きなシェアを有する。英国では、論文生産の量的な面で第2が50%以上、質的にも同様に大きなシェアを有する。
 過去10年程度の変化では、英国はグループ間を移動(特に第3から第2へ)する大学が多い。
 研究者一人当たりの論文数を比較すると、日本は英国の同等以上だが、トップ10%に限ると、研究者一人当たりの生産性は英国の方が高くなる。さらに、英国の第2は、トップ10%論文の半分以上を産み出しており、全体の中で重要な位置を占めている。
 研究環境(特に、研究時間、研究支援)の分析
 05分野(応用物理、化学、基礎生物学、機械工学、数学・理論物理)において、国大法人化前後(平成15年度と19年度)を比較した。15年度に比べ19年度では、総活動時間に占める「研究活動」が、45%から34%まで減少。一方全分野で組織活動時間が増加した。
 会議等で時間が細切れになる度合を算出すると、連続して研究できる時間は平均2時間前後。総じて若手より教授クラスにそのしわ寄せがきていた。また、教授クラスの研究時間の60%以上で何らかの片手間作業(電話、メール、学生相談等)が発生していた。
 分野により研究支援に係る業務の種類や、それを遂行する体制が異なる。現状として、研究支援に係る業務の相当部分を大学院生や学部生に依存せざるを得ない研究室はかなり多い。
 各大学が研究マネジメントを向上させるとともに、国が一律的な対応ではなく、分野や大学の特性を踏まえた研究支援機能の強化を図ることが求められる。

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