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平成21年6月 第2361号(6月3日)

大学行政管理学会
  女性のための大学とは?
  女子大研が研究会で議論

 大学行政管理学会の女子大学研究会は、去る5月16日、第2回研究会を大阪樟蔭女子大学において開催。48大学・団体から、80名が参加した。
 「女子大学の存在理由―これまでどのように主張され何に直面してきたか―」と題した講演には寺ア昌男氏(立教学院本部調査役)が登壇。明治7年に東京女子師範学校が設置され、日本は早い段階で女性に教育機会を与えたが、大学に関しては極めて規制的であったとし、戦前戦後の私立専門学校や戦後の女子大学奨励策、短期大学の誕生など、詳細に語った。依然、男女差別や格差が存在する中、女子大学はそれを切り抜ける武器を作る必要があるとし、「女子大学が問われる時は、大学が問われる時。学士課程教育が問われる現在、どの大学においても、大学そのものの存在理由が問われている」と結んだ。
 続いて、竹山優子氏(筑紫女学園大学進路支援課)、水谷俊之氏(佛教大学施設課)、住友元美氏(大阪樟蔭女子大学学芸員)の三人を迎え、パネルディスカッション「女性のための大学(教育)とは?」が行われた。
 竹山氏は、女性のための大学は、社会のための大学であるべきと主張。保護者からの支持・リーダー育成・宗教教育との関係等の現状から、「女子大学ならでは」の評価は、多くの場面二次的でしかないと指摘。かつて女子の教育機会拡大を果たした女子大学は、その後社会にとって何が大切か、目的の継承が足りなかったと分析し、自他共に重要感を与えられる人材の輩出が必要と述べた。
 続く水谷氏は、自身の経験から女子大学への思いを語り、真に平等な社会を実現するには、政治家の半数が女性であるべきと主張。日本の未来を語れる女性を育成するという女子教育があっても良いと語った。
 また住友氏は、戦前の女子専門学校での人格主義的な教育が、結果として女性の将来の基盤を作っていたと具体的な文献を示しながら主張。今こそ人格教育が見直されるべきと、近年の実学傾向に疑問を呈した。
 参加者からは、女子大学である理由や女性の特性に対する考え方等、多方面にわたる質疑・意見がでた。これらを受け、寺ア氏は、「女子大学だから存在意義を明らかにするのではない。大学であり、その上で女子大学であることを選択した。この認識を誤ると女子大学に関する議論は、受身になってしまう」と助言した。
 研究会リーダーの私市佐代美氏(武庫川女子大学)はまとめの中で、女子大学の原点に立ち返りつつ、女性が果たすべき社会的責任等、今後様々な分野での分析・研究が重要と述べた。
 最後に、同研究会の顧問の福島一政氏(日本福祉大学)は、「”女子大学”ありきではなく、目の前の学生がどうあるかが一番大切。これを抜きに考えても意味がない」と述べ、今後の研究会の方向性を示唆した。

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