平成21年4月 第2357号(4月22日)
■国費15.4兆円の経済危機対策
授業料減免奨学金強化など教育費負担へ支援
教育研究基盤の強化など盛り込む
「経済危機対策」に関する政府・与党会議と経済対策閣僚会議の合同会議は、4月10日、国費15兆4000億円(事業費56兆8000億円)程度の「経済危機対策」を決定し、4月中にも「平成21年度補正予算案」を取りまとめて国会に提出する予定だ。対策の具体的施策として、(1)緊急的な対策―「底割れ」の回避、(2)成長戦略―未来への投資、(3)「安心と活力」の実現―政策総動員、(4)サ税制改正を挙げた。私学関係では、平成21年度の追加経済対策として約1000億円を要望しており、日本私立大学団体連合会は、文教関係国会議員等に精力的な要請活動を展開し、私立大学等への緊急融資や教育研究環境整備・充実等に向けた要望の実現をめざしている。「経済危機対策」のうち教育関係の施策は次のとおりである。
学校施設の耐震化補強
大学病院の施設設備支援
●成長戦略―未来への投資=「低炭素革命」の中で学校耐震化の早期推進、太陽光パネルをはじめとするエコ改修、ICT環境の整備等を一体的に実施する「スクール・ニューディール」構想をめざす。また、「健康長寿・子育て」の中では、医療機関の機能・設備強化(大学病院の機能強化等)を挙げ、地域の中核的な医療機関としての大学病院の機能強化(大学病院のNICU等周産期医療・がん治療・救急医療環境等の整備、医師事務作業補助者の雇用促進、私立大学病院の施設整備への支援(利子助成)を図る。また、介護職員の処遇改善等として、福祉・介護人材の資格取得等のキャリア・アップ支援、さらに、子育て、教育支援として、教育費負担への支援(経済情勢の悪化により修学が困難な学生・生徒に対する授業料減免・奨学金事業等への緊急支援等)や内定取り消し問題に対応した大学等の相談体制の充実等、就職支援の強化を図ることなどを明記した。
次に「底力発揮・21世紀型インフラ整備」では、先端技術開発・人材力強化等として、世界トップレベルの研究者等の招聘、世界最先端研究開発インフラへの刷新、大学等の教育研究基盤の強化等のほか、産学官連携の強化(地域の産学官共同研究拠点の整備等)、新学習指導要領への対応(小中高の理数教育の抜本強化等)、留学生受入れ促進(留学生宿舎の整備等)、若手研究者の海外留学支援、多年度に自由に運営できる研究資金など従来にない新しい「研究者最優先」の制度の創設を図る。
●「安心と活力」の実現―政策総動員=「地域活性化等」として、まちづくり支援・地域の実情に応じた活性化策の推進等のほか、「地域活性化・公共投資臨時交付金(仮称)」及び「地域活性化・経済危機対策臨時交付金(仮称)」などの地方公共団体への配慮も盛り込んだ。
●税制改正=研究開発税額の拡充として、試験研究費の総額に係る税額控除制度等について、平成21年度、22年度において税額控除ができる限度額を時限的に引き上げるとともに、同年度に生じる税額控除限度超過額について、平成23、24年度において税額控除の対象とすることができるようにした。
日本私立大学団体連合会(白井克彦会長)は、この度の経済危機対策の編成に当って、追加経済対策として、自民党の文教関係国会議員に私立大学生・私立高校生への経済支援、私立学校施設の耐震化の促進、私立大学病院機能の充実・整備、私立大学等の教育研究環境の整備・充実、「留学生30万人計画」のための留学生受入れ支援などについて要請活動を展開してきた。
4月8日には渡海紀三朗文教制度調査会長、9日には馳 浩文部科学部会長、下村博文留学生等特別委員会委員長、小坂憲次大学・大学院等教育小委員会委員長らに対し、我が国の教育の過半を担う私学の窮状を訴えるとともに、追加経済対策の実現を求め、理解された。(私学関係の追加経済対策案は別掲)
なお、13日には保利耕輔政務調査会長、14日には塩谷 立文科大臣を訪ね、私学に対する約1000億円の追加経済対策案に対し、謝意を表するとともに、平成22年度の予算編成に向けた取組についての懇談を行った。
私学関係などの要望事項
追加経済対策案約1000億円
▽高校授業料減免等〜教育費負担の軽減
経済的に修学困難な高校生が学業を継続できるよう、授業料減免補助や奨学金事業を実施する都道府県に対する交付金により財政支援を行う。
▽私立大学等への緊急融資等
@授業料減免などの学生への経済支援を行う私立大学や緊急融資を必要とする小規模学校法人に対し、私学事業団の無利子融資を創設、融資条件を弾力化。
A私立大学附属病院の施設整備に対する融資枠を拡充するとともに新たに利子助成の対象とし学校法人の利子負担率を軽減。
▽私立学校施設の耐震化
防災機能強化を図るため、Is値0.3未満の施設を中心に引き続き耐震補強事業を推進。
▽私立大学等の教育研究環境の整備・充実
@基盤的な教育研究装置・設備の整備等として、X線解析装置等の基盤的研究装置・設備の整備、少子高齢化社会に対応した介護・福祉・保育等分野の教育基盤設備の整備、私立学校における地上デジタル放送移行への対応など。
A低炭素社会の実現に向けた整備等として、新エネルギーや環境保全等の研究装置等の整備、太陽光発電や新エネルギーを活用したエコキャンパス事業を推進。
▽その他、私費外国人留学生等学生奨励費、就職支援等の学生支援機能の強化、教育研究支援体制の整備、緊急採用奨学金、NICU等周産期医療の環境整備、メディカルクラーク等医療補助職員等の雇用を促進し、医師・看護師等の役割分担を推進、大学における研究支援者の確保など。