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平成21年3月 第2351号(3月4日)

第592回理事会 平成21年度事業計画案・予算案を決める
  5項目の重点政策目標 厳しい状況下私学振興の再構築をめざす

 日本私立大学協会(大沼 淳会長)は、去る二月二十七日、東京・市ヶ谷のアルカディア市ヶ谷において第五九二回理事会を開催し、平成二十二年度私立大学関係政府予算要求の基本方針並びに私学関係税制改善の推進対策、中央教育審議会の審議動向と大学改革等への対応等のほか、同協会の平成二十一年度事業計画案及び予算案について協議した。そのほか、来たる三月二十五日(水)開催の第一三〇回総会(春季)の協議事項・運営方針、一大学の新加入なども協議、承認された。また、報告事項では、雇用対策事業や「私学共済年金研究会」の協力者の推薦、各種協議会の実施状況等が報告された。

 はじめに、大沼会長から「平成二十年度は、経験したことのない新しい課題が次々と起こった。これからは、新しい視点から取り組むなどしていかないと、思うようにならない気がしている。二十一年度の政府予算も決まろうとしているが、早くも次年度へ向けての対応方針等を協議していかなければならない。予算、税政改善等や中教審等の審議動向に対して、全加盟校の総意の下に、大学団体として効果的に対応していきたい」との挨拶があった。
 議事に入り、平成二十二年度の私立大学関係政府予算要求の基本方針並びに私学関係税制改善の推進対策の協議に入る前に、平成二十一年度の予算に関連して小出秀文事務局長は、@経常費補助金の配分基準が変化していることの注意、AGP事業の模様替えとも言える「大学教育・学生支援推進事業」、また「戦略的大学連携支援プログラム」などについて、今後、申請に向けた詳細がわかり次第周知することや積極的な申請を促した。
 次に、平成二十二年度について、「一〇〇年に一度と言われる経済危機に直面し、学校経営、学生の家庭の経済的危機、さらには学生の就職内定取り消しなど、まさに“私学助成”の踏んばり所であるとの認識の下、その対策が肝要である。また、補正予算等で授業料延納対策等が図られるようならば、留学生獲得の一助となる情報として当該の諸外国に発信できるのではないか。私立大学団体連合会として意見具申もしていきたい。さらに、奨学金問題も重要課題として要望を取りまとめていきたい」などと語った。
 三年前のプライマリー・バランスの黒字化の歳出・歳入改革が崩れた状況であり、私学助成をOECD平均並みに引き上げるための説得力のある提案を作り上げることが要となる。そのほか、国立大と私立大の学生に対する助成の大きな較差問題への対応も考えなければならない」などと述べ、総合的な私学振興施策の再構築をめざして、一つでも二つでも橋頭堡を築いていくことを強調した。
 私学関係税制改善については、「寄附税制を更に使い易いものにすること、また消費税問題の動向にも注意しながら検討したい」と述べ、文科省の担当課等とも打合せていく。いずれにしても、予算・税制改善とも小手先の改善ではなく、公財政支出に確実に結びつくような要望を取りまとめていくことになる。
 協議の後、今後、財政に関わる政府の方針も変わってくることが考えられることから、現時点での大枠の方針としての提案が承認された。
 引き続き、中教審の審議動向等については、まず、小出局長より「第五期中教審の大学分科会に新たに質保証システム部会、大学規模・大学経営部会、大学行財政部会という三つの部会が設置されている。質の保証と行財政を連動させていくように見えてくるが、これらと関わる施策の基本スタンスを見極める必要があるのではないか」と述べ、中教審委員の黒田壽二副会長(金沢工業大学学園長・総長)が大学分科会の審議動向を説明した。
 質保証システム部会では設置基準、設置認可審査、認証評価制度を一体とした質保証システム並びに公財政支援との関連の在り方を検討する。GPAの在り方や評価と補助金の関係などが議論のポイントになりそうであること、大学規模・大学経営部会では、社会人のリカレント教育、高齢者の大学就学及びグローバル化の動向を踏まえた大学規模の在り方と経営問題などが議論される。特に私学の経営の在り方が大きな関心事となる。大学行財政部会では、国公私立大学の在り方とそれに応じた行財政制度及び国際的広がりの中での質保証システムの検討が行われる。
 そのほか、前期からの大学院部会、作業部会及び法科大学院特別委員会、認証評価機関の認証に関する審査委員会の概略を説明。
 理事からは「質の保証に関連するが、近年は高卒の学力にも問題があるのではないか」「首都圏の大規模大学の定員超過問題の議論をもっと深めるべきではないか」「社会人を大学に迎えるためには、社会(企業)の理解・協力が必要だ。そういった施策を訴えたい」「高大接続テストの効果的な活用の仕方もあるかもしれない」など多様な意見が出された。
 今後の中教審の各部会等の審議動向を注視しつつ今後、適宜適切な意見具申ができるよう、関係の委員会等で検討していくことが了承された。
 続いて、同協会の平成二十一年度事業計画案及び予算案については、理事会に先立って開かれた企画財務委員会〈別掲〉の協議内容が廣川担当理事から説明され、最終調整の上、取りまとめることで承認された。
 そのほか、来たる三月二十五日開催の第一三〇回総会(春季)の主な協議事項と運営方針が了承された。
 また、同協会への新加入の申込みのあった学校法人新潟科学技術学園の設置する新潟薬科大学の加入(四月一日より)は、満場一致で承認された。
 報告事項に移り、雇用対策事業について文科省高等教育局大学振興課の平野^n誠課長補佐が、二十年度補正予算で創設した厚生労働省所管の「ふるさと雇用再生特別交付金」(二五〇〇億円)、「緊急雇用創出事業」(一五〇〇億円)のうち、文科省関連事業として「大学等における地域貢献、教育機能充実のための業務支援事業」を説明した。これらの事業は都道府県が事業主体であり、各大学等から各都道府県に対して提案していくもの。(問合せは大学振興課・後藤専門官/栗山係員(五二五三―四一一一(内二四九三))へ)そのほか、文科省「私学共済年金制度の在り方に関する調査研究協力者会議」協力者の推薦、同協会の私立大学財政基盤の充実に関する研究協議会、私立大学経営問題協議会の実施、さらに二〇〇七年度CO2排出量調査結果報告と今後の取り扱いなどが報告されて終了した。

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