平成21年2月 第2348号(2月11日)
■文部科学省 学校法人の運営等の協議会開く
21年度予算案等の施策の解説など 円滑な運営へ基本事項の周知図る
文部科学省は、去る一月三十日、東京・港区のメルパルクホールで「学校法人の運営等に関する協議会」を開催した。同協議会は学校法人及び私立大学等の円滑な運営に資するため、関連する諸施策の概要及び事務の適正な処理等に係る基本的な事項の周知を図ることを目的に毎年開かれている。河村潤子私学部長の開会の挨拶に続いて、八つの関係所管の担当課長等からそれぞれの施策についての解説が行われた。
開会に当たり、河村私学部長は、「まず始めに、私学の公共性の観点から“法令の遵守”をお願いしたい」と語り、設置基準の教員数の確保、機関別認証評価を受けること、それぞれの寄附行為に定められたことを守ることなど、今一度確認するよう促した。一つの法人のトラブルが私学全体に対する社会の不信につながることの危機感からである。
加えて、「所管はどこだかわからないが、文科省に『こんなことを聞きたい』という場合には、私学部経営指導室(〇三―六七三四―三三二八)を利用して欲しい」と挨拶を結んだ。
所管事項の説明に移り、関係各課から詳細な解説が行われた。
▽私学行政課(村田善則課長)=教育振興基本計画の「今後五年間に取り組むべき施策」として提言されている私学助成その他の総合的な支援、私立大学の教育研究の振興、学校法人の経営支援の概略を説明したほか、現行の私立学校関係税制の概要も併せて解説した。(二十一年度の私学要望であった個人からの寄附金にかかる所得控除限度額上限の四〇%から五〇%への拡大は見送られた)
そのほか、収益事業の種類が新しい日本標準産業分類で規定され直したことと学校の教育の一部として行うことのできる附随事業、CO2排出量削減の環境自主行動計画や新型インフルエンザ対策に関する文科省行動計画(改定案)の概要、外国人労働者雇用の注意点など多岐にわたる所管事項を説明した。
▽私学助成課(白間竜一郎課長)=二十一年度予算案のうち私大の経常費補助金の特別補助において、@大学等の質保証、A地域貢献、B国際化の推進など各大学の特色を活かした取組への支援のほか、経営改善の取組や施設・設備の整備にメリハリのある助成をする。また、競争的資金では、@戦略的大学連携プログラム、A入学から卒業・就職支援までの総合的な学生支援、B留学生受入等の環境整備など、幅広い支援について説明した。
そのほか、施設高度化推進事業費補助(利子助成)、施設の耐震化支援(大学等への補助率は二分の一)、及び二十年度補正予算(第一次一〇〇億円、第二次三〇億円)などを説明した。
▽私学部参事官(豊岡宏規参事官)=私学事業団の調べによる平成二十年度の私立大学・短期大学の入学定員未充足率(大学四七・一%、短大六七・五%)の厳しい状況を示した上で、管理運営等に関する自己点検リストの作成や各種届出・申請の徹底、資産運用に関する責任ある意志決定と管理体制の確立など、学校法人の運営にとっての重要事項を説明した。
▽高等教育企画課(片山純一課長)=昨年九月に中教審に諮問された「中長期的な大学教育の在り方について」の三つのテーマである“多様なニーズに対応する大学制度”、“グローバル化の中での大学教育”、“人口減少期の大学の全体像”の審議の方向を解説し、二月からは中教審第五期の審議に引き継がれること、また、「学士課程教育の構築に向けて」の答申の概要の説明では、“学位授与の方針”“教育課程編成・実施の方針”“入学者受入れの方針”のそれぞれについて、大学に期待される取組と国が行うべき支援・取組を合わせて述べた。そのほか、教職員の職能開発や評価など質保証の仕組みや財政支援の在り方などにも触れた。
▽大学振興課(義本博司課長)=国公私立大学を通じた大学教育改革の支援の充実等として、@大学教育の充実と大学の機能別分化では、学士課程教育等の質保証の取組や就職支援など総合的な学生支援の取組に一一〇億円(新規)を措置したことのほか、戦略的大学連携支援プログラムに六〇億円(前年度の二倍)を措置し、地域での人材育成や地域活性化に寄与することなどを挙げた。なお、大学における教育課程の共同実施制度の主なポイントについても解説した。
▽学生支援課(下間康行課長)=就職支援等の学生支援を強化するため、二十一年度は新規採択分として二四億円を措置、新規学卒者の内定取消しなど雇用が不安定となっていることから、きめ細かな学生支援の取組を強化する。また、一二四単位を修得して卒業要件を満たしている学生でも、内定取消し等を受けた場合には、留年等の対応も考えられるのではないかとの考えを示した。
奨学金事業では、無利子奨学金に自宅外通学の場合の貸与月額に三万円を新設。有利子奨学金の入学時増額貸与額に現行の三〇万円のほか、一〇万円〜五〇万円(一〇万円ごと)を創設。
一方、奨学金の返還促進について、延滞者に対する法的措置を前提とした督促が行われることから、各大学での返還指導を促した。
そのほか、「留学生三〇万人計画」と大学の国際化についての概要も説明した。
▽初等中等教育局(澤川和宏企画官)=学習指導要領の改訂のうち、高等学校については、@二十一年度中に周知徹底を図り、可能なものは先行実施、A二十五年度入学生から新学習指導要領を学年進行で実施する。そのほか、二十一年度からの教員免許更新制の実施に伴う免許状更新講習について説明した。
▽科学技術・学術政策局政策課(戸渡速志課長)=科学技術関係予算案のうち若手・女性・外国人の研究活動の活性化に向け八九一億円など研究開発強化法等に基づいて措置したこと、また、科研費として一九七〇億円と前年度より三八億円増とし、基盤研究二四億円増、革新的な学術研究の推進六五億円増、若手研究者育成・支援一二億円増などを説明した。