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平成21年2月 第2347号(2月4日)

「神奈川大学評論61号」 ソリダリティを特集

 出版界も元気がない。とくに総合誌がそうだ。そんななか、このような大学発の評論誌が気を吐いているのは嬉しいことである。
 六一号の特集は「ソリダリティ(社会連帯)」。「生きにくさの時代のなかで ソリダリティへの眼差し」というタイトルが凛としていい。
 巻頭対談は、ルポライターの鎌田 慧とノンフィクション作家の川田文子。
 〈日本の労働運動は連合という形で大企業中心になって貧しい人に無関心だ。労働者の再生産がきかない社会になった〉(鎌田)、〈摂食障害は現在の女性が抱える様々な問題、生きにくさを集約している〉(川田)。それぞれの専門分野の言説は重たい。
 長年の取材に裏打ちされた鎌田と川田の熱い想いが伝わる。が、二人の考え方が近いせいか、論争に発展しないのが欲求不満になるが、我慢はできる。
 論文では、内田 樹の「行き場を失った若者と社会連帯の可能性」が鋭く光る。
 〈行き場を失っているのは三つの意味がある〉と、それぞれ具体例をあげて論じる。〈窮状から脱出の方位は、@他者と共生する力の賦活、A協働する力の涵養と評価、B開放的で自由な話法の創出〉とまとめる。意義ある問題提起だ。
 内田 樹の近著「街場の教育論」は朝日新聞(〇九・二・一)の書評で取り上げられた。〈シンプルな教育や教師の本質が語られている〉と立大教授の香山リカは評価していた。
 タイムリーな企画、執筆者は時流を先取りし、時代を撃つ。大学評論誌の発行は、地味な仕事だが、大学の存在価値を高めていると共感する読者は多いはず。大いに誇っていい。

 「神奈川大学評論第61号」
 神奈川大学評論編集委員会
 電話:045-481-5661(内線)2237
 定価:850円
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