平成21年2月 第2346号(1月28日)
■干支の弁 コーディネーターに徹する
大阪南部に位置する創立八六年にもなる名門「学校法人羽衣学園」の理事長を六年前にお引き受けしました。
多くの女子中学、高等学校が共学校に切り替える中、伝統校たる女子学園を守り抜く覚悟は、はからずも母がこの学園の卒業生であるとの一つの絆でつながれているかもしれない。
羽衣国際大学・羽衣学園高等学校・中学校を設置する法人の理事長として就任当初は名前ばかりの理事長職では法人全体を把握理解を出来るものではない、と、強い信念のもとで、本業の家業たる仕事も半ば放り投げ、大学・高校・中学の関係者をつなぐコーディネーターに徹する思いで、悪戦苦闘しながらも寸暇を惜しまず我が仕事を学園経営一本に専心しました。
お陰で就任当初の課題が、次から次へと関係者の努力とあいまって消化され、明るい兆しも見えてきた、と、嬉しさも束の間、国内外でさらなる追い討ちをかけるような重苦しい情勢と急速な変化が襲い、それも単年度ごとに驚きの繰り返しでありました。その時々に新たな課題を背負う形で現在に至っています。理事長という椅子に安穏と座っておれるような立場では到底ありません。
自然災害の脅威を目の当たりにして、生徒の安全対策に向けて校舎耐震化構築に真剣に前向きに会議を重ねた。国や府からの補助金があろうと、健全財政の維持が頭を過ぎ中座してしまいそうになります。
また、表示偽装の食品からの安全・次々と物価値上がりにつながる原油・エネルギーの問題・一生懸命働いても稼げなくなった保護者サイドのワーキングプア・依然として続く人口問題・政治の骨子に落ち着きがない総選挙の仕業・あらゆる青少年を取り巻く司法改革・地球温暖化対策、どれをとっても教育界と無縁のようで大きな課題を背負い、あらゆる要素がつながり緊密な関係が見えてきます。
一番困るのは、先が見えない不安感が一気に襲うことでありました。
学校経営についてごく限られた仲間と語り合うことが新しい年に当って一番の勇気の出る源ではないかと思っています。当面、初心に返ってあらゆる各界、各層の力を借りて、再度、法人羽衣学園教職員の先頭に立って、コーディネーター役に徹することが、私学復権、私学存続の御旗を守り抜く要素であり、教育の光が求められると確信した次第であります。
学生・生徒・教職員が「この学園で学べて過ごせて幸せだった。理事長が松井氏で良かった」と。その時が、満願成就です。