平成21年1月 第2345号（1月21日）
■平成21年度文科省高等教育局予算案 教育の質保証の取組への支援充実
医師不足 地域医療大学病院の機能強化へ
戦略的大学連携支援プログラム倍増の60億円
平成二十一年度の文部科学省予算案は、一般会計五兆二八一七億円（対前年度七八億円増）となっており国の一般歳出のうち一〇・二％を占める。高等教育局所管事項では、大学教育の質保証のための主体的な取組への支援、国際的に卓越した教育研究拠点形成と大学院教育の強化など「大学教育の充実」を図るほか、「医師不足対策と地域医療を支える大学病院の機能強化」、「安心して学べる環境の実現」、「「留学生三〇万人計画」と大学の国際化」、「私立学校に対する助成」、「国立大学等の教育研究の充実と活性化」などである。主要事項の概要は次のとおりである。予算額は百万円未満を四捨五入し、カッコ内は前年度の予算額との増減を表している（▲印は減）。〈初中局は2面、研究三局は3面、スポーツ・青少年局は4面に掲載〉
質保証関連に新規110億円
一、大学教育の充実と教育の質保証
（1）大学教育の充実と大学の機能別分化
①大学教育の充実や学生支援機能強化の取組への重点的支援等大学教育改革支援充実二一〇億一六〇〇万円（二一億六七〇〇万円）／▽大学教育・学生支援推進事業【新規】一一〇億二〇〇万円…大学の学部教育等の充実や入学から卒業・就職支援までの総合的な学生支援機能を強化する取組の支援。▽戦略的大学連携支援プログラム六〇億円（三〇億円）…連携大学間において分野・形態に応じた教育内容・方法の開発・実施による教育の質確保の取組（単位互換、標準コアカリキュラム開発、共通テキスト作成等）。新規採択は、（ア）広域型一三件×一億円、（イ）地元型一〇件×五〇〇〇万円、（ウ）教育研究高度化型一二件×一億円など。
②国際的に卓越した教育研究拠点形成と大学院の組織的な教育活動の推進四〇〇億円（九億円）／▽グローバルＣＯＥプログラム三四二億円（二億円）…新規採択は、一〇件×一億八〇〇〇万円。▽組織的な大学院教育改革推進プログラム五七億円（六億円）…国際的水準コースワーク（学修課題を複数の科目等を通じて体系的に履修すること）を推進するとともに、人材の国際流動性を向上させてグローバルな競争環境下で活躍できる人材の育成（国内外のインターンシップ、海外派遣など）。新規採択は、二六件×二五〇〇万円。
③国立大学等の教育研究の充実と活性化一兆一六九五億二〇〇〇万円（▲一一八億一三〇〇万円）
④高等専門学校の改革・充実〈国立高専運営費交付金〉六六九億八二〇〇万円（▲六億七七〇〇万円）／▽イノベーション創出三億一九〇〇万円（高度化・再編、ものづくり技術力の継承・発展一〇億一二〇〇万円）、▽国際化一億九〇〇〇万円など。
（2）医師不足対策と地域医療を支える大学病院機能の強化
①周産期医療体制の計画的整備一七億円【新規】／▽国立大学病院の周産期医療体制整備計画（平成二十一年度から四か年計画）一〇億円…ＮＩＣＵ（新生児集中治療室）未設置九病院の解消。現行平均一一床程度の病床数の倍増。▽国公私立大学病院の周産期医療に関する人材育成等の強化七億円。
②大学病院の医師等の養成機能等を強化するための方策の充実三八億円（四億円）／▽大学病院連携型高度医療人養成推進事業一六億円（一億円）…若手医師にとって魅力あるキャリア形成システム構築をし、質の高い専門医、臨床研究者の養成への支援。新規採択は、二件×八〇〇〇万円。▽看護職キャリアシステム構築プラン二億円【新規】…看護師の人材養成システムの取組支援、八件×二五〇〇万円。▽がんプロフェッショナル養成プラン二〇億円（一億円）
（3）「留学生三〇万人計画」と大学の国際化
①海外での情報提供及び支援の一体的な実施七億円（二億円）／▽日本留学情報発信機能等の充実三億四八〇〇万円…日本留学ポータルサイトの充実、日本留学促進資料公開拠点における相談体制の充実、日本留学プロモーション活動の拡充など。▽日本留学試験の拡充三億四二〇〇万円…日本留学試験の試験問題の多言語化調査など。
②留学生の受入れ環境の充実等四二〇億円（九億円）／▽外国人留学生奨学金制度等の充実三四七億四七〇〇万円…私費留学生一万二四七〇人（三七〇人増）、授業料減免学校法人援助など。▽留学生宿舎支援一二億六九〇〇万円…大学等の留学生宿舎借り上げ二三〇〇戸（三〇〇戸増）。▽留学生の就職支援の充実三八〇〇万円…就職フェア、留学生交流総合推進会議（仮称）の設置など。▽国際化拠点整備事業（グローバル30）四〇億八一〇〇万円【新規】…英語による授業のみで学位取得できるコースの設置、外国人教員の配置、留学生受入のためのワンストップサービス拠点の整備等、国際化拠点としての総合的な体制整備を図る取組を初年度は一二件支援する。▽日本人学生の海外留学の推進六億三二〇〇万円（一億六〇〇万円）…短期派遣七四〇人（一〇人増）、長期派遣五〇人【新規】
二、多様な人材を育む私学の支援〈後掲〉
三、学生が安心して学べる環境の実現
（1）教育費負担軽減のための（独）日本学生支援機構奨学金事業の充実と健全性確保一三一七億七七〇〇万円（三億六八〇〇万円）〈他に財政融資資金（財投機関債含）六一一二億円（四〇一億円）〉／▽貸与人員六万人増（緊急採用四〇〇〇人、無利子奨学金二〇〇〇人増、有利子奨学金五万四〇〇〇人増など）。▽無利子奨学金事業に関する新たな貸与月額の創設（大学等三万円、修士五万円、博士八万円、高専一万円）。▽有利子奨学金事業に関する新たな入学時増額貸与額の創設と利子補給の措置（一〇～五〇万円の一〇万円単位）。▽奨学金事業の健全性確保九億円（四億円）…返還金回収強化経費（債権回収業務の民間委託、法的措置の早期化や相談体制強化のためのコールセンター設置など）
（2）学生への就職支援の強化等の取組の推進一一〇億二〇〇万円（八億円）
私学助成関係予算
一、私立大学等経常費補助三二一七億八二〇〇万円（▲三〇億八六〇〇万円）
（1）一般補助二一一五億六八〇〇万円（▲二〇億二九〇〇万円）
（2）特別補助一一〇二億一四〇〇万円（▲一〇億五七〇〇万円）／▽各大学等の特色を活かせるきめ細やかな支援一〇〇八億一四〇〇万円（①質保証メニュー（新規）、②地域活性化貢献支援メニュー【新規】、③大学等の国際化推進メニュー【新規】など）。▽学生の修学・就職支援等の取組への支援二五億円（五億円）。▽自主的な経営改善に取組む大学等への支援一二億円（四億円）。▽特定分野の人材養成支援五七億円（▲七億四二〇〇万円）
二、私立高等学校等の経常費助成費等補助一〇三八億五〇〇〇万円（同額）
（1）一般補助九二〇億三九〇〇万円（四億四三〇〇万円）
（2）特別補助九三億六〇〇〇万円（▲一億九九〇〇万円）。
（3）教育改革推進モデル事業〇円（▲二億一〇〇〇万円）
（4）特定教育方法支援事業二四億五一〇〇万円（▲四三〇〇万円）
三、私立大学等における教育研究装置・施設の整備費補助〈補助率は二分の一以内〉九二億六八〇〇万円（▲一二億八九〇〇万円）
（1）私立大学戦略的研究基盤形成支援事業三二億五五〇〇万円（▲六億円）
（2）教育研究装置整備費補助一六億七二〇〇万円（同額）
①研究装置一一億四七〇〇万円（同額）、②教育装置五億二五〇〇万円（同額）
（3）ＩＣＴ活用推進事業二八億八九〇〇万円【新規】（二十年度は「情報通信施設・装置」）
（4）私立大学等防災機能等強化緊急特別推進事業一三億一〇〇万円（▲六億八五〇〇万円）／▽学校施設耐震改修事業九億一〇〇〇万円（一一〇〇万円）など。
（5）エコキャンパス推進事業一億五〇〇〇万円【新規】など。
四、私立大学等の研究設備等の整備費補助五一億九五〇〇万円（▲七四〇〇万円）
五、私立高等学校等の施設整備費補助二〇億三八〇〇万円（▲四〇〇〇万円）
六、私立高等学校等ＩＴ教育設備整備推進事業一〇億円（同額）。
七、私立学校施設高度化推進事業費補助一一億七七〇〇万円（同額）＝築三〇年以上の老朽校舎及び昭和五十六年以前の旧耐震基準の学校施設の建替え整備事業について私学事業団の融資を受けた場合一〇年間の利子助成を行う。また、平成二十一年度及び二十二年度に融資を受けた場合は、学校法人負担率を現行より〇・五％優遇する。
八、私学事業団貸付事業一六三億円（同額）。
