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平成21年1月 第2344号(1月14日)

はじめに〜今なぜ学士課程教育か

 1 本審議会は、平成十三年四月十一日、「今後の高等教育改革の推進方策について」諮問を受けた。
 平成十七年一月にとりまとめた「我が国の高等教育の将来像」答申(以下、「将来像答申」という。)では、「早急に取り組むべき重点施策」の中で、「入学者選抜・教育課程の改善、「出口管理」の強化」や「教養教育や専門教育等の総合的な充実」等、学士課程教育の充実に関して提言した。
 そして、同年九月に「新時代の大学院教育」答申をとりまとめた後、平成十八年以降、大学分科会を中心に、学士課程教育に重点を置いた審議を行ってきた。昨年三月には、大学分科会の制度・教育部会に「学士課程教育の在り方に関する小委員会」を設置し、同年九月に審議経過報告(「学士課程教育の再構築に向けて」)をとりまとめた。
 その後、制度・教育部会を中心に審議を深め、本年一月の「高等学校と大学との接続の改善に関するワーキンググループ」の「議論のまとめ」も踏まえつつ、本年三月に「学士課程教育の構築に向けて(審議のまとめ)」を公表した。
 この「審議のまとめ」に対する大学・高等学校関係者からのヒアリング、広く国民一般からの意見聴取を行いつつ、慎重に審議を進め、ここに答申をとりまとめた。
 2 審議における問題意識は以下のとおり、学士課程教育の構築が、我が国の将来にとって喫緊の課題であるという認識に立っている。
 第一に、グローバルな知識基盤社会、学習社会において、我が国の学士課程教育は、未来の社会を支え、より良いものとする「二十一世紀型市民」を幅広く育成するという公共的な使命を果たし、社会からの信頼に応えていく必要がある。
 第二に、高等教育のグローバル化が進む中、学習成果を重視する国際的な流れを踏まえつつ、我が国の学士の水準の維持・向上のため、教育の中身の充実を図っていく必要がある。
 第三に、少子化、人口減少の趨勢の中、学士課程の入口では、いわゆる大学全入時代を迎え、教育の質を保証するシステムの再構築が迫られる一方、出口では、経済社会から、職業人としての基礎能力の育成、さらには創造的な人材の育成が強く要請されている。
 第四に、教育の質の維持・向上を図る観点から、大学間の協同が必要となっている。
 3 本答申は、いわゆる学部段階の教育を「学士課程教育」と称している。これは、将来像答申において、「現在、大学は学部・学科や研究科といった組織に着目した整理がなされている。今後は、教育の充実の観点から、学部・大学院を通じて、学士・修士・博士・専門職学位といった学位を与える課程(プログラム)中心の考え方に再整理していく必要がある」との指摘を踏まえている。今後、我が国において、上記の観点から学士課程教育を構築するには、学部・学科等の縦割りの教学経営が、ともすれば学生本位の教育活動の展開を妨げている実態を是正することが強く求められる。
 本答申を契機として、「学士課程教育」という概念が、大学関係者はもとより、一般に広く理解されることを期待したい。
 4 本答申は、まず「グローバル化、ユニバーサル段階等をめぐる認識と改革の基本方向」(第1章)を述べる。そして、改革の具体的な方策として「学士課程教育における方針の明確化」(第2章)では、「学位授与の方針」、「教育課程編成・実施の方針」、「入学者受入れの方針」の順で、学士課程教育の充実に関する提言を行う。続く「学士課程教育の充実を支える学内の教職員の職能開発」(第3章)、「公的及び自主的な質保証の仕組みの強化」(第4章)、「基盤となる財政支援」(第5章)において、それぞれ関連する提言を行っている。
 第2章から第4章では、それぞれのテーマに関し、原則として「現状と課題」について本審議会の認識を示し、「改革の方向」を述べた上で、「具体的な改善方策」として、「大学に期待される取組」と「国によって行われるべき支援・取組」に関する事項を列挙した。
 「大学に期待される取組」は、各大学の主体的な取組の参考となることを期待して提示したメニューであり、一律な実施を求めるものではない。もとより、本答申は、様々な具体的な取組に関し、各大学に直接指示する性質のものではない。
 また、「国によって行われるべき支援・取組」を受けて、今後、国としてどのような施策を講じ、各大学に働きかけるかは、文部科学省において、大学の自主性・自律性を尊重しつつ、適切に判断されるべきものである。
 最後に、「おわりに」として、改革の実行に向け、社会全体とのかかわりについて要望を行っている。
 5 本答申は、学士課程教育の在り方に焦点を当てているが、あわせて、短期大学の在り方が重要な論点であることは言うまでもない。将来像答申では、短期大学の課程に対し、「ユニバーサル段階の身近な高等教育の一つとして、また、地域と連携協力して多様な学習機会を提供する、知識基盤社会での土台づくりの場」という期待を示したところである。
 本答申では、短期大学固有の問題にかかわる提言を行っておらず、今後の検討が期待されるが、学位の質保証をめぐる課題は共通するものであり、短期大学の課程についても、その特性等を踏まえつつ、本答申を活用して当該大学での主体的な取組に生かしていただくことを望みたい。
 6 なお、本年四月の「教育振興基本計画について」答申(以下、「基本計画答申」という。)を踏まえ、七月一日には「教育振興基本計画」が閣議決定されている。その中では、「社会の信頼に応える学士課程教育等を実現する」等の方向性が示されており、本答申は、その具現化に必要な取組を示すものである。

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