平成21年1月 第2343号(1月1日)
■地方私大の振興・発展を
明けましておめでとうございます。健やかな新春をお迎えのこととお慶び申し上げます。
昨年秋から、不安定な政情の中、米国のサブプライムローン問題を発端にした世界的な金融不安が起こり、その影響が今年もますます実体経済に暗い影を落とすことになりそうです。
高等教育に目を転じますと、昨年度の入試結果から私立大学の環境の厳しさがうかがえます。私学事業団の調べでは、私立大学への入学者は四七万七九一八人と対前年度六九九七人の減少にもかかわらず、大学数は短期大学のいわゆる“四大化”等によって増え続けています。したがって定員充足率が悪化している現状があります。さらに、受験生の大都市圏への集中もあり、地方私立大学は苦戦を強いられています。
日本全国で地方活性化が声高に叫ばれており、その一翼を担い、多様な人材を育成している地方私立大学の振興・発展こそ急務なのですが、国の政策が十分に行き届いているとは言い難いのです。
昨年九月の鈴木恒夫前文科大臣が中教審へ諮問された「中長期的な大学教育の在り方について」では、@社会や学生からの多様なニーズに対応する大学制度及びその教育の在り方、Aグローバル化の進展の中での大学教育の在り方、B人口減少期における我が国の大学の全体像の検討課題が示されており、中教審では、すでに一三のワーキンググループの内、四つで専門的な審議が始められています。その中で私立大学にとって特に気になるのが“人口減少期の大学の全体像”ではないでしょうか。このことに関連して、入学定員の管理の議論も今後行われることと思われますが、私は、国立大学と大都市部の大規模大学の定員管理の適正化が行われることを望まずにはいられません。日本の高等教育全体の問題として、国公私立大学全体での議論を望みたいところです。
さて、国際化の視点から今日、高等教育の質の保証が求められています。私立大学は教育研究の目標、また目的を明確化させ機能別分化を促進させ、一層の特色と同時に、質の保証の向上を目指すことも求められており、学士力の向上を図り「二十一世紀型市民」の人材育成に邁進しなければなりません。特に、質の保証は、私立大学の健全な発展のためには欠かすことのできない重要な課題となっており、目下、私立大学団体連合会を構成する三団体で共通アンケートを実施するなどして、社会の要請に応えるべく、その方策を研究しています。近々にも調査結果が公表される予定になっています。
昨年一年間は、中教審の「学士課程教育の構築」に向けた審議を行ってまいりました。その中身にはかなりのボリュームの改革項目が盛り込まれていますが、その中のカリキュラム・ポリシー構築のためのFD活動など、各大学での積極的な取り組みも進められているとお聞きしています。これからも各大学が諸改革に取り組まれ、地域のニーズに適切に対応し、地域になくてはならない存在になるよう願って年頭の挨拶といたします。