平成21年1月 第2343号(1月1日)
■質の向上と保証こそ使命
平成二十一年の新春を迎えることになりました。
昨年来、現時点でも世界的な経済不況が進行中です。新年を寿ぐ気持ちにはなれない状況でしょう。この世界的状況の中でわが国は、少子・高齢化社会ではなく、すでに少子・高齢社会そのものになりました。
日本私立大学協会は、三十数年前から、いずれ少子化の時代の到来を予測し、その対応の必要を提唱してきましたが、「少子」は明日、ただちに改善できる問題ではありません。有識者は、少子化は社会が「成熟」した「成熟社会」の結果であると言われます。しかし、その社会の中で少子化に対する根本的、有効的な対策もないまま、時間が経過してきました。
高等教育にかかわる人口動態予測では、昨年から今後十数年間の一八歳人口は、およそ一二〇万人前後が継続し、その後は、さらに減少する見込みです。
この一八歳人口動態に伴う高等教育への進学動向は、すでに「大学進学全入」が始まって、高等教育の進学にかかわる学力低下が大きな問題になり、特に大学教育については、大学自体の「質の向上」そのものが問われています。
大学教育について、入口と出口という見方からすれば、入学者受入れ対応、教育課程編成対応、卒業認定・学位授与対応の入口から出口までのすべてについて、質の向上が要求されます。しかし、「質の向上」を強いていえば、単に大学自体の「質」の問題ではなく、結果として、大学卒業者の「質」の程度・レベルの高さに基づいて、その大学の「質」が評価されるということなのであります。
教育振興基本計画から始まり、中央教育審議会、日本学術会議などで大学教育の分野別質保証、学士課程教育の改善、大学グローバル化等々、「質の向上」にかかわる検討が進められることについても、結果は、個々の大学がその卒業者の質の保証をいかに確保できるかということにつきる問題ではないでしょうか。
成熟社会において、「少子人口」に対する質の向上と保証こそが、各大学に課せられた新年の使命であると考えます。