平成21年1月 第2343号(1月1日)
■中長期的な"国"の在り方をも念頭に
全国三八五大学の加盟校の皆様、新年おめでとうございます。
本年こそ我々私立大学にとって、少しでも良き一年となりますよう願わずにはいられません。
昨年暮れの私立大学関係の平成二十一年度の予算及び税制改正の要望等は満額実現はできませんでした。力足らずで皆様のご期待に応えられず、誠に申し分けなく思っています。
世界的な金融危機に直面し、私立大学を取り巻く経営環境は相変わらず厳しさが続くことになります。
一方で、グローバル化の進展する中、「留学生三〇万人計画」の推進など、我が国の高等教育においても国際化のための取り組みやOECDの水準を意識した諸施策を展開する必要に迫られています。
昨年は、十月にノーベル物理学賞に南部陽一郎シカゴ大学名誉教授、小林 誠(共)高エネルギー加速器研究機構名誉教授、益川敏英京都産業大学教授の三人が、また、同化学賞に下村 脩ボストン大学名誉教授がそれぞれ受賞の栄誉に輝いたことは記憶に新しいところです。この快挙によって国際的に見て、我が国の教育・研究レベルのステータスが大いに高められ、注目されました。このことからも、教育・研究に取り組める環境の整備が痛感させられるとともに、資源の少ない我が国が国際的に伍していくためには、人材立国、科学技術立国を目指すことが肝要であると言えます。
ですから、規制改革による教育への市場原理の導入によって、「具体的な成果がすぐに見込めない」といった理由から教育に対する公財政支出をないがしろにするようなことはあってはならないのです。また、規制緩和によって“変えなくてもよいもの”まで壊し、例えば世界に冠たる学校法人制度を根底から揺るがすことなど、断固許してはならないのです。
さて、昨年は約一年間にわたる「学士課程教育の構築」の審議、改正教育基本法に規定された「教育振興基本計画」の七月の閣議決定、さらに九月の「中長期的な大学教育の在り方について」の諮問といった高等教育をめぐる議論が次々と行われました。残念ながら「教育振興基本計画」には、財政当局の理解が得られず、具体的な数値目標等は盛り込めませんでしたが、「中長期的な大学教育の在り方について」の諮問の中に、今後の財政支出システムの論点も記述されていることから、大いに期待しているところです。
今年は、学士課程教育の構築へ向け、大学ごとの主体的な検討を推進することが求められることになりますが、「学位プログラム」や「質保証」の検討など、難しい課題も横たわっています。また、「中長期的な大学教育の在り方について」をめぐり、多様な審議も展開されることでしょう。わが協会としてもこれからの審議経過を注視し、適宜適切な意見具申等をしていかなければなりません。
加盟校の皆さんの力を結集して、教育・研究・社会貢献(地域貢献)の役割に思いを致し、“中長期的な国の在り方”をも念頭に私立大学の声を上げていきたいと思っています。
最後に、加盟校の益々のご発展と皆様のご健勝を心より祈念して念頭のご挨拶と致します。