平成20年12月 第2342号（12月17日）
■20年度第2回「教育学術充実協議会」を開催 新たなFDの展開を研究協議
「FDの新局面を考える」をテーマに
日本私立大学協会（大沼 淳会長）の平成二十年度第二回（通算第三七回）教育学術充実協議会（担当理事＝中原 爽日本歯科大学理事、福井直敬武蔵野音楽大学理事長・学長）が、去る十二月二日、東京・九段の二松学舎大学九段キャンパスにおいて、加盟三八五大学から一七五大学の学長等を中心に二一九名が出席して開催された。メインテーマを「ＦＤの新局面を考える」とし、文部科学省高等教育局の河村潤子私学部長の講演をはじめ、これからのＦＤを考えるにあたって第一人者によるプレゼンテーション、さらに講師を交えてのフロアとの意見交換等の研究協議も行われた。なお、協議終了後には情報交換会も行われた。
中原担当理事による開会の挨拶に続き、文科省の河村私学部長が「高等教育政策の展開と私学行政」と題した特別講演を行った。教育振興基本計画や中教審の審議動向などの大学を取り巻く状況、大学間連携と教育の質保証問題、高等教育財政の現状と課題等について述べた後、私学振興のための総合的支援策について説明が行われた。
休憩の後、大学教育の一層の充実に向けた、新たなＦＤの展開とそのマネジメントを考える研究協議が行われた。第一部は、桜美林大学の佐藤東洋士理事長・学長のコーディネートのもと、国際基督教大学名誉教授・新潟大学理事の絹川正吉氏、名城大学副学長・常勤理事の池田輝政氏、山形大学地域教育文化学部教授の小田隆治氏、鹿児島国際大学学長の瀬地山 敏氏らによるＦＤの新局面に関するプレゼンテーションが行われた。
絹川氏は「拡大する教員の役割とＦＤ」と題して、まず、ＦＤの分類について、ＰＤ型（研究・教育の個人的能力開発支援サービス）、ＩＤ型（教授法開発）、ＣＤ型（ＦＤの中核で教授活動の全体に関わる）、ＯＤ型（組織開発）、Ｖ型（日本型ＦＤ＝各種大学関係団体の大学改革に関する研究集会・シンポジウム）の五つに分類されることを紹介した。さらに、制度的ＦＤ活動を教員の日常的教育活動のレベルに引き戻すことを促し、ＦＤは本来ボトムアップであるべきで、教員の自発的活動により学生の自律的学習を支援することが重要であると述べ、教員は一人の人間として学生と向き合うべきであると結んだ。
池田氏は「コミュニティ・マネジメントによるＦＤ―学生・職員の参画を推進する―」と題し、同氏が取り組んできたＦＤ活動の歩みから、名城大学でのＦＤコミュニティ・マネジメントに至るまでの報告を行った。まず、ＦＤにも、①ニーズ創出に向けたＦＤ、②個人支援としてのＦＤ、③学部組織支援としてのＦＤ、④大学間連携によるＦＤ／ＳＤ、といったステージがあり、その先に、教職員の資質開発が学生に還元できるような組織化を行うことが新局面としてあると述べた。 それぞれのステージにおける活動内容として、同大で取り組んでいる「英語多読コミュニティの育成マネジメント」を紹介した。コミュニティ形成には拠点が必要であるとともに、中核に人を惹きつけ巻き込む影響力のある人間を据えて取り組むことでコミュニティが動いていく、と締めくくった。
小田氏は「ＦＤの大学間共有とネットワーク化」と題して、複数大学によるネットワークで実施するＦＤについて紹介した。平成十六年に設立された地域ネットワークＦＤ「樹氷」は、山形県内六つの国公私立大学・短大の連携組織。やがて、各大学が自立した分散型のネットワークに発展していき、山形大学は平成二十年に、さらに広域な東日本地域の国公私立の大学・短大・高専からなる「ＦＤネットワーク“つばさ”」を設立するに至る。同氏は、それらに携わるなかで行ってきた学生による授業評価、公開授業と検討会、ＦＤ合宿セミナー、学生ＦＤ会議等の取組を紹介し、ＦＤネットワークについて、他大学の事例を研究し、自大学に適したものをアレンジして試みることが可能な場であると述べた。
瀬地山氏は「ＦＤとキャリアデザイン―教える内容の工夫―」と題し、はじめに、鹿児島国際大学が実施した懸賞論文から見える学生の姿を例に、「悩む力」に対して教育が届きかねているのではないか、学生に歩み寄り、模索する力を引き出すことがＦＤの目的ではないか、との課題を挙げた。授業公開から始まった同大でのＦＤを紹介し、教員の立場を見直すこと、学生に方向性を示唆するためのキャリアデザイン教育の必要性等を述べた。
第二部は、第一部のプレゼンター四人とフロアとのディスカッションで、これからのＦＤのあり方とそのマネジメントについて、活発に意見が交わされた。
協議を終え、閉会の挨拶を福井担当理事が述べた後に、会場を移して情報交換会が行われた。
