平成20年12月 第2341号(12月3日)
■21年度予算・税制改正要望対策活動を協議
国会議員等への効果的な要請活動
中央教育審議会「中長期的な大学教育」の審議注視
日本私立大学協会(大沼 淳会長)は、去る十一月二十八日、東京・市ヶ谷のアルカディア市ヶ谷において、第五九〇回理事会を開いた。去る十月開催の同協会の秋季総会以後の、平成二十一年度私立大学関係予算・税制改正要望に関わる対策活動や中央教育審議会の審議動向と大学改革問題等への対応、さらに、関係団体の人事案件について協議するとともに、各種研修会や各支部総会の報告等が行われた。
開会に当たり、大沼会長は「今年最後の理事会となった。年末の予算編成の予測がつかない状況だが、“二〇一一年までのプライマリーバランスの黒字化”の財政政策から、景気浮揚のために、いわゆる「骨太方針二〇〇六」の“対前年度予算比▲一%”及び“深掘り▲二%”などの抑制の見直しが行われるという動きもある。政局も含めて、色々な問題が起こるかもしれない。これからも文科省、国会等の関係者への要請活動を効果的に展開していきたい。役員の皆様にもご協力をお願いしたい」と挨拶した。
協議に入り、はじめに、予算・税制改正要望の実現の対策活動について、同協会の小出秀文事務局長が説明した。
「政局が不透明の中、文科省と連携を取りつつ着実に進めてきたが、国会の解散が先送りとなり、急きょ国会対策に切り換えた。十一月十九日には、首相官邸で麻生太郎総理に面会し、地方の活性化等を訴えた。特に大沼会長からは「私大は地方活性化の拠点となり、原動力となっている」と述べたのに対し、総理も“教育立国”の立場から賛意を示された。そのほか、保利耕輔政務調査会長や森喜朗元総理等にも私学団体として教育予算の拡充を訴えてきたなどと説明するとともに、文教関係の国会議員等への要請活動等も精力的に展開していること、さらに、歳出歳入改革見直しなどが検討されていることから、高等教育費についても“▲一%”等のシーリング枠をはずすような運動を考えていきたいとし、その方法・アイデアを求めた。
理事からは「教育関係費についても、社会保障費等と同様に歳出改革の枠からはずしたい。おとなしくしているわけにはいかないのではないか」などの意見も出された。
税制改正要望の実現に向けては、自民党税制調査会の国会議員を中心に、@個人からの寄附金にかかる所得控除限度額の上限を四〇%から五〇%まで拡大すること、A個人からの相続財産の寄附にかかる税額控除制度の創設、B教育費(学費)の所得(税額)控除制度の創設などを要請しており、十二月上旬にも一次査定が予定されている。
これらの状況を解説した上で、小出事務局長は、各大学の地元の国会議員に理解を求めるとともに、私学振興の“声出し”をお願いしてほしいと述べた。
次に、中教審等に係わる審議動向と大学改革問題等への対応等について、中教審で審議の始まった「中長期的な大学教育の在り方について」を中心に小出事務局長が概要を説明し、対応方策を提案した。
中教審大学分科会に置かれた作業部会が、このたびの諮問の審議に関わる調査・研究、専門的な検討のために設置した一三のワーキンググループ(WG)のうち、審議がスタートしている@OECD高等教育における学習成果の評価(AHELO)に関するWG、A学位プログラム検討WG、B質保証システム検討WGなどについて、それぞれ審議に参画している理事等が詳細に審議内容を説明。@では、座長をつとめる小原芳明理事(玉川大学学長・学園長)から、「我が国の参加希望内容についてはOECD本部に連絡してあり、目下、調整結果待ちであり、いずれは、このフィージビリティスタディ(試行的試験で実施可能性を検討する)の工学系の参加大学を募る運びとなるだろう」などと語った。
Aでは、黒田壽二副会長(金沢工業大学学園長・総長)から、まず、「学士課程教育の構築に向けて」の答申が十二月下旬にずれ込みそうであることを述べた上で、学位プログラムの検討では、学生が効率的に学習できるようにし、国際的に通用する力を身につけさせるべく、従来の学部組織中心の教育ではなく、学士・修士・博士といった学位を与える課程中心の“学位プログラム”を中心とする教育となる。大学教育を根底からひっくり返すような制度を目指すものとなるだろうと解説した。
さらに、Bに関連して、小出事務局長から、「国際的通用性のほか、地方の教育文化に特化した質の保証の在り方など、切り分けて議論する必要もあるのではないか」との考えが示されるとともに、学校教育法や設置基準の改正等、広範囲の難しい課題を多く含んでいるとの説明があった。
中教審の各種審議内容については、今後とも注視し適宜意見具申していくことが了承された。
引き続き、私立大学退職金財団役員の任期満了に伴う候補者の推薦、及び私学研修福祉会「平成二十一・二十二年度私立大学の教育・研究充実に関する研究会(大学の部)」運営委員の推薦について、それぞれ会長一任とし、会長・副会長会で諮ることになった。
その他、次回理事会は、十二月の定例理事会を休会とし、来春一月二十三日(金)の実施を決めた。
報告事項に移り、専修学校の振興に関する検討会議の「社会環境の変化を踏まえた専修学校の今後の在り方について(報告)」、各種研修会の実施報告(大学経理部課長相当者研修会〈十月二十九日〜三十一日、北九州「リーガロイヤルホテル小倉」〉、就職部課長相当者研修会〈十一月十二日〜十四日、神戸「クラウンプラザ神戸」〉、さらに支部総会(北海道支部総会〈十一月十七日、札幌〉、関東地区連絡協議会〈十一月十八日、東京〉、中部支部総会〈十一月二十五日、名古屋〉、中国・四国支部総会〈十一月二十六日、高松〉)などがそれぞれ支部長等から報告された。また、(財)日本高等教育評価機構の佐藤登志郎理事長から、同機構の活動報告が行われた。
最後に、直近の大学をめぐる大麻問題、デリバティブ取引等資産運用にかかわる問題など、今後とも注視するとともに、対応を考えていくことが提案されて閉会となった。