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平成20年11月 第2339号(11月19日)

カント氏(タタ・モーターズCEO)が講演 ips細胞テーマにディスカッション

 内閣府などは去る十一月十日、ホテルオークラ東京において、第八回産学官連携サミットを開催した。インドのタタ・モーターズのラビィ・カント最高経営責任者が特別講演をしたほか、iPS細胞研究など創薬・再生医療分野の産学官連携の実例についてのディスカッションなどが行なわれた。

 はじめに、野田聖子内閣府特命担当大臣から、科学技術政策についての基調講演があった。野田大臣は、「産学官連携が定着する中で、新たな課題も顕在化してきた。それらの解決に向け、政府として府省横断的に一体となって支援していく」と政府の方針を示した。
 続いて、タタ・モーターズのカント最高経営責任者による特別講演があった。タタ・モーターズは、「多国籍企業化」を戦略に掲げるインドのタタ財閥を構成する主要企業。カント氏は、インドの経済や生活水準の変化や、タタ・モーターズの近年の発展などを解説。イノベーションは、目的(Purpse)、製品(Product)、値段(Price)、立地(Place)、プロモーション(Promotion)、人材(People)、プロセス(Process)の七つのPが重要であるとした。
 同じく特別講演に、中鉢良治ソニー株式会社代表執行役社長兼エレクトロニクスCEOが登壇した。
 中鉢氏は、金融危機という短期的な波と地球環境問題という中長期的な波が世界を混乱に陥れている。企業内外のアイディアを有機的に結合させ価値を創出するオープンイノベーションが解決策に繋がることなどを解説。また、ソニーの産学官連携を紹介し、「成功の秘訣は、産学の明確な役割分担」との考えを示した。
 パネルディスカッションは、@国際競争力強化、持続的な経済成長のためのイノベーション・創業支援政策について、Aイノベーションの持続的創出のための、iPS細胞を含む創薬・再生医療分野における産学官連携のあり方についての二部構成で進行。まず、長岡貞男一橋大学イノベーション研究センター教授より発表があった。
 長岡氏は、日米の様々な比較を行い、「大学研究者による発明は件数より質を重視すべき。また、起業による商業化の経路の拡大には、@大学発明の質、A人材の流動性、Bベンチャー・キャピタルが重要な要素」などと結んだ。
 続いて、第一部のはじめに、OECD産業・イノベーション・起業委員会のケン・ウォリック議長から、OECDが行なった様々な調査について発表があり、「日本は、諸外国に比べて、雇用者数に対する大卒の数や女性起業家の割合は高い。しかし、海外との研究連携割合は最低レベル。サービス分野でのイノベーションは少ないし、起業までの時間もかかる」などと分析結果を披露した。
 第二部では、松本 紘京都大学総長より「京都大学の産学官連携の取組」と題した発表があり、国際的な産官学連携活動が進められていることなどを紹介した。また、二〇〇六年の山中信弥教授によるiPS細胞の樹立について、研究戦略を解説した。
 更に、森下竜一アンジェスMG取締役、ベンチャーキャピタリストの金子恭規スカイラインベンチャーズ代表などが発表し、特に医療分野における産学官連携のあり方について熱心なディスカッションが行なわれ、閉会となった。

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