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教育学術オンライン

平成20年11月 第2338号(11月12日)

"世界大学"構想も披露 eラーニング国際シンポ開く

 メディア教育開発センター(清水康敬理事長)は、去る十一月七日、東京の科学未来館において、国際シンポジウム2008「高等教育における効果的eラーニング実施のための長期的戦略ビジョン」を開催、各国から講師を招き、eラーニングの現状や課題を紹介した。

 まず、メリーランド大学ユニバーシティ・カレッジのスーザン・C・アルドリッジ学長が基調講演を行った。アルドリッジ学長は、同大学で単位評価システムの完全オンラインへの移行を主導したキャリアを持つ。
 アルドリッジ学長は、同大学の事例を交え、eラーニングの定義やモデルは必ずしも単一ではないことに注意が必要としながらも、「世界大学の構想のために、入手できる技術は活用しなければならない。それは、教育研究・サービスが、新たに現れつつあるグローバルな社会、そして全ての人々のニーズに対応した、新たな教育機関のブランドである」と、高等教育のパラダイムシフトを予見した。また、こうした構想を実現するために、「大学の指導者は、教員と学生が、学習共同体の対等なパートナーとして扱わなければならない」などと述べた。
 続いて、セッション1では、高等教育におけるeラーニングの長期戦略について、イギリス、ノルウェー、カナダ、日本の取り組み状況が紹介された。
 まず、イギリスの学習イノベーションディレクターのニール・スレーター氏が、EU最大の大学であるオープンユニバーシティについて取り組みや課題を解説し、「eラーニングがリテンションの向上、コスト削減、そして教育の全てのレベルにおける成果の向上の一助になることは証明されている」などとその意義と可能性を指摘した。
 逆に、オスロ大学インターメディア所長のステン・ラドヴィグセン氏は、「高等教育に携わる教員は、ICT活用について批判的であるべき」とし、「いかにして学生の学習努力を向上させることができるかをよく分析しなければならない」などと述べた。
 セッション2では、ICT活用による教育力向上に向けての教育手法の改善について、イギリス、オーストラリア、韓国、そして日本の事例が紹介された。eラーニングの開発や、そこから生じる専門能力開発やFD・SDの問題を探った。
 オーストラリアの教授学習センターのデービッド・マーフィー教授は、eラーニングの導入を成功させた二人の教員のエピソードを紹介し、彼らが成功した要因は「技術志向ではなく、効果的な教授・学習環境の構築方法、優れた授業の根本原則の応用の知識があったから。技術に踊らされてはならない」と分析した。
 京都大学高等教育研究開発推進センターの大塚雄作氏は、FDの大学間ネットワーク「関西地区FD連絡協議会」について紹介。「FDは、日常の授業実践に根ざした教育的課題を、教員自らが共有していくこと」と、京都大学で取り組む教員相互が学びあう「相互研修型FD」の有効性を指摘した。
 終了後には、関係者が懇親を深めた。

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