平成20年11月 第2338号(11月12日)
■ガバナンスと監事の役割 学校法人の監事研修会開く
文部科学省は、去る十月三十日、東京・芝公園のメルパルクホールにおいて、学校法人の監事等を対象に「平成二十年度学校法人監事研修会」を開催した。今後、私学経営を取り巻く環境が一段と厳しさを増し、学校法人のガバナンスと監事の役割が重要となり、適正な法人運営ができる体制の構築が求められていることから、監査業務に係る職務の重要性の認識や専門性の向上に資するため、私学行政全般、内部統制などについての研修を行った。
開会に当たり、河村潤子高等教育局私学部長は、「私学にとって厳しい状況下であり、学校法人の管理・運営の適正確保が大事である。事案に対して監事が早期の対応がとれるよう、情報の入る仕組みの整備等をお願いしたい」と挨拶した。
解説に入り、小谷理恵同部私学行政課課長補佐が、監査の留意点として「最近の私学行政」全般についてのポイントを説明した。
次に、「リース取引・ソフトウェアに関する会計処理」について、馬場 剛同部参事官付学校法人経営指導室長が、リース取引、ソフトウェアそれぞれの会計処理の変更を解説した。
リース取引では、経済的実態を学校法人の計算書類に的確に反映させる必要のあることから、ファイナンスリース取引(中途解約不能、借手がリース物件の使用に伴うコスト負担)が物件を売買したのと同様の取引実態とみなし、所有権移転の場合は「売買取引に係る会計処理」、所有権移転外でも原則は「売買取引に係る会計処理」として資産計上する(ただし、固定資産計上基準額未満、リース期間が一年以内、一件あたり三○○万円以下のリース契約は経費処理ができる)。ソフトウェアでは、購入した場合、将来の収入獲得又は支出削減が確実であれば「売買処理」として資産計上する。リース取引であれば、前述と同様に購入と同じ処理になる。なお、オペレーティング・リースの場合は通常の賃貸借取引として「経費処理」となる。
昼食休憩の後、「学校法人のガバナンスと監事の役割」について、清成忠男法政大学学事顧問が講演。
同氏は、はじめに、組織の意志決定がステークホルダー(教職員・学生・保護者・卒業生など)に支持されるガバナンスが重要であり、併せて意志決定をチェックする仕組みが必要であると述べた。
次に、学校法人における管理運営制度について、理事会、監事、評議員会それぞれの役割を述べ、特に監事の役割については、@監査報告書の作成(理事会及び評議員会への提出)、A事前監査(理事会に出席して意見を述べる)、B内部監査部門との分業(詳細な日常業務の監査は監査部門に、監事と内部監査部門の密接な協力)などを説明。
その他、学校法人経営の問題点として、専門的経営者の不足、CEO育成システムの欠如、不十分なリスク管理などを挙げた。監事制度の形骸化は学校法人の弱体化につながること、監事に経験豊富な人材の登用が不可欠であることなどを述べて講演を締めくくった。
引き続き、「私学を取り巻くステークホルダーから監事への期待」と題して、宮 直仁日本公認会計士協会学校法人委員会委員長が講演した。
同氏は、公認会計士監査の特徴として、@所轄庁に提出される計算書類が、法人全体の「財政状態と収支の状況」を正しく示しているかについて意見を述べる、A監査手続きの実施に当たっては、法人の内部統制の機能状況を確認する、B理事者の判断を必要とする経理処理に関しては判断基準を十分に確認する、などの事項を説明した上で、財務・会計に関する監査に関しては、監査人(公認会計士)と連携をとることによって、かなりの部分をカバーできると述べた。特に、公認会計士が監査の一環として行う「内部統制の検討」は、内部監査室が弱い法人にとって業務監査の手助けになるとして、@収入に関する検証、A支出に関する検証、B貸借対照表項目に関する検証、C理事会、評議員会の運営状況の検証などを具体的に説明した。
まとめとして、「監事のカバーすべき領域は拡大している一方、監事への社会的期待は高まっている。学内では孤立感もあるが、独立性を求められる所以であると考えられる。ただ、監事の職務としての意見は批判的なものだけではなく、社会が求める高い規範性を理事者、教職員と共に築き上げるためにも必要な行為」と結んで閉会となった。