平成20年11月 第2338号(11月12日)
■大学経理部課長相当者研修会を開催 239大学からの381名が熱心に研修
経理・財務に関わる課題別研修など
日本私立大学協会(大沼 淳会長)は、去る十月二十九日から三十一日まで、北九州市のリーガロイヤルホテル小倉において、平成二十年度(第四五回)大学経理部課長相当者研修会を開催した。同研修会は、同協会の大学経理財務研究委員会(担当理事=原田嘉中千葉商科大学理事長、委員長=佐川秀夫文化女子大学理事・経理本部長)が準備を進めてきたもの。私学を取り巻く環境が厳しさを増す中で、財政基盤の安定は重要課題であり、参加者の経理業務等の経験年数、または組織上の都合・目的等により三コースからの研修が選択可能となっている。加盟三八五大学から二三九大学・三八一名が参加し、重要課題について研修を行った。
▼第一日目:基本研修
はじめに佐川委員長が三日間の研修日程の概要説明を行い、「今回の研修を各大学発展のため役立ててほしい」と挨拶を締めくくった。
基本研修に入り、広島経済大学法人部次長の衣松美隆委員が「学校法人・関係法令等に関する解説」と題して、資料をもとに法令解説を行った。なかでも、私立学校法は私立学校の憲法に、学校法人会計基準は経理処理のバイブルに、それぞれ相当するものと述べ、ポイントを説明した。
その後、四班に別れて班別研修が行われた。研修は運営委員が進行するスクール形式での解説・演習等で、班別に会場を分けて行い、初日の研修は終了した。各班の研修概要は次のとおり。
【1班】学校法人会計基準のあらまし1=学校法人にとって重要な計算書類である資金収支計算書を中心とした解説と演習。【2班】学校法人会計基準のあらまし2=資金収支計算書の機能、消費収支計算書と貸借対照表との関連、基本金の意義・制度の趣旨、消費支出との関連、基本金を巡る個別の留意点等の解説。【3班】学校法人における予算編成管理・中長期計画関係課題=予算編成の方針策定・申請・査定・決定から、各部門への予算配付・執行までの流れを解説し、事例を紹介。【4班】私立大学等経常費補助金一般補助の仕組み=経常費補助金に関する制度と仕組みを正しく理解し、補助金関係事務の適正な執行を図るための解説と演習。
▼第二日目:基本研修・総合研修
二日目の午前中は前日に引き続いて班別研修、午後から全三コースの参加者が一堂に会して総合研修が行われた。
総合研修の開会にあたって原田担当理事は「定員割れの問題、世界的には金融不安が広がるという厳しい情勢にある。このような中で生き残るためには、各大学で諸改革に取り組み、経営安定化を図っていかなくてはならない。まさに学園の財政を守る経理財務担当者の双肩にかかっている」と挨拶した。
はじめに、同協会の小出秀文事務局長が「私立大学を取り巻く諸情勢と当面する重要課題」と題して、政府予算と税制の問題をはじめとする私立大学が置かれている状況等、全体的な解説を行った。
休憩を挟んで、九州国立博物館館長の三輪嘉六氏が「博物館の新しい挑戦―九州国立博物館―」と題した講演を行った。博物館についても定量評価を受ける中で同館は新設の博物館として、これまでの在り方を見直し、これからの新しい在り方を考慮しながら取組を行ってきた。具体的には、免震装置の導入や博物館科学(保存科学)を組織内に設置することでリスク回避を図るほか、そのようなバックヤードを市民に開放し、またボランティアを通じて文化財を守る環境を醸成するなど、「市民とともにある博物館」としての取組事例を紹介した。
最後に、中村学園大学理事長の中村量一氏が「中村学園大学の建学の精神と学校法人の管理運営について」と題した講演を行った。同大学の歴史と現状、特に飲食業等収益事業の説明など、財務・経理を中心とした内容を述べた。同学園事業部は、給食事業を通じて栄養改善を具体化するとともに、学園の発展に寄与する、という創設の精神のもと、飲食業等の事業を展開している。収益が上がると学園に寄付ができる(学校会計への繰り入れ)、収益事業は経営マインドが向上する等のメリットがあるが、設備投資がいらないこと、食に関わるなど安定業種ということ、ローリスクであることなどを考えた上で実施しているなどと述べた。
総合研修の終了後には情報交換会が行われ、和やかに中日を締めくくった。
▼第三日目:設定課題別研修
研修三日目は、設定課題別の班に別れて解説・事例発表等とディスカッションによる研修が行われた。概要は次のとおり。
【1班】学校法人会計基準の動向と決算の留意点=平成十七年度決算から適用された学校法人会計基準について理解を深め、講師から平成二十年度決算の留意点や日常業務の処理について学ぶ。講師:佐野慶子氏(公認会計士・日本公認会計士協会常務理事)。【2班】経常費補助金・会計検査院検査関係課題=経常費補助金の概要、変更点、新規事項等の傾向と申請事務上の留意点の解説。会計検査院の実地検査状況、重点検査項目等の事例解説ほか。講師:佐藤直也氏(日本私立学校振興・共済事業団助成部補助金課課長)、野田文克氏(同課長補佐)。【3班】収入増加方策・支出の効率化関係課題=平成二十年度予算において新規に措置された「戦略的大学連携支援事業」等と「共同研究拠点整備推進事業」等について共通理解とその効果的な導入方策等を考究。講師:古田和之氏(文科省高等教育局大学振興課課長補佐)、丸山 浩氏(文科省研究振興局学術機関課課長補佐)。【4班】学校法人における税務実務の留意点=国税から地方税までの学校法人をめぐる税制実務について留意すべき点を解説。講師:木澤進氏(税理士・斎藤総合税理士法人代表社員)。【5班】私大経営の財務分析と情報公開=財務分析による中長期計画の資金計画への取り入れ方、経営改善計画への役立て方の検証。参加者全員による「よりよい情報公開について」意見交換。発表者:光島善郎委員(追手門学院大学監査室)。【6班】私立大学の社会的責任関係課題=「内部監査室の役割と課題」をテーマに、監査室設置準備から運営開始まで、内部監査の手法と課題等の取組事例発表。発表者:杉山秀勝氏(名城大学監査室副参事)、久米信行氏((独)国立青少年教育振興機構監事・前神奈川大学内部監査室長)。
三日目の班別研修で全日程を終えて閉会となった。