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平成20年11月 第2337号(11月5日)

新刊紹介 「教育格差の真実」
  尾木直樹・森永卓郎著

 主客転倒、というべきか、羊頭狗肉か、本のタイトルと中身が明らかにずれている。タイトルに魅かれて購入した読者は面食らう。
 テーマは、目下、大きな問題になっている教育格差。それを、いまや売れっ子の経済アナリストの森永卓郎と教育評論家の尾木直樹の二人が“料理”する。
 本の「はじめに」は尾木が書いた。森永との対談が決まったとき、「森永先生と対談とは」と小躍りしたとあるように、尾木は期待感一杯で対談に臨んだ。
 〈学力が低い学区が公表されるので、そこへ住むことを避ける。学力格差が地域格差につながっていく〉と、教育格差問題に森永を引き込もうとするのだが、乗ってこない。
 森永が“饒舌”になるのは、小学校時代の外国での教育体験や高校や大学時代の教育にまつわる懐かしい思い出につながる話。教育格差問題は上滑りしていた。
 森永が得意の小泉構造改革批判や新自由主義思想やハゲタカ批判を対談で奏でるのは、テーマから脱線するが、まあ良しとしよう。
 しかし、〈今、反体制側の評論家はいない。僕はどれだけ番組を降ろされたか、どれだけ干されたか〉などと“泣き”をいれていたのは場違いで論外。
 尾木は、懸命に本のテーマに沿って自身の教育論を語る。いま流行の小中の学校選択制や都立高の定員割れ、親離れできない大学生などに触れた部分は大いに参考になる。
 本の「あとがき」は、森永が書いていたが、教育の文字は一文字もなかった。森永に気を使いながら発言し続けた尾木の痛々しさだけが残った。

「教育格差の真実 どこへ行くニッポン社会」
 尾木直樹・森永卓郎著
 小学館 101新書
 販売(03)5281-3555
 定価720円+税。
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