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平成20年11月 第2337号(11月5日)

地域大学サミット開く 地域の多様な活性化を強調

 科学技術振興機構(北澤宏一理事長)は、去る十一月四日、東京・品川の品川グランドセントラルタワーにおいて、「地域大学サミット2008―地域の特色を活かした大学戦略」を開催した。地域活性化を牽引する大学の戦略的活動や、自治体が取り組む産学官連携をテーマとして、今後、地域の大学を中心として、より一層の産学官連携を推進し、全国各地の自治体が地域活性化を進める上で、地域の大学を活用することを目的として開かれた。

 北澤理事長、泉紳一郎文科省科学技術・学術政策局長の挨拶の後、薬師寺泰蔵内閣府総合科学技術会議議員が基調講演を行った。
 薬師寺氏は、まず、第三期科学技術基本計画に触れ、「三期はモノではなくヒトに投資をしている」と強調。また、立命館大学や近畿大学の取組を取り上げ、「特に私立大学は、地域の人材育成に努力している」と主張。最後に、「これからは地域から世界に向けて情報発信して欲しい」と締めくくった。
 続いて、宇都宮大学と徳島大学の事例が紹介された。
 宇都宮大学では、光科学分野の教育研究拠点の形成を進めている。日経グローカルの調査によると、同大学の地域貢献度は平成十八年度で一位。演壇に立った山本純雄理事兼副学長は、「地元企業との共同研究の実績や自治体との連携等が高く評価されたため」と分析する。同大学では、キヤノンと「オプティクス教育研究センター」を平成十九年度に発足。同社から客員教授等を派遣し、実務に即した講義や実験を行い、海外大学と国際交流協定を結ぶなど、光科学分野の教育研究活動を強化している。
 徳島大学は、糖尿病研究で地域イノベーションを進める。徳島は糖尿病死亡率が一四年間にわたりワーストワン。そこで、県が平成十九年度に「糖尿病克服県民会議」を設立。大学も地元企業等との連携により世界的なヘルスライフサイエンス拠点を形成している。長尾善光理事・副学長は、「徳島は糖尿病研究の蓄積とシーズが豊富。研究者も世界から招聘しており、世界的な研究拠点となる素地がある」と自信を見せた。
 休憩直前には高知工科大学の佐久間健人学長から飛び入りのプレゼンテーションがあり、地域大学の深刻な現状を訴えた。@少子化、A首都圏の一極集中、B理科離れの三つの課題を挙げ、一大学だけでは対処ができないことを述べ、「高知の平均世帯収入では大学の授業料が払えない。公立大学法人化はその対処のひとつの選択肢」との考えを示した。
 休憩を挟んで、「地域の特色を活かした大学戦略」と題し、阿部博之同機構顧問をモデレーターに、パネルディスカッションがあった。パネリストには、「山形有機エレクトロニクスバレー」構想を実施している山形大学大学院の城戸淳二教授、山梨を燃料電池で世界一にすることを構想する山梨大学の佐野 太副学長、植物の遺伝子研究などバイオサイエンスを重点研究分野に取り組む奈良県商工労働部の小島義己次長、カーボンナノチューブを利用した石油掘削技術などで成果を出す信州大学の遠藤守信教授、地域科学技術政策を手がける文科省科学技術・学術政策局の柳 孝科学技術・学術戦略官が務めた。
 阿部氏は、まず、「科研費は一部の大学に集中的に配分されているが、イノベーションは限られた数校から出てくるわけではない。」と前振りをし、イノベーションの観点からも地域が多様に活性化していくことが重要だと述べた。
 佐野氏は、優れた研究者の流出問題を尋ねられ、「卓越した研究者を五人程集めて地域の優秀な研究者が流出することを防ごうと考えている」と述べた。
 小島氏は行政の立場から、「県民や地元企業が大学の研究を評価すれば、県としても取組を推進できる。研究を部分的にでもしっかりと見せていくことが大事」と研究者に注文をつけた。
 遠藤氏は「特徴ある研究を拡散させて、分散型の国家を作っていく必要がある」と主張した。
 城戸氏は、「研究を本当にやりたい研究者は補助金がなくてもやる。そういう人を育てなければならない」と人材育成について述べた。
 最後に柳氏が、「知的クラスター政策が契機になって、各地域での産学官の連携がさらに深まればと思う」と締めくくった。

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