平成20年11月 第2337号(11月5日)
■私学振興の重要課題など協議 平成19年度収支決算を承認
第129回総会(秋季)を大阪で開催
日本私立大学協会(大沼 淳会長)は、去る十月二十四日(金)、大阪市の帝国ホテル大阪を会場に、同協会関西支部(支部長=森田嘉一京都外国語大学理事長・総長)の担当の下、第一二九回総会(平成二十年度秋季)を開催した。加盟三八四大学から二五六大学三六〇名の理事長・学長等が一堂に会し、平成十九年度の収支決算を承認するとともに、@平成二十一年度私立大学関係政府予算概算要求並びに私学関係税制に関する経過報告と今後の実現対策等、A高等教育激動期における私立大学の振興・発展方策についてなどの協議が行われた。また、総会終了後には、懇親晩餐会が盛大に催され、橋下 徹大阪府知事代理の三輪和夫副知事が歓迎の挨拶とともに祝辞を述べた。なお、翌日には、奈良の東大寺大仏殿と奈良国立博物館(正倉院展)の二コースに分かれての懇親見学会も実施された。
総 会
開会に当たり大沼会長は「不安定な政治情勢、また世界的な金融不安の中で、市場経済主義の社会的風潮から、教育が疎かにされてはならない。高等教育機関への進学率が約七七%に達する今日、その七五%を担う私学の振興・発展こそ我が国の将来にとって欠かすことができない。このほど、文科大臣から中教審に「中長期的な大学教育の在り方」について諮問が行われ、審議が始められることになり、社会構造の変化に伴う様々な教育関連問題に対応していかなければならない。加盟校の皆さんのご意見をもとに、誤りのない舵を取っていきたい」と挨拶するとともに、総会の諸準備を担当した関西支部に感謝の意を述べた。
また、森田支部長は「七年前の関西地区での総会は神戸で開き、震災後の復興を見ていただいた。このたびは、関西支部の加盟校の協力の下で再び皆様をお迎えできました。大事な総会になると思いますが、成果を期待しています」と歓迎の挨拶を述べた。
次に、総会の開会に当たり、文部科学省高等教育局の河村潤子私学部長からのメッセージを小出秀文事務局長が紹介した。その中で河村私学部長は、私学助成の充実や税制上の優遇措置等の私学振興策の推進に努力すること、またこの度の「中長期的な大学教育の在り方」の諮問についての活発な議論を願いたいことを述べ、「総会出席者の皆様のご健勝と私大協会のご発展を心より祈念いたします」との言葉で結んだ。
引き続いて、平成二十年度上半期の新加入会員として、(学)玉田学園(神戸常盤大学)、(学)京都薬科大学(京都薬科大学)、(学)一宮女学園(修文大学)、(学)永原学園(西九州大学)、(学)北陸学院(北陸学院大学)、(学)植草学園(植草学園大学)、(学)ルーテル学院(ルーテル学院大学)、(学)興誠学園(浜松学院大学)の八大学が紹介され、暖かい拍手で歓迎された。
十九年度収支決算を承認
承認事項に移り、平成十九年度同協会収支決算について、企画財務委員会担当理事の廣川利男副会長(東京電機大学学事顧問)が、予め加盟校に送付済みの収支計算書に基づいて経常会計、特別会計のポイントを説明。併せて、塚本邦彦監事(大阪芸術大学理事長・学長)が、監査報告し、満場一致で承認された。
予算・税制改善対策
協議事項に入り、はじめに、平成二十一年度私立大学関係政府予算概算要求並びに私立学校関係税制改善対策に関する経過報告と今後の実現対策について、小出秀文事務局長が資料に基づいて提案説明した。
加盟校の総意に基づいて八月末の文科省の概算要求に私学団体の要望を盛り込む夏の陣を乗り切った。今後は秋から冬の陣に向け、要望の実現に向けた一番重要な時期となる。
財務省は、骨太の方針二〇〇六の「私学助成は対前年度予算比▲一%、さらに深掘りも」といったスタンスを崩していないが、我々は一切容認してはいない。しかし、単に増額要望をするだけでは折衝の成果は上がらない。私学教育が成果をもたらす基を明確に論理だてすることが求められている。地域振興の核となる戦略的な連携支援予算など大幅な拡充を期すとともに、国公私共通の競争的資金についても、その実績や期待される成果等についてできる限り具体的な形で示すなどしていきたい。
併せて、科学研究費についても、増額傾向であることから、これまで以上の積極的な取組みが求められている。
一方、これらの競争的な資金に重点が置かれ、肝心の基盤的経費である経常費補助金がなおざりにされないよう、バランスを考えてギリギリの選択をしていきたい。
また、七月に閣議決定された「教育振興基本計画」においては、予算要望等に結びつく具体的数値目標は盛り込めなかったものの、「OECD諸国の公財政支出の教育投資を参考に、必要な予算について財源を措置し教育投資を確保していくことが必要」などと明記されており、公財政支出の仕組みを考えていきたい。
税制改善対策では、個人の寄附税制のうち所得税について、@所得控除される寄附金額の上限を所得の五〇%まで引き上げること、相続税について、A相続財産を大学等に寄附した場合に、寄附金の全額を税額控除することなどを重点要望としている。
これら予算・税制改正要望の実現に向け、文科大臣をはじめ同省幹部や自民党三役、さらに文教関係国会議員らに連日の要請活動を行っている。
これらの経過説明を含めての提案説明の後、小出事務局長は「それぞれの地域の国会議員等へのお声がけをお願いしたい」と訴え、対策活動全般にわたっての対応が承認された。
私大の振興・発展方策
次に、高等教育激動期の私立大学の振興・発展方策について、(1)教育振興基本計画、(2)学士課程教育の構築、(3)中長期的な大学教育の在り方(諮問)、(4)留学生三〇万人計画など、多岐にわたる課題対応の提案説明が行われた。
(1)では、小出事務局長が、プライマリーバランス黒字化へ向けた「▲一%」の後の三年後、日本の高等教育をどうするのか、先の諮問の議論にも関わって、まさに「大学教育の転換と革新」を模索しなければならない。教育振興基本計画に沿った施策の実行と国家財政のギャップをどう埋めていくのか、常にこの問題を念頭に置いて直面する課題に対応していきたいと語った。
(2)では、大学分科会制度・教育部会の「学士課程教育の在り方に関する小委員会」の主査をつとめた黒田壽二副会長(金沢工業大学学園長・総長)から、「審議のまとめ」が直近の大学分科会に「答申案」として提示されると述べ、十一月中にも最終答申となることを明らかにした。答申案では、内容そのものが変わるのではなく、構成の一部が組み換えられるだろうと語った。
次に、(3)では、@多様なニーズに対応する大学制度及びその教育の在り方、Aグローバル化の進展の中での大学教育の在り方、B人口減少期における我が国の大学の全体像という三項目にわたる審議事項の他、@〜Bに関連した各種の行財政システムの審議も求めている。
中教審における今後の審議の中で、私大としての意見具申等もしていくことになる。
(2)、(3)の課題に関連してフロアから意見が相次いで出された。
「学士課程教育では、二十一世紀型市民の素養の核心とも言える“哲学・倫理”が重要である。その意味で教員の充実が求められる」「リベラルアーツについては、人間の一生の中で活きるような教養を身につけさせるべき」「教養教育、専門教育の区別ではなく、各大学がカリキュラムの中で考えること」「このたびの諮問の議論では、教養と専門性のバランスを考える上で、六・三・三・四制の学校制度の在り方にも言及してほしい」「学士課程教育で、各大学が定める到達目標に達しない学生は卒業させない覚悟が必要になるのでは」などといった様々な考え方が述べられた。
これらの意見を踏まえ、小出事務局長は、「今後とも、学士課程教育及び大学教育の在り方についての意見を事務局に寄せてもらい、関係の委員会等で意見集約していきたい」と述べた。
(4)では、大学分科会の留学生特別委員会委員の森田副会長が審議概要を説明し、「私学も関わっていくことになるが、関係六省の協議等も注視していきたい」とした。
協議の上、これらの(1)〜(4)の課題への対応方針は、すべて承認された。
その他、平成二十一年度の第一三〇回春季総会を三月二十五日に東京・私学会館で、また、第一三一回秋季総会については、担当する中部支部長の小出忠孝副会長から、十月二十三日に金沢市・ホテル日航金沢で開催することが提案、承認された。
報告事項
報告事項に移り平成二十年度同協会上半期事業については、配布資料で報告に替えるとともに私学高等教育研究所の活動については、瀧澤博三主幹が報告した。大学評価事業については、(財)日本高等教育評価機構の佐藤登志郎理事長が平成二十年度の五八大学の認証評価実施状況及び次年度以後の課題等について報告して、総会は閉会となった。
懇親晩餐会・見学会
総会終了後の懇親晩餐会では、はじめにアトラクションとして、クロード・チアリ氏のギター演奏があり「オレンジの首飾り」「夜霧のしのび会い」等の哀愁に満ちた名曲が会場に流れた。引き続いて、大沼会長の開会挨拶、来賓の三輪和夫大阪副知事からの橋下^n徹知事の祝辞代読、鏡開き、森田支部長の歓迎の挨拶と続き、さらにアトラクションとして、月亭八方氏の漫談など、加盟大学が一堂に会しての和やかな懇談に移り、午後八時三〇分に締めの挨拶を次年度開催地区の中部支部の小出副会長が行って閉会となった。 なお、翌日には、奈良国立博物館(正倉院展見学)と東大寺(大仏殿見学)の二コースに分かれ、それぞれ奈良大学の三宅久雄、東野治之両教授の解説等もあり、有意義な懇親見学会が実施された。
私大協会385大学に
第一二九回総会に先立って開かれた第五八九回理事会では、同総会の運営について協議が行われたほか、同協会への新加入について協議し、満場一致で承認された。新加入の大学は次のとおり。
▽(学)佐久学園が設置する佐久大学、理事長・評議員=樫山幹男氏、学長=宮田道夫氏、看護学部看護学科=定員八〇名。法人・大学住所=〒385-0022長野県佐久市岩村田二三八四、電話〇二六七―六八―六六八〇