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平成20年10月 第2336号(10月22日)

改革担う大学職員 大学行政管理学会の挑戦F
  財務研究グループ
  永続維持を保証する会計を研究 "大学財務研究"を発行

  財務研究グループリーダー國學院大學財務部 杉崎 正彦

 財務研究グループ(研究G)は、平成十三年に発足した。現在は毎月第三木曜日の六時半から日本大学会館会議室を借りて研究会を開いている。
 大学行政管理学会では、毎年アンケートで会員の関心分野を調査しているが、財務も関心の高い分野の一つだった。また財務は、学校経営にとって重要な要素であることは言うまでもない。そのようなことから、学会内に財務研究をする組織があるべきということで有志が集まった。
 発足時の文書には、「学校法人においても、近年、財務の領域は、伝統的な経理、会計、資産管理の分野にとどまらず、財務数値の経営戦略的利用、海外も含めた資金・資産運用などの問題へと広がりをみせており、その内容も多様化・複雑化・高度化しております。
 特に、各大学において財政状況が厳しくなる中で、学費、入学検定料、補助金への依存体質の見直しと外部資金獲得、収益事業の展開を図る等の収入構造の改善、人件費、直接的経費,間接的経費、施設のライフサイクルコスト等支出構造の見直しといった、総合的な財務戦略の構築が必要となっており、さらには、財務情報のディスクロージャもその重要性を増しています」と記され、このような観点から研究Gが発足した。
 メインテーマ「学校法人会計基準改正の提言」を掲げ研究活動を開始。最初に、現状分析と問題点の洗い出し(歴史的な背景も含めて)、次に、企業会計、公益法人会計、独立行政法人会計、諸外国の学校会計等との比較、最終的には、新学校法人会計基準の改正試案の作成と、順番で研究を進めた。
 なお、サブテーマとして、「参加者が個人的に興味のあるテーマについては、研究グループの承認を条件に、研究グループのサブテーマとして位置付け、個人又はグループにて研究し,発表又は報告する」ことも可能としている。
 その後、平成十七年の学校法人会計基準の改正を受け、個別の会計基準などの検討を行っていたが、一昨年からは、「予算―事後統制を中心として―」の検討を行い、昨年の研究集会で発表した。
 現在は、「学校法人の永続維持を保証する会計基準のあり方の提言―アカウンタビリティと経営評価を実現する学校法人会計基準のあり方」というテーマで研究活動を進めている。研究G発足当初から、学校法人経営を取り巻く環境も激しく変化しているので、当面は内外の環境変化をふまえて、これまでの研究内容を総括する。同時に、「学校法人の永続維持を保証する会計のあり方とはそもそもどのようなものか」を明らかにすること、そして、今後の学校法人に求められている主体的・機動的な経営判断と、説明責任を果たす会計基準のあり方を検討することにある。
 研究を進めるにあたり、@学校法人会計を取り巻く動向の整理(会計理論、企業会計と学校会計の違いの整理、企業会計等の動向の整理等)、A学校法人会計基準に関する諸課題の整理(学校会計の基本的考え方の整理、学校法人会計基準改正等の動向の整理等)、B学校法人の永続性を保証する会計基準のあり方の提言、という手順で進めることを計画している。
 現在は、@の整理をしている段階である。
 今年の研究集会では、国立大学法人会計基準、公益法人会計基準ならびに国際会計基準の動向、学校法人会計基準の将来の改正に影響する可能性のある事項を理論的に検討した。
 先般、文部科学省から通知のあった「リース取引に関する会計処理について」や「ソフトウェアに関する会計処理について」なども、国際会計基準の影響が国内の企業会計の改正とほぼ同時的に学校法人会計の改正が行われるという改正のスピードになっている。
 新聞報道等にあるとおり、日本の企業会計も国際会計基準とのコンバージェンス(収斂)を行うのではなく、国際会計基準そのものの適用の検討に入り、ますます、国際会計基準の動向は目が離せない。
 このような状況を踏まえ、「学校法人の永続維持を保証する会計基準のあり方の提言―アカウンタビリティと経営評価を実現する学校法人会計基準のあり方―」を検討し、会計基準の改正に備えると共に、研究Gとしての提言を出したいと考えている。
 また、昨年の研究集会では「私立大学における予算制度のあり方についての研究報告」を行った。日本会計研究学会(スタディ・グループ学校法人会計)の研究報告である「学校法人会計の基本問題…予算制度と監査・予算原則・予算監査」などを参考に基本問題を検討し、事例収集を行った。予算のPDCAサイクルを機能させるためには事後統制が必要であるが、実行している大学は一校。今後、予算制度をより有効に機能させるには、事後統制を行う必要がある。
 企業会計の分野では、「会計基準が変われば経営が変わる」といわれており、大学も同じであることには異論は無いと思うが、学校法人の経営者を含め会計基準への関心や理解が不足していると思われる。
 最初に触れた学会会員の関心分野については、二〇〇八年度学会研究集会資料に掲載された調査結果によると、「財務」は徐々に順位を落とし、平成十年度には上から四番目だったが、二十年度調査では六番目。会員の年齢層や役職などのバランスの変化によるものもあるのかもしれないが、財務のエキスパートでなくとも、学校経営を考えていく上で、財務がわからないということはありえないことだと思う。
 最後に、研究Gでは活動の一環として「大学財務研究」(二〇〇六年九月、NPO法人学校経理研究会刊)を発行している。
 これは実務家自らが執筆した論文集であり、学校経理研究会のホームページからも購入可能。実務家の研究を支援する意味でも、貴重な事例研究等から自大学の取り組みを検討するための参考のためにも是非ご購入いただき、お読み頂ければ幸いである。
 「大学財務研究」
 会計基準「貸借対照表上の基本金の表示に関する一考察」「学校法人会計基準改正に関する一考察―基本金組入れと取崩しの問題点―」「学校法人における収支構造分析―学校法人向けの損益分岐点分析について―」/予算「学校法人の予算制度と財務部職員の役割」「学校法人の予算制度と編成の手順」「学費の使途説明を可能とした予算編成の仕組み」/学費「私立大学法科大学院学費の決定の過程と今後の動向」「学生納付金について」/施設「今どきの私立大学―施設設備投資と財務の健全性とのバランスを考える―」「施設に関する中長期修繕計画の一例(LCC簡易診断ソフトを応用した中長期修繕計画の活用例)―放送大学学園での活用事例―」/その他「学校法人における消費税について」「学校法人の分離に関する考察」「大学における内部監査〜英国の事例紹介を中心に〜」「会計システム導入のポイント」/アンケート「会計処理等に関する実態調査の結果について」

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